広島県の勤務助産師 山田智子さんのコラム
新型コロナ発生の地で奮闘する“空手助産師”

 
【新コロクラスター発生の地で】
皆さんこんにちは、そして初めまして。広島県在住の助産師、山田智子です。
現在公立の病院で働いています。
世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス。私が勤務している市でも、広島県内のあちこちでも、クラスターが発生しました。
最近では広島県内でも新たな感染者はなく、小康状態を保っていますが、職場にはピリピリとした空気が漂っていて、まだまだ気の抜けない状況です。

研修や学会、会議なども次々と中止になり、日々の生活も変わってしまいました。
本当は骨盤ケアに関する研修にも参加して、資格の更新もしたいと考えていた年でしたが、県外移動も制限がかかり、叶わず…。
そんな中、オンラインという形で参加できる“トコ・カイロプラクティック学院入門講座”を知り、飛び上がる思いで申し込み、6月25日(木)、受講しました。
こうして、文明の力にも頼りつつ、情報を吸収・発信できるようになることは、「これからの時代には必須」と、痛感しています。

【私の仕事のテーマ】
入門講座は情報の引き出しも増え、さらに語彙力も上がるという、最近の私のテーマに沿う内容で非常に魅力的でした。
私の仕事におけるテーマは、「こうしたら、どうなるか? やってみよう!」です。
相手がいたらそこに気づきが生まれ、得た情報からアセスメントし、さまざまな解決策を探ります。
情報の引き出しは「新しく、正しく、シンプルで、多く」をモットーに、取り組んでいます。
そして、対象が行動に移せるように導くには「どうアプローチしたらいいのか?」と、いつも考えます。
もちろん、ケアギバーのときは、実践まで繋げることが肝心! ただ、評価の段階でいまひとつであれば落ち込みますが(笑)
次の一手を絞り出す、これはまた情報と知識があるからできるのです。
また対象がいる場合、対象の“思考環境の扉を開ける”イメージで実践します。これは妊産褥婦であれ、助産師仲間や後輩であっても同じです。
今回のオンライン入門講座で学んだ“メタ思考”って、「私がいつもしている考え方で、私の仕事のテーマに通じるものでは?」と感じ、なんだか嬉しくなってしまいました。
さらに“メタ認知”も意識し、自分自身の強みにして、相手の思考にインパクトを与えられるようになりたい!
まだまだアプローチする方法がたくさん出てくると思うと楽しくなりますね。

【骨盤ケアとの出会い】
私は17年前に長女を妊娠・出産し、そのときに旧タイプのトコちゃんベルトに出会いました。
しかし、深い知識もなく、ただ「気持ちのいいベルトだな」と感じて着けていただけでした。
その後、就職した広島の産婦人科病院で「骨盤ケアの研修を受けに行かない?」と先輩に誘われ、(旧)母子整体研究会の研修を受講しました。
自分の体と向き合うことや、体に触れ、感じ、手当をしていく感覚がとても心地よく、何より自分の体が楽になるのを感じ、すっかりハマってしまいした。
だって、私は中学生のときから脊柱側弯症と診断されていて、肩の高さも背中の盛り上がりも、大胆に違っていたんですから。
渡部信子先生に「震度5! あんた、よう子ども産めたなぁ」と言われる始末…。
しかも、私自身が「しんどい」とすら気づいていないという、今思うと、無知で可哀そうな奴でした。
ところが、ベーシックセミナー受講のために京都に通うこと半年、みるみる体が変わっていくのがわかりました。
同期の受講生や同僚から「すご~いっ!」と驚きの声を聞く度に「これは…、体のしんどい妊産婦さん達にも伝えなければ」との気持ちが強くなっていきました。

【近頃のうちの病院事情】
さて、当病院は新型コロナ感染対策のため、立ち会い分娩もできなくなり、診療も家族が同伴できないなどの制限の中、数カ月が過ぎました。
外出が制限され、家で過ごす時間が増え、体力が落ちた妊産婦さんが目に見えて増えています。
さらには、実家で長期滞在するためか、体をあまり動かさない上に、美味しいものをよく食べるのか、「乳房トラブルも増えた」と実感します。
もちろん、妊婦教室も骨盤ケア教室も、産前の赤ちゃんケア教室も開催できなくなりました。
新型コロナ感染防止対策に時間が割かれ、妊産婦さんへの指導時間は削られ、伝える手段は個別指導にシフトチェンジとなりました。
でも、考えてみれば、個別指導の中だと、伝えるチャンスはあるのです!
そこで少しでも自分の体と向き合うための操体法や、産後に向けて今のうちにしておくべきことを伝えるなど、私も含めてスタッフ一同努力している最中です。
今回のオンライン入門講座! まさに、活かせる内容でした。“短時間で相手に伝える力をつけること”を職場の皆にも広め、伝えていきます。

