出張撮影専門カメラマン 多田直子さんのコラム
心を動かすようなお子さんの写真を撮りたい

 
【はじめに】
みなさま、はじめまして。
出張撮影“バロンフォトワーク”https://baronphotowork.com/ 代表カメラマンの多田直子と申します。
子ども撮影というと、スタジオで衣装を着て…、というイメージが強いかもしれませんが、私達はご自宅やいつも遊んでいる公園や、七五三・お宮参りなどの社寺に出向くスタイルで働いています。
メンバーは全て子育て経験のある女性で、2007年より5,000組以上の家族写真を撮らせていただいています。

個人の撮影以外では、ベネッセ「こどもちゃれんじ」や、幼稚園で配布されている「あんふぁん」など、主に教育誌やママ向け誌で撮影しています。
また、地域の子育てサロンでのカメラレッスンや撮影会、国立附属小学校での総合学習など、写真を通した子育て支援に幅広く携わっています。

今回、新型コロナでいろいろ制限のある中、渡部信子先生から「子育てに向き合っている母子に向けて、施術と撮影の企画をしたい」とのお声がけで、高輪サロンで撮影会をさせていただき、そのご縁でコラムを書かせていただくことになりました。

前置きが長くなりましたが、お付き合いいただけると嬉しいです!

【まるまるニューボーンフォト】
ここ数年、海外でのニューボーンフォトの影響で、新生児期の撮影を希望される方が増えています。
赤ちゃんを飾ったりする写真も多いですが、私達が撮影するのは、安心でベビーも心地よい“おひなまき”姿。

ニューボーンフォトを始めるにあたっては、何よりも安全・安心が大切。
そのため、カメラレッスンや授乳フォト撮影会でお世話になっている“みひかるサロン@自由が丘” https://mihikaru.com/ の池田匠美先生に“まるまる育児”に基づいた、無理のないポーズや抱っこの指導講座をしていただきました。

講座を受けたときは、「うちの子が赤ちゃんのときに知りたかった! ! !」とカメラマン全員で叫びましたが(笑)、このときに教えていただいたことが、ベビーの撮影で非常に役立っています。
“おひなまき”をするとスーッと気持ちよさそうに寝てしまう姿に、ママをびっくりさせたり、お宮参りでぐずりだした赤ちゃんをサッと抱っこして落ち着かせたり。
「さすが、赤ちゃんをあやすのが上手ですね」と褒めていただける機会が増え、おかげさまで撮影もスムーズにいっています。

【息子の一言から創めた授乳フォト】
私達バロンフォトワークの代名詞ともいえるのが、授乳中のママとベビーの姿を撮影する“授乳フォト”です。
今では広く知られるようになった授乳フォトですが、実は11年前に私が創めたものなんです。

下の娘が生まれたある日、授乳の様子を見ていた息子が「僕も飲んでいたの?」と一言。
「あれだけ毎日授乳していたのに…、全然覚えていないなんて!?」と私は大ショック!
息子は寝ない、置けない。とにかく一日中ぐずって泣き叫んでいる赤ちゃんでした。
新米ママの私は、助産師さんに言われた「ぐずったら、とにかくおっぱい」を信じ、泣いた! おっぱい! 泣いた! またおっぱい! で、ふらっふらな毎日でした。

授乳の写真を探したものの、カメラマンなのに1枚も撮っておらず…、あまりにも日常だったので、写真に残すことすら思いつかなかったのです。
このことがきっかけで、期間限定の授乳シーンを写真に残す授乳フォト撮影をスタートしました。
安心して満足そうな赤ちゃんの表情や、授乳中のママ達の姿は、飾らない美しさで、撮っている私達をハッとさせます。

「自分がこんなに母の顔をしていると思わなかった」「あらためて母になったことを実感しました」など、親子の写真が母性を意識するきっかけになった、というご感想も多く、スタートして10年以上経ちますが、いまだに撮影会はいつも満席、という人気のコンテンツに成長しています。
とても手のかかる赤ちゃんだった息子でしたが、それが新しい視点を手に入れるきっかけにもなりました。

【視覚認知に問題のある息子と信子先生の施術】
さて、その寝ない、置けない、一日中ぐずっていた息子が小5のとき、一緒にボードゲームをしていると、左右上下が混乱しがちな息子の様子に気付きました。
「黒板が光って見にくい」と初めて訴えたのもこの頃でした。
これはもしかして…と、視覚認知検査を受けると、追視ができず目が全く動いていないことが分かりました。

息子は
・音読は目を動かすのではなく頭を動かして文字を追っかけていた。
・行の飛ばし読み、勝手読みが多かった。
・ちょっと本を読むとぐったり疲れてしまっていた。
・板書が著しく苦手だった。
・漢字ノートのマス目から文字が逃げていったり、漢字の左右が逆転したり。
・点と点を真っすぐ線でつなぐ“点つなぎ”が苦手。

