滋賀県の勤務助産師 武田 晴美 さんのコラム
67歳、看護部長として、まだまだ頑張ります!
【はじめに】
はじめまして。滋賀県大津市堅田の浮田クリニックに勤務している助産師で、看護部長を務めている武田晴美です。
当クリニックは、高島市より大津市に移転して6年目になり、年間分娩件数は約650件、秋には不妊センターがオープン予定です。
移転当初は、スタッフも少なく夜遅くまで業務に追われる日々が続き、教室も前期・後期母親教室のみでしたが、6年経った現在では、スタッフ数も増え、教室数も産前と産後と合わせて16教室になりました。
【恩師との出会い】
京都の総合病院の産婦人科病棟で、看護師として働いた2年間、看護師と助産師の間の大きな壁を感じました。「助産師と同じ位置に立って働きたい」との一心で、助産師資格取得にチャレンジしました。
幸いにも大阪赤十字助産師学校への進学が決まり、ここで、教務主任の故石塚和子先生と出会いました。
先生は学生のことは勿論ですが、お産が大好きでお母さんと赤ちゃんのこと、家族のことを常に考え、こうしたら…? ああしたら…どうなるんやろ? と考えておられました。
授業・セミナーなどの講師としても、受講生の心を掴むとてもバイタリティーに溢れる尊敬できる先生でした。今の私は「石塚先生から教わった学びを、全ての妊産婦さんと母子に、微力ながらお返ししたい」と思いながら働いています。
【復帰を決心】
助産師になって1年半、産休明けで退職を上司に伝えたときのことです。上司の一言は、「助産師としてはこれからが一番、分かるようになり楽しくなるのに、辞めたら何も分からないよ」と。この言葉が胸の奥に引っかかったまま、家事と2人の子育てに明け暮れていました。
やがて、自分の時間ができるようになり、意を決して10年ぶりにお産の現場に復帰しました。ところが…、10年ひと昔。産科医療の変化は大きすぎました。
私の新人時代は、トラウベとストップウォッチを持ち、レオポルド胎児触診法で児背を確認し心音を聴取する。陣痛発来後の産婦の観察時は、目・耳・鼻・手、多くのアンテナを張り巡らせ、一瞬の状況変化も見逃さないよう緊張のしっぱなしでした。
なのに、10年経って復帰した現場には、ドップラー・超音波検査機・胎児心音モニターなどがズラリ。「何て便利なものが…!」と感心しながらも「これはどう扱うの?」「あの心拍数が下がっている波形は、心配しなくていいの?」と、若い助産師に質問しなければ働けない情けなさ…、困惑と動揺の日々が続きました。
【娘の出産で感じたこと】
2007年に友人に誘われ(旧)母子整体研究会の入門セミナーを受講し、渡部先生と出会い、すぐに基礎セミナーに進みました。とても難しく、頭で理解しながらも実技は混乱を極め…、ついていけなかったんです…(>_<)
このとき、渡部先生に肩甲骨ケアを指導していただき、自分の体が軽く・楽になったこと実感し、体の変化にビックリ!これを契機に「真剣に学んでみよう!」と決心したのです。
2008年にはトコ・カイロプラクティック学院のベーシックセミナーを受講したのですが、この間に娘が第2子を出産しました。
出産直前まで嘔吐を繰り返し、決して楽しいマタニティライフではなかったようです。
トコちゃんベルトを着用し、分娩時もゴムチューブを巻いて、「いざ! 生まれるはず!」なのに…、生まれない(>_<。)娘の一言。「なんでも良いから早く産ませて!」
私は何を思ったのかゴムチューブを緩めるのではなく、外してしまったのです。その途端に生まれた~っ(@o@)
言うまでもなく、その後は強度の腰痛を抱えながら、骨盤ケアをしながら、トコちゃんベルトをひと時も外せない育児期間を過ごしました。苦痛だったと思います。
2008年は、娘の件もありベーシックセミナーを、それはそれは真剣に学びました。学べば学ぶほど、妊娠・出産による体の変化の重大さを知ることになりました。
【骨盤ケア・“まるまる育児”の必要性を感じて】
今のクリニックで私は、主に母乳外来・着帯教室・骨盤ケア教室を担当しています。
母乳外来には、乳腺炎・母乳分泌量不足・硬結・白斑などのトラブルだけでなく、極度の冷え、肩こり・頭痛・腰痛・恥骨部痛、フラフラして力が入らないなど、体中につらい症状を抱えたお母さん達がいっぱい来られます。
