東京都の保育士 吉田万里子さんのコラム
“発達応援ベビーシッター”として“まるまる育児”を伝えたい
【はじめに】
東京都の北区を中心に“発達応援ベビーシッター”として働いている吉田万里子です。
「小さい子と遊ぶのが好きなのね」。幼い頃から私がよく言われた言葉です。長女ということもあってか、年下の子ども達をお世話したり、一緒に遊んだりすることは嫌ではなく、当たり前のこととして育ちました。
今も子ども達と遊ぶことが大好きで、「私が保育士になったのは、それがきっかけだな」と今は思います。
【保育士となって】
保育士となり現場に出てわかったことは
(1)子どもを安全にケガさせることなく、保護者にお返しすることが最重要。
(2)寝返りやハイハイなどの仕方は、子どもの個性として受け入れる。
(3)保育士の手を煩わせる子は“困った子”と見られている。
(2)については、お母さんから相談されても「みんなそれぞれ個性があるから、寝返りやハイハイもそれぞれ個性があると思います! 様子見ていきますね」とお話をしていこうと、先輩保育士にアドバイスをもらったこともありました。
(3)については、保育の現場では、例えば、お昼寝は抱っこでしか寝られない子、ゴロンとひっくり返って頭を打つ子、高速ハイハイができ活発な子、手掴み食べをする子など、発達が正常な子もそうでない子も、保育士の手を煩わせる子はみんな“困った子”と見られるのです。
そして、(1)の“最重要課題”をクリアするために、これまでしたことのないことに取り組むことをためらう空気が立ち込めていると感じました。
でも、当時の私は、「そういうものだ。何事も理想通りにはいかない」と思いながら保育士時代を過ごしました。
【母になり】
結婚し長女を出産。保育士で子どもが大好きな私が母になったのですから、「楽しい時間が待っている!」と楽しみにしていたのに…、そんな甘い夢はすぐに消えてしまいました。
私の学生時代は産休育休明けで受け入れる園は少なく、職場でも幼児保育の経験しかなく、乳児保育経験は無し。
それに、赤ちゃんの発達や、お世話の仕方などは「現場で習って覚えればいい」という流れでしたから、あらゆることが戸惑いの連続。
「親になるって、24時間、子どもとずーっと過ごすってことなんだ。こんなにも大変だなんて、夢にも思わなかった」と、来る日も来る日もつらい体で、子どもと向き合っていました。
離乳食は果汁指導の時代でしたから、当然のこととして果汁から進めていったところ、食べないから、よくないとわかっていても離乳食をスプーンで流し込むしかなく…。
寝返りなどは「見守っていけばできるもの」だと安易に考えていたのに、いつまでたってもスムーズにできず、ズリバイも四つ這いもほとんどしないで歩き始めたところ、常に目が離せず手をつないで歩く、目を離し一人で歩くと転んで手が出ず顎を切って病院に駆け込んだこともありました。
「保育士なのに、こんな子育てしかできないなんて…」と、情けないやら、悔しいやら…。
次女では頂いたスリング育児を、無謀にも産後2か月でDVDを見て挑戦! 見ても理解できず、何もできない自分が悔しくて涙を流しました。
三女は上の子の幼稚園の送迎行事などで、抱っこ紐(エ〇ゴ)を使って、抱っこ・おんぶで連れまわし…、今になって思えば、子どもの体に負担をかけてしまうようなことを、平気でしていました。失敗エピソードは、数えきれません。
【“まるまる育児”との出会い】
「何かが違うような、個性なのかそうでないのか…、健診で『問題ない』と言われるけれど、これでいいの?」そんなモヤモヤを抱えながら4人目を妊娠。
腰痛がつらくて骨盤体操の教室に行き、トコちゃんベルトの正しい使用方法を教えてもらったところ、体がラクになり驚きました。2人目の妊娠中から使っていたベルトなのに、「これが同じベルト?」とキツネにつままれた気分に…。
