東京都の勤務助産師 ケイコさんのコラム
戸惑いは楽しさに変えられる

 
【職場でのかつての日々】
入れ替わり入院してくる切迫流早産、年々増える緊急帝王切開、産後尿漏れや尿閉、母乳の出が悪いママ、うまく飲めない赤ちゃん…。
毎日続く張り止めの点滴、苦痛を伴う導尿、ミルクの追加などの対症療法に日々疑問を抱きながらも、仕事が終われば「疲れた」を理由に深入りせず、結局指示されたケアや数字での判断に追われていました。

【初めての妊娠出産育児】
そんな中経験した初めての妊娠は、特に医師の診察が必要になるようなことはなく産休まで働きました。
そのため、何のセルフケアをすることもなく過ごし、分娩は5時間半の自然分娩。そんなに悪い体ではないと思っていました。

しかし、私の無頓着さを全て請け負ってくれたのは我が子でした。私の170cmを超える体格とは不相応な小さめの体。何だかよく右を向くし、顔が傾いている。
常に眉間には血管が浮き出ていて、4ヶ月頃からは反り返りも始まりました。その上、縦抱きで外出し、帰ってからはよく泣いていました。

以前から“まるまる育児”は聞いたことはあったものの、確信が持てず取り入れていませんでした。
でも、この状況の解決方法は、いくら調べても“まるまる育児”以外に見当たらなかったため“実験”という形で取り入れ始めました。
効果はすぐに出始めました。眉間の血管は消え、顔色は良くなり、反り返りが減り、一人でよく遊ぶように。
スリングを使用し始めてからは、長時間の外出をしてもご機嫌でした。

【育児経験が勉強意欲に火を】
すぐにトコ企画のメンテ“力”upセミナーの参加を決めました。セミナーでは今までの疑問が解きほぐされていきました。
受講中思い出すのは、今まで関わらせていただいた妊産褥婦さんや赤ちゃんたちの顔。必要なかったかもしれない入院、帝王切開、導尿、ミルク…。これは? あれは? と質問が止まりませんでした。
それと同時に、助産師ってこんなにも素敵な職業なのかと胸が躍りました。

さらに、私自身悪くないと思っていた体が、簡単な体操や骨盤ベルトの着用で、軽く動きやすくなったことに驚きました。
今までこの体でしか生きたことがないため、今の状態が「普通」「ベスト」であると思い込んでいたことに気付かされました。
そして、体が楽になるだけではありませんでした。体が楽になると、心にも余裕ができ、育児への気持ちも軽くなり、家族の雰囲気が緩んでいくことを感じました。

【骨盤ケア・“まるまる育児”は特別なことではない】
学びを通して体を整えることは、生活の一部であり、特別なことではないと感じました。
眠れないと疲れる、甘いものを食べれば虫歯になる、足を組めば骨盤がゆがむ。
疲れをとるために睡眠時間を確保する、綺麗な歯を保つために歯を磨く、動きやすい体になるために、骨盤ケアや“まるまる育児”をする。

骨盤ケアと聞くと、整骨院に行って何回コースの骨盤矯正を受けることを想像される方が多いと思います。
しかし、私たちの体は日ごろの生活習慣からできています。虫歯になり治療しても、習慣を改めなければまた虫歯になりますね?
骨盤も同じです。骨盤矯正をしたから終わりではなく、良い状態を保つ習慣が大切です。

【助産師なのに戸惑いの連続】
自己紹介がだいぶ遅れましたが、現在東京にある病院に勤務している助産師のケイコと申します。勤務中に抱いた疑問は冒頭に書いた通りです。
何百人の出産に立ち会わせてもらい、何千人のママや赤ちゃんと接してきた私ですが、妊娠出産育児では戸惑うことがありました。

つわりやこむら返りなどの症状は「マイナートラブル」と片付けられてしまい、さらに小さな疑問や違和感を病院や行政に相談するなんて、ハードルが高くて気軽にできる雰囲気ではありません。
にもかかわらず妊娠前から妊娠について学べる機会は少なく、産後に病院で教えてもらう育児は、せいぜい生後1ヶ月までのことです。

もっと簡単に立ち話しをするくらいの気持ちで相談でき、生まれる前から日々の状況を把握して、子どもの育ちを一緒に見届けてくれる人がいたら、どんなにいいかと思いました。

【私の描く未来】
妊娠出産育児を通して感じたことは、もちろん、マイナス面ばかりではありません。
お腹の子と過ごす日々は、妊婦にならなければ分からなかった尊さと、これから生まれてくる日々を想像した楽しみ…、出産はこんなにも幸せな空間があるのかと感動しました。
この気持ちを一人でも多くの家族に経験してもらいたいと思いました。だからこそ、不安を少しでも取り除き、子どもを産み育てたいと思う環境を整えたいです。

現在は骨盤ケアや“まるまる育児”だけでなく、中医学の養生法など内面から整えていくことや、心についても学びを深めており、身体面・精神面ともにサポートしていけるように土台作りをしています。
「すぐによくなる」「今だけだから」「個人差だよ」「○○だから仕方ない」こういう言葉で終わらせず、一緒になって考え、感じ、寄り添って、戸惑いを楽しさに変えられるお手伝いをしていきます。

私の無頓着さを請け負って、体を張って色んなことを教えてくれた我が子と、学びを支えてくれる夫に感謝し、また渡部信子先生をはじめとした博識ある先生方に、ご教授いただきながら精進し続けていきます。

【最後に】
本来、薬や処置は必要ないのかもしれません。必要であってももっと少なくていいのかもしれません。本当に必要なことは体を整えることではないでしょうか。

骨盤ケア、“まるまる育児”って実際どうだろう? と思っている方はいませんか? その疑問は、先輩経験者たちが何十人も何百人も実証してくれています。
考えるより実践してみる。やめることはいつでもできます。トラブルが起きる前から気付き行動できることは、価値あることだと思います。
私もSNSで子どもの発達について発信していますので、お暇な時にでも、のぞいてみてください。
https://www.instagram.com/_kodomowatakara/

助産師の皆さん、日々のケアに悩んでいませんか? 皆さんの悩みは、きっと、私も十分味わって来た悩みだと思います。
そんな私が今胸を張ってお伝えできることは、「医師の指示を待つより先に、できることがある」ということです。
自分の手で妊産褥婦さんや赤ちゃんに、快を提供できる術があります。その悩む時間を次への一歩へと繋ぎ、意味のある時間に変えましょう。