【最近の気になる妊婦さん】
私は、日ごろは産婦人科外来で、夜勤のときのみ病棟で働いています。
地域性なのか、時代なのか、強い腹直筋離開の人が多く、今は骨盤輪支持だけでなく腹部支持も欠かせなくなっている方が増加しています。

[症例1]
近隣の医院からの紹介で、まもなく臨月という週数で妊婦健診受診。当院で出産予定の初産婦さんです。
超音波検査のために横になり、医師の診察の準備をするのですが、なんともいびつな形の子宮をしている。
胎児は明らかに斜めに入っていて、児頭は産道を真っすぐに進めない場所にありました。しかも、臨月間近…(>_<。)
「これはいけない、時間がない!」と思い、操体法と腹部の支持法を指導しました。
その後、自分でしっかりと取り組んだようで、2週間後の健診ではだいぶん子宮の形が良くなり、その次の臨月での健診ではとってもきれいな形になっていました。
ご本人も「体が楽になった」と言われ、予定日前に陣痛発来し、無事に経腟分娩されました。
ところが、生まれてきた赤ちゃんは顔が左右対称ではなく、首をかしげている(@@)!
「胎内姿勢がそのまんま続いている」と感じ、落ち込みながらも「新生児ケアセミナーで習ったことを活かさなくては!」と一念発起。
まずは“おひなまき”をお母さんに伝え、寝床・寝かせ方・首の手当て・首枕などについて伝えていきました。
「退院した後、どう変わっているかな?」と案じながらも、1ヵ月健診で会えるのを楽しみにしています。

[症例2]
3人目の経産婦さん。腹壁がダルダルで、お腹は大きくて尖腹。前2回とも2,000g近い分娩時出血があったという、かなり大変なお産をされていました。
「今回も出血に対応しないといけない」と予測しながら、腹部支持法を指導していました。
夜勤の申し送りで「陣痛発来で入院後、いつの間にか遠のいた」と聞きました。勤務交代の挨拶に行き、お腹を診ると…、「あれっ、恥骨の上に児頭がない! 心音の位置もおかしい!」。何と、横位に近い足位になっていたのです。

家で腹部支持を続けていたのかどうか尋ねたところ、「していない」との返事(@@)!
すぐに腹部支持し、骨盤高位で様々な体操を促したものの、再度陣痛が始まり、時すでに遅し。
外回転にも応じず、臍帯脱出の危険もあるため帝王切開となり、3,600gを超す大きな赤ちゃんが臀部ではなく足から生まれてきました。
術後も緩みまくる子宮を整えるため、クーリングと腹部支持と骨盤輪支持を行いました。
分娩時出血量は羊水込みで1,200g。今回が一番少なかったのですが、「もっとしっかり、妊娠中からケアや指導ができていたら…」と思うばかりの症例でした。

セルフケアを頑張り、妊娠中から様々なアイテムを上手に活用している人は、産後もセルフケアを続けられます。
しっかりと自分と向き合い、セルフケアに励んでいる方を見かけると、嬉しく思う今日この頃です。

【空手女子】
そんな三交替勤務をこなしながら、ブランクはありますが、通算25年余り空手を続けている“空手女子”です。
体を動かすことは本当に心地よく、子ども達とのかかわりも面白い(^^)v
空手は“一眼二足三丹四力”という動きが基本です。
「丹田を鍛える。そして、整える」。これは、骨盤ケアの思考や施術にも通じるものがあり、こんなところでも空手が役立っています。

2月に昇段試験を受けに行き、現役大学生と組手を行い、手も足も出ず落ち込んだのですが、結果は…、3段に受かりました\(^o^)/
やはり、何でも毎日の練習! 感覚を養い、コツコツと努力を続けることが大切です。
そして、体が元気であることが、生きていく上で何より大切です。
渡部先生とは流派は違うものの、“空手トーク”を楽しみにしつつ、これからも助産師も空手も精進していきます!!
皆様もぜひ生涯スポーツ、空手をしてみませんか?! (^o^)/~