山形県の開業助産師 齊藤範子先生のコラム
前駆陣痛時にギックリ腰! 産後4ヶ月で出会った骨盤ケアから17年

 
【はじめに】
山形県山形市で“エンジェル助産院”を開業しております齋藤範子と申します。
「一人一人に合ったケアがしたい!」。そんな想いが膨らみ、10年間勤務した総合病院を退職し2005年に開院、今年で15年目になります。
分娩は取り扱ってはいませんが、現在は産後ケア・母乳育児相談・骨盤ケア・ベビーケアなどの個別対応をはじめ、トコちゃんの骨盤ケア教室などを開催しています。

【助産師として勤務し始めて】
山形県内で一番分娩数が多い総合病院に助産師として就職し、周産期センターの産科に配属になりました。
たくさんの方々にかかわらせて頂くなかで、妊娠中のマイナートラブルに悩むママや、難産で産後の育児がつらそうな姿…。分娩が遷延したときの産婦さんへのケアが何もできないことが多く「どんなケアをすればいいのか」と常に悩んでいました。

助産院で開かれている研修にも積極的に参加して、昔からの様々な技を学び、習得した技を実践しても、なかなか進行しない分娩…。「何故なんだろう、昔と今、何が違うんだろう?」と疑問に感じながら日々の業務にあたっていた病院勤務時代でした。

【ギックリ腰を起こした当日に出産】
結婚後も同じ病院で勤務し、27歳の時に1人目を妊娠し、出産は埼玉県に住む姉の近くにある助産院でしました。
2人目も同じ助産院で…と、予定日の1ヶ月前には、姉の家に3歳の長女とともに身を寄せていたのですが…、38週6日、朝から不規則な陣痛が開始し「今日産むぞ!」と気合をいれて布団を持ち上げた瞬間、ギックリ腰に_| ̄|○
それまでも勤務の疲れや、分娩介助姿勢などで2年に1回くらいギックリ腰を起こしていましたが、まさか出産当日に起こすとは…。夢にも思わなかった事態の中で、腰は痛くても、分娩は順調に進行。陣痛開始から2時間ほどで、側臥位で無事に出産しました。
もちろん! 陣痛の方が痛くて出産中は薄れていた腰の痛みも、産後は最悪な事態に。出産直後から始まった授乳や赤ちゃんのお世話の1つ1つの動作に、悲鳴を上げながら、なんとか動いていました。授乳も頻回なのに添い乳がやっとの状態。産後ゆっくりできれば良かったのでしょうが、そこが経産婦でした。

そのとき姉は4人目の産後3週、その姉に長女を預けていたため、出産の翌日に助産院を退院。山形から実母に手伝いに来てもらえず、姉妹で合計6人の子ども達と産後を過ごし、痛みを抱えながら山形に帰ったのは産後3週のときでした。
家に帰っても体を“くの字”に曲げ、痛みに苦しみながら、何とか産後の生活を送ってはいましたが…、「自分の体が不調だと産後はこんなにも辛いものなのか」「この状態で育児が楽しく感じるわけない」と思っていました。

【骨盤ケアとの出会い】
私が骨盤ケアと出会ったのは今から17年前です。
出産当日からのギックリ腰は、日ごとに痛みは軽くなっていったものの、3ヶ月を過ぎても骨盤周囲の痛みは治まらず…。1年間の育児休暇をとっていたとはいえ、「本当に仕事に復帰して業務ができるのだろうか?」と、真剣に悩む日々が続きました。

そんなある日のこと、忘れもしません、2002年6月、次女が4ヶ月の頃に「産後の腰痛の原因は骨盤! 仙台でセミナー開催します」とのチラシが目に入りました。
「もしかして…、これは今の私のことかも?!」と、早速申し込みました。子連れで参加したセミナーは目からウロコの内容で、初めて聞くことばかり。でも根拠に基づいた内容で、「やっぱり自分の今回の腰痛も妊娠出産が原因だった!」と実感。

