「解剖学的内子宮口をしっかり見ましょう」
 
大震災から1ヶ月半、大きな影響も出ないうちにアトニンも流通し始め、薬に依存した医療には反対派の私も、薬がなければ現実には大混乱が予想される今日の医療の現実を考えると、ほっと安心しました。

大震災以後、東京の高輪サロンでの施術を中止しているため、4月の名古屋サロンでの施術日を1日増やしました。決めたのは2~3週間前だったので「たくさん予約は入らないだろう」と思っていたのに、1週間前には予約いっぱいに! しかも、妊婦さんの初来室者が多くて、問診やトコベルの着用指導にも時間がかかり大忙し。翌日も同じように妊婦さんの初来室が多く、忙しさと、様々なケースに出会い、私の頭は緊張でハイテンションになってしまいました。

1年半ほど前から、ハンディータイプのエコーを使うようになって気付いたことは、解剖学的内子宮口~頸管がV字型に開いている妊娠中期の人を、時々見かけるようになったことです。妊娠23~24週の一番怖い時期に、逆子で、V字型の中に胎児が脚を突っ込んでいるケースも二人ありました。

そのうちの一人は「私は助産院でします」と平然と語られたので、私は「10分後に破水してもおかしくない状態なので、すぐに病院で診てもらってください。逆子が直れば助産院でお産はできると思いますが、今の状態ではとても危険です」ときっぱりと言い切りました。その後は来られていないので、どうなったかはわかりません。

脚を突っ込んでない逆子のケースはもっと多いのですが、いつどうなるかわからないので、本当に怖いです。最近は、名古屋サロンに来られる妊娠中期の妊婦の1/3人くらいはV字型に開いているように思います。中には、前日の健診でもらったエコー写真で、頸管の棍棒状開大が見られた人もありました。ところがその人を丁寧にエコーで診たら、何と、ダルマのような黒い画像が映し出されたんです!

聞くと、前日の健診の後、体が辛くて、お腹も張るので、しっかり骨盤高位にしてトコベルを着け、ずーっと寝ていたそうです。それでか? 内子宮口だけ閉じて、頸管が緩んだままでダルマ形が映し出されたのか?! その少し後、ベーシックセミナー受講者に尋ねたところ、「V字型が映る人は多い。骨盤ケアをしていない施設の医師は、気にもしていない人が多いのでは?」とのこと。

今から23年ほど前(?)、私が京大産科で働いていた頃、外子宮口閉鎖なのに、切迫で入院して来た妊婦がありました。病棟医長は「外子宮口が開くより、頸管が内子宮口からV字に開く方が危ないんや」と言い、我々は「へぇ~、そうなんか?」と思ったものです。それから、時々そんな人が入院して来るようになりました。その頃から、このような診断技術が普及し始めたんですね。

ところが今でも、担当医にもらったエコー写真を見ながら、「V字型に開いているのは、心配ないんですか?」と尋ねてもらっても「よくあることだから心配ない」と言われた人もあります。それに、内子宮口が閉じていない妊婦の多さに驚くばかりです。

数日前、助産学生時代からの親友で、産婦人科医と結婚した人と、久々に電話でおしゃべりをしました。夫婦で産婦人科医院を経営しているのですが、最近は転院して来られた妊婦さんが、転院後すぐに早産してしまうケースが続き「ほんまに、たまらんわ~」と話していました。

全国的に分娩を取り扱っている産婦人科医が激減し、過労死しそうな状態にある産婦人科医が増えているのはよく理解できるのですが、やはり診察はきっちりとしてもらわないと、多くの人が大変な目に遭います。ですから、妊婦さん本人にも、超音波写真の胎のう(GS)や子宮の内腔の形や胎児の姿勢だけでなく、V字型がないかどうかも、気にかけて見てもらうように、これからは伝えていかなければと思うようになりました。

超音波を使っての診察は法的に助産師でももちろんできることですので、解剖学的内子宮口の状態をしっかり診られるようになることは、母子の安全を守るために、とても大切だと痛感するばかりです。

骨盤ケアをしっかりすると、たいてい1~3週後に施術に来られた時には、V字型は消えています。ところが私の小さいエコーではきれいな静止画は撮れないので、残念です。ですから、皆さん、骨盤ケア前後の写真を撮って、学会などで発表してください。これはぜひとも、発表していかないといけない課題だと思います。

それと、S助産師(大学院生)の研究によると、トコベル着用群と、非着用群との間で、産後1か月の時点で、解剖学的内子宮口の閉じ方に有意差が出たそうです。これは、9月末に京都で開かれる日本母性衛生学会の、(有)青葉のランチョンセミナーで講演してもらうことに決まりました。

しっかり内子宮口が締まった状態で妊娠しないと、低位胎盤・前置胎盤や、切迫流早産が増えるであろうことは、容易に想像できますので、注意を払いつつ毎日の仕事をしたいと思っています。皆さんも「こんなケースがあって驚いた」と思われた時は、ぜひ、info@tocokikaku.com まで、送ってください。