新生児ケアセミナーの講師 中川葉月さんのコラム
『私が新生児ケアセミナーの講師を引き受けた、ワケとイキサツ』
皆さま、こんにちは。9月から新しく始まる「新生児ケアセミナー」の講師を担当させていただくことになりました、助産師の中川葉月です。
私は、14年前から、現在住んでいる箕面市の母子保健事業の非常勤と、出張専門に産前産後の母子のケアを行っています。私が信子先生に出会ったのは今から13年前、当時公立病院を退職後、市の母親教室や2ヶ月児育児相談会、新生児訪問を始めて1年経った頃に参加したセミナーでした。
地域での活動は、それまでの勤務助産師時代に経験したことだけでは対応しきれないことも多く、伝える内容は一般的で、技術も未熟で「このままでいいのか」と悩んでいました。先生のセミナー内容は即実践できるものばかりで、翌日の訪問からお母さんの身体を診ること、骨盤に触れること、おっぱいマッサージよりも肩回し、というように私のケアが変わっていきました。お母さんの喜ぶ表情が増えることで、私の伝え方にも自信が持てるようになりました。その後、身体のバランスを整えることが健康につながるということを知り、整体の勉強を始めました。
私が新生児訪問を始めた頃は、腰痛を訴えるお母さんが多かったのですが、最近では「腰痛はないけど、くしゃみをしたらおしっこが漏れちゃった」とか、「肩こりがひどくて、頭痛がある」という方が増えているように感じます。また「授乳がうまくできない」「抱っこして寝たと思っても、ベビーベッドや布団に寝かせると泣く」という相談事は今でも多いです。
そんなお母さんの身体は猫背で、肩甲骨や肘や手首の動きが悪くて、赤ちゃんをうまく抱けない、授乳クッションを使わないと授乳できない…という状況です。その授乳クッションの使い方も、実はちゃんと使えていなかったということもあります。
お母さんが赤ちゃんを抱っこしやすくなる身体づくり、赤ちゃんが理想的な胎児時代の姿勢で寝られる寝床の工夫、おくるみの仕方、寝かせ方などのアドバイスをします。おくるみに包まれて気持ちよさそうに、丸い巣の中で寝ている赤ちゃんを見て、お母さんも肩の力が抜けて笑顔になられます。
赤ちゃんの向き癖については、先生のセミナーを受けるまで、私自身あまり注意深く観察できていませんでした。新生児訪問の時、わずかな頭部の変形がすでに起こっているのを見て、「こちら側に向くのが好きなんだね~」と言うと、ほとんどのお母さんが「入院中からこっちばかり向いて、気になっていたんです」と言われます。先生がいつも言われている「入院中の1週間が勝負!」というのを、痛感する瞬間です。
箕面市の「2ヶ月児育児相談会」の頃になると、お母さんの方から「向き癖」「頭の形が気になる」という相談事が出てきます。その赤ちゃんはたいてい横抱きを嫌がり、縦抱きを好み、腹這いにさせると反り返って泣くので、腹這いにさせていないことが多いです。
このようなお母さんに出会うたび、「入院中から、赤ちゃんの首を大事に扱うことや、胎児の時と同じ“まんまる抱っこ”、“まんまるネンネ”、優しい排気(ゲップ)の仕方、安全な腹這いのさせ方などを教わっていたら、赤ちゃんが快適に過ごせて、不要に泣くことも少なく、お母さんも笑顔で赤ちゃんと向き合うことができるのに…」と、いつも悲しくなってしまいます。
私は、整体の勉強を始めたころ、結婚して7年目でした。
しかし、子どもに恵まれず、3年間にわたっての不妊治療で卵巣過剰刺激症候群にまでなってしまい、その辛さに耐え切れず、治療を一時中断していました。私の身体は、フラットバックで脊柱は側弯していて、傾いた仙骨を診た信子先生から「震度4の側弯! こんな仙骨してたら妊娠できんわ~」と言われていました。それから、毎日セミナーで習った操体法を続け、月1回は先生のサロンで施術を受けて、身体のメンテナンスを行うなど、今風にいうならば「妊娠力向上」を目指して、努力し始めました。
整体だけではなく、以前から行っていたヨガも続け、食事改善、デトックス、もちろん神仏祈願も…。そうして5年くらいたった頃、「排卵誘発剤は極力使わず、自然採卵でIVFを行ってくれるクリニックがある」との情報が入ってきました。不妊治療はもう嫌!と避けてきましたが、こういう情報が入ってきたのも何かの縁、最後のチャンスと思い、治療を再開しました。そして2回目のIVF-ETで奇跡的に妊娠。アラフォーでしたが5年間の身体づくりが功を奏し、経過は順調、妊娠中も地域での活動や、旧母子整体研究会のセミナー講師も無事に勤めさせていただきました。
出産は2日間かかりましたが、助産院で産むことができ、出生直後からおひなまきをして、丸い寝床の中で寝かせるなど、セミナーで習ったことの実践育児がスタートしました。おっぱいトラブルも経験しましたが、その都度整体を学んだ仲間に助けられました。
最近はスリングに入れて抱っこしている人が少なくなりましたが、私にとってスリングはなくてはならないアイテムで、使いこなせると本当に便利で、子どももよく寝て、ベビーカーはほとんど使いませんでした。 たった1回の妊娠・出産・育児ですが、色々な体験が自分の学びにつながっていきました。息子も今年から小学生、おかげさまで生まれてから小児科にお世話になることは1度もないくらい元気に育っています。
このような経験から、妊娠中・新生児期は赤ちゃんにとっていかに大切かを、身を以て体験しました。
出産施設で働いている皆さん、「新生児ケアセミナー」を受けて、施設で取り入れられることを学びませんか? 新生児訪問やベビーマッサージ教室など、地域で活動されている皆さん、 ケアの引き出しの一つに「新生児ケアセミナー」の内容を増やしてみませんか?
新生児ケアセミナーの講師は四人で、年内のセミナーは複数の講師で担当します。四人とも、院内と退院後のケアの基本についてお伝えしますが、講師により少しカラーが変わります。
浜松市のクリニック内で、新生児ケアを実践している山口香苗さんは、現役の施設勤務助産師ですので、光線療法中のケアなど、院内での色々な工夫を詳しくお伝えします。東日本担当の小林いづみさんや、九州担当の平山小百合さんは、院内でも地域でも、豊富な講師経験を積んでいますので、伝える技術も、きっと皆さんのお役に立つと思います。もちろん、私も三人に負けないよう頑張ります!
セミナーで皆さんにお会いできるのを、楽しみにしています。