でも、どんなにしんどくても、育児を休めないのがお母さん。赤ちゃんはというと、反り返り、かん高い声でいつまでも泣き続け、口は開かず、舌が巻き上がって、上手く母乳を飲めず…。
母子ともにつらい状況の中、お母さんへの対応策は、トラブルを繰り返さないためのセルフケアの指導と施術です。
頸部~背部のコリ緩め、肩甲骨剥離で上体の調整をし、温罨法とタオル玉を併用しながら乳房マッサージをします。
上体の調整を行うとお母さんは、体が楽になり寝息が聞こえてくることも度々。体がほぐれリラックスできるんですね(^^)v
お母さんの毎日のセルフケアとして
①タオル玉を使用しての、首回しやツボ押し
②うつ伏せ寝で“おっぱい揺らし”
③肩甲骨体操
これらの継続が必須です。
赤ちゃんのケアとして
①口のマッサージ
口周囲の筋肉が緩めば舌が出て、口が大きく開くことを説明。
②母乳育児指導
お母さんが①を実感できるように行う。
③“おひなまき”
反り返る子はもちろん、全ての赤ちゃんを胎内環境に近づけます。
妊婦健診では毎回、助産師による問診と、医師による診察があり、超音波検査で心拍や推定体重だけでなく、胎位や胎勢の確認、羊水量や血流などを測定しています。
超音波検査機の性能はどんどん良くなり、とても綺麗な胎児の様子が撮影されるようになったので、胎位や胎勢が改善するよう、母体の症状改善のケアと併せて行うよう努めています。
体の痛みや不調のある妊婦さんには、全身の観察から始め、症状から原因を突き止め、骨盤ケアの三原則を指導することでたいてい改善します。
それだけでは改善しない強い症状がある妊婦さん(歩行困難、立位になれない、寝返りができないなど)には施術を行います。また、症状の原因やセルフケアを続ける必要性について説明し、当日だけでなく、継続してケアに当たっています。
それでも症状の改善が思わしくない方には、京都トコ会館を紹介しています。さほど遠くない所なので勧めやすく、施術後は元気になられるので助かっています。
このような体の不調を訴える妊産婦さんが増えていること、トコちゃんベルト・骨盤ケアに関心のある人が増えていることで、個別対応には限度があります。私の体は一つしかありませんからね。
【膨らむ教室開催への想いから】
全ての妊産婦さんに、妊娠によって起こる自分の身体の変化を知って欲しい! セルフケアで悪化を防ぐ手段を知って欲しい! 意識を高く持って欲しい! と日々想いが膨らみ、副院長に掛け合いました。
妊婦さんの要望、骨盤ケア教室の必要性を理解して頂き、許可が出たのは数か月後のことでした。逸る気持ちを抑えながら教室開催準備に取り組み、ベーシックセミナー受講者や修了者に協力してもらって立ち上げ、今年で2年目になりました。
毎月1回 午前・午後 定員各6名 対象者は医師の許可があれば妊娠週数は問わず、2時間の内容に対してスタッフは4~5名で始めました。教室は、児心音聴取と骨盤のサイズ計測から始め、骨盤ケアの三原則を基本に進めます。
前半はパワーポイントで説明、後半は実技。ベルト着用の位置の低さに驚かれることもしばしばで、受講者の目は真剣です。最後に、児心音聴取、アンケートを行い終了します。
腰痛などの症状のある人は、個別対応で施術を行い苦痛の緩和を図ります。
【今後の課題】
腰痛で苦しんでいた妊婦さんから「骨盤ケアを続けて痛みが楽になりました。産後も続けます」と元気に声をかけられ、「教室を開催して良かった」と思う反面、考えてしまうことも多いのが現状です。
例えば、ケアの大切さを知っていただいた妊婦さんから、「寝て着けるのが大変で、途中から着けていません」と聞き、ガッカリすることも…。
というわけで現在、課題は山積しています。
・ケアの継続ができない人への対応
・腰痛などの症状のある人への対応
・骨盤ケア教室の内容の再考
そして私自身の課題
・妊産婦さんや患者さんの満足度up
・骨盤ケアの普及
・スタッフの力量up
・産後ケアハウス開設の準備を進める
全ての妊産婦さんが素晴らしいマタニティライフが過ごせるよう、赤ちゃんとお母さんが笑顔で「育児は楽しい!」と言えるよう、必ずサポートします!
67歳、まだまだ頑張ります!