などなど…、「だらしない性格で適当にやっている」と思い込んでいたことが、「眼球運動の悪さからそうなっていたんだ」と合点。
同時に、高学年まで気付いてあげられなかったことに、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
目の動きを改善すべく、病院でビジョントレーニングの指導を受け、毎日家でもやっていましたが、やっぱり“やらされ感”があると、子どもにとっては面白いものではありません。

そもそも動きの悪い目を使うので疲れてしまい、なかなか成果の見えない毎日。
そんなとき、信子先生に施術してもらうことになり、最初に先生の動かす指を目で追いかけるとかなりぎこちない動き。
「首と頭を正しい位置にすれば、トレーニングの効果ももっと上がるよ」と、触りながら「この子は喘息とアトピーがあるのか、そうかそうか」と先生。
いや、それまだ言ってない・・・けど、「あります!! バリバリのアレルギーっ子です!」。
喘息のときに楽になる背中のケアも教えていただき、施術終了後にもう1回、目の動きを確認すると目がぐるんぐるん動いている!
もう何が起こったのかと、嬉しいやらびっくりするやら。

【滲出性中耳炎の娘も、体からのアプローチで】
また、現在小5の娘は、赤ちゃんの頃から滲出性中耳炎で、チューブを入れたり切開したり治療を続けてきましたが、なかなか良くならず。
副鼻腔炎が一番ひどく、耳の聞こえの問題も指摘された小3のときに、はじめて信子先生に施術していただきました。
品川駅に向かう道で、「おかあさん! 音が大きく聞こえる! おかあさんの声がはっきり聞こえる!」と、本人も私も顔を見合わせてびっくり。

息子の場合、視覚認知の処理(脳)にも発達の問題があり、この部分はどうにもなりませんが、入力(眼球運動)を改善することで、目と手の連携も少しずつ上手くいくようになってきました。
本人の性質・環境・親子の相性など、いろいろなことが複合して発達が促されていくと思いますが、その中のひとつとして、体からのアプローチは我が子達には非常に有効でした。

赤ちゃんの頃から感じていた育てにくさの原因のひとつに、「体のことがあったんだな」と思うと、「早く気付いてあげればよかった。赤ちゃんのときから取り組んであげればよかった!」という後悔はありますが、「正しいケアをすることに、手遅れということはない」とも実感しました。

【観察すること、寄り添うこと】
お子さんの撮影の場合、メカニカルなテクニックだけでは、心を動かすような写真は撮れません。
ですので、バロンフォトワークではただ音を鳴らしたり、おもちゃを見せたりした気を引くような撮影はしません。
「この子はどんなことが好きで、どんな環境なら安心するかな、どうすればもっといいコミュニケーションが取れるかな」と、しっかり観察することで、お子さんの自然な笑顔を引き出しています。

我が子にはつい不安になったり、腹が立ったりと感情が先だってしまい、うまく観察できなかった私ですが、カメラマンとして子どもに関わる際は、プロの第三者として、冷静な包容力をもって、お子さんやご家族に寄り添うことを大切にしています。

この春、「お子さんのタイプや発達に合わせた撮影」を新しく始めました。
12年の撮影の中で、さまざまなタイプのお子さんと接してきた経験から、感覚としてわかっていることもたくさんありました。
でも、やはり、医療・発達・教育の専門家ではないですし、人によってはデリケートな話題ですので、プランとして掲げていいのものか、ずっと悩んできた内容です。
ですが、お子さんのことを「相談しやすくなった」と、好意的に受け止めていただけるケースが多く、今後は発達や体のことなども、もっと知識を深め、よりよいサポートと撮影を提供したいと思っています。

【信子先生との撮影会】
先日、高輪サロンで信子先生と撮影会をさせていただいたことは、私にとってとても感慨深いものでした。
13年前、子宮頸管無力症による切迫早産で突然入院になり、泣きながらトコちゃんベルトを着けていた妊婦時代の私に、「13年後、トコちゃん先生と撮影会をやりますよ」と教えてあげたい!
寝ない、置けない、一日中ぐずっているという超絶手のかかる息子を抱いて、途方に暮れていた新米ママ時代の私に、まるまる育児を教えてあげたい!
いずれも私にとっては過ぎてしまった時間ですが、これから撮影で出会うご家族が楽しく育児や撮影ができるよう、お手伝いできたらと思っています。

最後に、今回撮影会をさせていただいてびっくりしたのが、信子先生のスピード感!
「撮影会やりましょう!」の1時間後には日時が決定し、その数時間後には募集が始まり、あっという間に満席。
いろいろな先生、サロン・企業さんともお仕事をさせていただきますが、ここまで決定が早いのは初めてでした。
年々、「頭も体も柔軟性がなくなってきているな~、歳だな」と言い訳をしていましたが、「いやいや、私もまだまだ精進しなくては!」と、とても刺激を受けました。
このコラムをお読みの方で、ご自身のサロンやお教室で「撮影会をしてみたい!」と思われた方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にお声がけくださいね!
信子先生を見習って、私達も止まることなく、新しいことにチャレンジしていきたいと思っています。