東北地方の勤務助産師 Yさんのコラム
赤ちゃん達が私のようなツライ体にならないように
【はじめに】
皆さんはじめまして。東北地方にある独立行政法人国立病院機構医療センターに勤める助産師のYです。
今はNICU・GCUに入院中の新生児(以下入院児)と、その母親のケアを担当しています。
入院児は早産が大半ですが、最近は正期産の全身状態が悪い新生児が増え、吸啜・嚥下・呼吸のバランスが悪く、胎内環境の悪さを痛感させられます。
そんな入院児の母親もツライ体を抱え、児が入院したことに対し精神的にもツライ状況で、マタニティブルー一直線の入院生活を送っています。
最近は夜勤でも日勤でも、泣いている母親の話に耳を傾け、搾乳メインの母親の背中に触れ、肩周りと共に心も体もほぐれるように働きかけることが、日課になってきました。
私自身、長年自分の体の不調にも気付かず、「ツライのは疲れのせい」と思い込んでいました。
「ツライことにも気づけないほど鈍くなった体だったんだ」と分かってから、その症状をセルフケアで何とかしたいと思い、トコ・カイロプラクティック学院の総合ベーシックセミナー修了に至りました。
体が悪過ぎること、たった1人で50人の職場の助産師を相手に骨盤ケアの指導に燃えていることだけで、渡部信子先生から「コラムを書いて」と打診され、気持ちだけで書いてみることにしました。
【助産師になって】
父の癌が見つかったため、地元の総合病院に就職を決め、助産師として働き始めましたが、その年は東日本大震災があり、震災の爪痕が残る中、助産師のスタートを切りました。
進まない分娩、大量出血、帝王切開率の高さに、毎日ツライ思いをするばかり。「いいお産って何だろう?」と、毎日考えるようになりました。
そんな時に、助産師の友人に誘われてメンテ“力”upセミナーを受講したのが2014年4月。骨盤ケアに目覚めたきっかけでした。
今まで産後に使っていた直後パットのさらしや、骨盤ベルトの使い方が間違っていたことに気付き、今まで見たこともなかった仙骨を見る、触るという体験に目から鱗が落ちました。
体全体を診るという基本的なことができていなかったことに気づき、助産学の授業では学ぶことのなかった未知の世界に遭遇。
助産師は魔女と呼ばれていた歴史的背景、現代の魔女に出会った瞬間。もっと学びたいと思いました。
そこから高輪サロンに通い、2015年6月、めでたくトコちゃんベルトアドバイザーになったものの、何かができるようになったわけではなく、資格を取っただけのただの人。
信子先生にも「ベーシックにおいで」と、トコ・カイロプラクティック学院のセミナーに誘われましたが、ちんぷんかんぷんな私にはまだ早い気が…。
安産に導くにはどうすればいいのかと、悩みが深まるばかりの私は、骨盤ケアアドバンスセミナー・安産誘導セミナーの方を先に受けることにしました。
ところが、そこで壁に激突! それがもう一人の魔女、上野順子先生との出会いでした。
当時セミナーを担当されていた上野先生の話が難しすぎて、ほとんど理解できず、2日間のセミナーの間中、頭はパニック、思考停止状態。
場違いのところに来てしまったと思ったほどで、分娩を介助するということの奥の深さを改めて実感させられました。
また、1枚のコピー用紙で“まるまる育児”を初めて知りました。
バスタオルで綺麗に包まれている写真の新生児は本当に愛らしく、よく寝るようだけれど、指導してくれる人はいない。
見様見真似でなんとかできるようにはなったけど、ちゃんと学びたく2016年5月に新生児ケアセミナー・赤ちゃん発達応援セミナーを受けて、本物の“おひなまき”を学ぶことができました。
それからは、赤ちゃんを泣かせないことを夜勤の目標にするようになりました。
今では『まるまる育児バイブル 第2版』で多くのことを学べますが、当時は本当に頭がパンパン。
「赤ちゃんを抱っこするって、こんなに難しいことなんだ。今までやっていた抱っこって何だったのだろう?」と思いました。
でも、「赤ちゃんに優しいケアが正しいケア」と分かると、「今までいかに赤ちゃんに優しくないケアをしていたんだろう」と心が痛むと同時に、スタッフがしている赤ちゃんのケアが気になり始めました。
【私の病気と脊柱】