そのご縁で“まるまる育児”を知り、“おひなまき”でスヤスヤ眠る赤ちゃんを見て感動。
「スリングと一緒に実践しよう!」と、心に決めたのは出産予定日1か月前でした。
“まるまる育児”を実践すると感動の嵐。点と点が線になる。自分の疑問が答えとなって返ってくる。私が欲しかった学びは“まるまる育児”だったのです。
よく寝てくれる。抱っこし続けなくていい。頭に形を気にせず寝かせられる。
「どうして向き癖ができるの?」などの答えを知ることができました。
上の子達も向き癖があり、「右向くのが好きなのね~、これがこの子の個性なんだね~」なーなんて言っていた自分に笑ってしまいました。
4番目も向き癖がありましたがマイピーロと“おひなまき”で改善されました。
スリングに入ったら寝る子だったので、上の子の保護者会もスリングで参加しました。何より気になったことを質問できる安心。一緒に“まるまる育児”を取り入れるママ達とのつながりが幸せでした。
そして、寝返り・ズリバイ・ロッキング・四つ這い・高速ハイハイなど全てがきれいでスピーディ。そして、転んでも手の平でしっかり受け身が取れる。
一番驚いたのは、知らない間に箸を使って食べているのを目にした時でした。とにかく、きょうだいの中で体の使い方が1番上手なのです。
【学びを深め発達応援シッターとして活動】
こんなに感動していながら、4人目も“まるまるっ子”の中ではヘタレちゃんと言われていました。そのヘタレちゃんに合わせて「こんな遊びをした方がいいよ、こちょこちょのポイントはここだよ」などと、セミナーや個別指導で教えてくださった先生方に感謝し、「子どもの発達って面白いものなのだな~」と思えるようになりました。
今まで子育てがツライと感じていたのは、「わからないことがわからない」「何が問題か分かったとしても、解決策がわからない」からツラかったのだと腑に落ち、まるまる育児”に出会えたことへの感謝の気持ちが沸き起こりました。
私自身、“まるまる育児”を実践していて困ったことは、私以外の人に預ける時でした。学び始めたばかりの私が家族に「背中をトントンしないでね」とゲップのさせ方や、首枕の着け方、抱き方などを伝え、実践してもらうことの大変さを、十二分に味わいました。さらには、家族以外に預けられない現実。
「それなら私が“まるまるっ子”を預かれるようになればいいのではないか? “まるまる育児”の学びを深めながら、ベビーシッターで活動しよう!」と思うようになりました。
それがきっかけで、私は2年前から “まるまる育児”を取り入れた「発達応援シッター」として活動するようになり、人に預けられないという問題解決の選択肢として活用していただいています。
【おわりに】
日本では子どもは母親と一緒にいるべきと思われがちで、シッターに預けることに抵抗を感じている人もいます。
でも、子どもを預ければ、次のようないいことがたくさんあります。
・より人生の選択が増え育児を楽しむことができる。
・産休育休中にママ達がトコ企画・トコ・カイロプラクティック学院で学ぶこともできる。
・上の子との時間を作ることができる。
・ママ自身のリフレッシュになる。
私自身も産後授乳中の4人目を家族に預けて、トコ企画の新生児セミナーなどに参加しました。あの時の経験があるから今の私がいるのです。
私のように「学びたい、リフレッシュして育児を楽しみたい」と思っているママ達を応援したいと思いながら活動をしています。
もちろん、“まるまる育児”を知らないご家庭に「発達応援シッター」として伺うこともあり、私の経験をお伝えすることもあります。
将来私の活動を通して、より多くの親御さんが“まるまる育児”を知り、実践できる環境を提供したい。
それから、「この子は背中をトントンするとすぐ寝るのよ」と、バンバン叩いて寝かしつける、「身体発達は個性」と思っている保育者に、“まるまる育児”の知識が届く活動をしていきたいと考えています。