と同時に、右向き癖がひどくゆがんでしまった娘の頭が渡部先生の目に止まり、妊娠や出産が赤ちゃんの頭のゆがみにも影響することも、初めて知ったのでした。
産後はつらくて起き上がれず、授乳は常に添い乳でしていたため、常に同じ向きで次女を寝かせていました。「向き癖は当然の結果」と、今なら理解できますが、その頃は自分の体の痛みで、目の前の家事・育児をこなすのがやっとの毎日。赤ちゃんの寝かせ方も頭のゆがみにつながるなんて、当時は考える余裕すらなかったのかも知れません。

骨盤ケアを知ってからはトコちゃんベルトの着用と、セルフケアを繰り返し以前とは違って少しずつ痛みが改善し変わっていく自分の体に感動したのを今でもはっきり覚えています。
また、赤ちゃんのケアの必要性を知ってさまざまな事を学んでからは、我が子でも実践の日々…。

【助産院開業】
育児休業から復帰後、院内でも骨盤ケアをし始めてはいましたが、次第に総合病院での仕事に限界を感じるようになり、10年間勤務した後、助産院を開業したのが2005年でした。
開業後はトコ・カイロプラクティック学院のセミナーを受けるために、山形から品川まで、毎月のように新幹線通学。
旧オステオパシー⇒カイロプラクティックセミナー⇒交感整体、トコ企画のセミナーなど、整体・カイロプラクティックの基礎から、妊娠子宮・胎児触診法、助産診断まで、さまざまなことを数年かかって勉強。復習を繰り返しながら、今でも学び続けています。

開業後は仕事で接する母子のケアだけでなく、家族へのケアもさらに丁寧にできるようになりました。子ども達には小さい頃から姿勢や座り方、体を使うことの大切さ、セルフケアについても話したり、その都度ケアしたりしてきました。そのかいあってか20歳と17歳の娘2人は生理痛知らず、これまでに一度も鎮痛剤のお世話になったこともなく、必要な時にはセルフケアしながら毎日元気に過ごしております。
これからも骨盤ケアの必要性を理解して、若いからこそ自分の体に関心を持ち、常に自己ケアしていってほしいと思います。

【骨盤ケアを広めるために】
骨盤ケアの重要性を知ってからは、旧母子整体研究会時代から毎年のように、産科勤務の助産師さん達に知ってほしいという思いで、山形や仙台でセミナーの開催をお願いしています。
一人でも多くのママのために体や骨盤のしくみを知って、その人に合ったケアができる助産師や医療従事者が増えて、私のように辛い思いをする妊産婦を少しでも減らしたいという思いでした。
何年たっても技術は決して上手とは言えませんが、各セミナーに参加することで、多くの医療従事者の方々とさまざまな情報交換ができ、とても学びになりますし励みにもなります。
また年々、妊産褥婦さんの体も変化しているのも実感しています。さまざまな相談に対応できるように、常に新しい知識を得るための学びはこれからも欠かせないと思っています。

助産院を開業してからは、看護学生、助産師学生の講義や見学実習、助産師さんの研修等を積極的に受け入れております。骨盤ケアを目にすることのない若い年代にも、ぜひ興味を持ってもらい、今後に繋げていってほしいと思っております。

山形市で実施している「トコちゃんの骨盤ケア教室」の参加人数は、けっして多くはなく、少人数で行うこともしばしば。がまん強い東北人だからか?“予防”ではなく症状が現れてからの申込みもあり、かえって「少人数や個別対応で良かった~」と思うことも多々あります。
これからも少ない参加人数でも継続して、教室を実施していくことが大切だと思っています。

【おわりに】
もしも骨盤ケアに出会っていなかったら…? 今でも腰の痛みに悩まされながら病院勤務をしていた? 助産院開業なんてなかったかも知れません。産後17年間ギックリ腰になることもなく生き生きと仕事ができているのは、骨盤ケアのおかげだと感謝しています。
子どもに手がかからなくなったら、親の介護が始まり、以前のように気軽に山形から片道3時間の新幹線通学は難しくなりました。
今まで学ぶために協力してくれた家族にも感謝しつつ、研鑽を積んで、山形のママと赤ちゃんが安心して妊娠出産を迎え、産後も笑顔でいられるよう、これからも微力ながら頑張っていきたいと思っております。