父の癌のおかげで発覚した家族性の遺伝の病気。甲状腺に悪性腫瘍が見つかり、2014年8月に甲状腺全摘出+リンパ節郭清を受けました。
癌になって、明日が来るのは当たり前じゃないということを実感し、いつかしようと思っていることができなくなるかもしれないという恐怖から、やりたいと思っていることは全部やろうと決めました。
セミナー受講もそのうちに…ではなく、受けられるものからどんどん受けています。
しかし、2交代夜勤後、疲れて疲れて眠いのに背中が辛くて眠れない、肩が痛い、嘔気が続き、夜も眠りが浅くすぐに目が覚める。起きると頭痛がする、肩や背中が痛いという不調が続きました。
初めは搾乳介助のせいで肩が凝っている、背中を使い過ぎたんだと思いこんでいたのですが、そんな日々が数年続き、異変が起きたのは術後4年も経ってからでした。
突然の頭痛と嘔吐。今まで頭痛に悩むことなく生きてきた私に、突然ものすごい痛みが襲いかかりました。
症状は悪化するばかりで遂には仕事中に嘔吐し、働けずに迷惑がかかるようになりました。
お休みをもらい市内でも評判の頭痛クリニックでMRIを受けましたが脳に異常は見られずに片頭痛と診断され、いつ襲ってくるのかわからない頭痛と嘔気に頭痛薬が手放せなくなりました。
ちょうど2018年4月から仙台で開かれた総合ベーシック受講中のことでした。
信子先生に頭痛がひどいことを相談すると「頸椎が原因やで。脊柱の生理的彎曲もないし…」と! 毎月1回、セミナー閉講後の夕方、施術をしてもらうことにしました。
頸椎が原因だと分かると、夜勤にも体操用マイピーロを持参、運転中も使用、とにかく頸椎を守ることに徹しました。
毎月の施術が楽しみだったのに、6カ月間続いたセミナーが終了すると、自分でメンテナンスをするしかなくなりました。
今では月に1度の月経時に骨盤が緩むと、頭痛が悪化するということに気付き、頭痛ともうまく付き合えるようになり、嘔吐するほどの頭痛に襲われることはもうありません。
【職場や教室で】
患者さんや姉の赤ちゃんに“おひなまき”をしてあげたところ「苦しそう」と言われ、それ以上勧められませんでした。でも、今では赤ちゃんにとってどんなに良い環境なのか自信を持って説明できるようになりました。
SPO2モニターがふらついたり下がったりすると他のスタッフに“おひなまき”を外されたり、ベテランのスタッフに「“おひなまき”なんて、嫌いだ!」と言われたりしました。
さらには、勉強会の貼り紙に「縦抱き禁止」と書いたことを注意されましたが、2019年から毎年1~2回、産褥期と新生児の骨盤ケアの勉強会を開催するようになりました。
NICU・GCUの入院児たちが横抱きで授乳できているのに、新生児室の児が縦抱きで授乳されているのを見て、一刻も早く縦抱きを止めてもらいたいと思ったことがきっかけです。
両親学級でもバスタオルを使って丸く包む方法を指導し、後輩にも指導していくようになりましたが、最近は丸く包めない褥婦さんが増えていると感じています。
数年前なら説明すればできていたのに、最近は「上手くできなくて…」と、仰臥位で寝かせていることが増えています。
看護学校で新生児の異常の授業を担当し、看護学生にも胎内環境・まるまる育児について話す時間をもらいました。
去年からは助産学校でも学生に骨盤ケアの授業を担当しています。
私が魔女に出会って骨盤ケアに目覚めたように、少しでも興味を持つ学生が増えることを願っています。
【これから】
最近、第2頸椎の歯突起の後傾・後屈と、姿勢や歯並びの悪さには関係があるとの論文が、小児歯科医によって発表されたことを知りました。
これを読めば骨盤ケア・まるまる育児を学んだことがある助産師なら、その原因は、胎児期の反屈位や乳児期の反った縦抱きが原因と、思うとのではないでしょうか? 私も思いました。
私のような頸椎とツライ体に、赤ちゃん達がなっていくようなケアをしてはいけない。そのためにも、もっとしっかりと勉強しなくてはとの想いは膨らむばかりです。
コロナ禍前は、まるまる育児アドバイザーを取得しようと思っていました。
早く次のステップに進めるように免疫力を上げて、コロナに負けない体を作り、今自分にできることを大切にしていきたいです。
50人も助産師がいる職場で、トコちゃんベルトアドバイザーは私1人。仲間が欲しいです。