北海道の勤務助産師 長島英津子さんのコラム
院内外で教室開催、ますますタフに

 
【はじめに】
皆さん、はじめまして。北海道白老町に住む助産師、長島英津子です。
白老町は北海道の南西部、胆振管内のほぼ中央に位置し、南は太平洋、西は登別市に隣接しています。白老とはアイヌ語で「虻(あぶ)の多いところ」という意味の言葉「シラウオイ」から来たといわれています。
2020年には白老ポロト湖畔に国立アイヌ民族博物館(通称ウポポイ)国立民族共生公園が誕生します。日本一多種多様な源泉の湯が揃う登別温泉めぐりも兼ねて、ぜひ、一度来てくださいね!

私は現在、12歳の男女の双子と、5歳になる次女の母親であり、産科クリニックでフルタイム勤務をし、さらに院外で、骨盤ケア教室・まるまる育児教室・ママカフェを開いています。
人からはよく、「タフだね~」とか「えらいね~」と言われるのですが、それはたぶん、ママカフェを開くのはいつも夜勤明けだし、骨盤ケア教室と“まるまる育児教室”は休みを1日このためにとり、午前午後に分けて活動しているからだと思います。もちろん疲れます (^^; でも不思議とママ達やベビーに会うと元気になれるんです(*^_^*)

【骨盤ケアとの出会い】
初めて骨盤ケアセミナーを受けたのは、2007(平成19)年7月札幌に渡部信子先生が来られたときでした。そのときは「骨盤ベルトの使い方を学んで、正しい指導を妊婦さんにできるようになりたい」の一心でした。
そのかいあって、クリニックに通われているたくさんの妊婦さんの、指導に当たることができました。

そうこうしているうち、私は双子を出産し眠れない日々。助産師なのにうまくいかない(;-_-)「助産師なんだ」というプレッシャーからか、ほとんど自分1人で育児を抱え込み、3カ月間不眠不休。
「双子だから育てにくいんだ」。そう思いながら1人はあぐらの中に置いてゆすり、1人は抱っこして1日中いたものです。今ではほとんど当時の記憶すらありません(~_~;)

それから1年ほどたち、ベビー整体セミナーを受講したとき、スライドに映った“育てにくいベビー”の写真の中に、我が子たちと瓜二つの寝姿を発見(@_@)!
ベビー整体を学んだ後の私は、ショックでショックで、「出産前にどうして学んでなかったんだろう(>_<) 」と落ち込んだことは今でも忘れられません。

その後、私の意識は変わりました。
・育てにくいと感じるママ達を助けたい!
・つらい妊娠期と思わせたくない!
・「医師がいないし、薬も出せないから…」ではなく、骨盤ケアで何とかしたい!

と、具体的な自分の目標が見え、東京にトコちゃんベルトアドバイザー養成セミナーを受けに行きました。
ちょっと話はそれますが、その日、さぁこれから試験というときに、あの3.11の大地震に見舞われました。2011(平成23)年3月11日のことでした。
今でもはっきり覚えていますが、恐怖でキャーキャー叫ぶ私の目の前で、信子先生の「大丈夫や、この建物は絶対に倒れません!」との声。皆でその日は信子先生の高輪教室に泊まり、後日再度受けに行き、合格しました。
それから約2年半、東京に通い、トコ・カイロプラクティック学院のベーシックセミナー・カイロプラクティックセミナーを受講し、修了しました。

【クリニックで医師に受け入れられるようになった骨盤ケア】
クリニックでは毎月1回、骨盤教室と、毎週1回、逆子体操の会を開いています。骨盤教室では1時間の座学の後、体操と骨盤輪支持の実習をします。
「あ、動ける!!」「楽~」「え? 痛みなくなってる~」の声。冬場は交通事情で教室は空席ができますが、雪が解けるとキャンセル待ちの状態です。
逆子体操の会では主に4種混合体操・しっぽ探し操体法・体側伸ばし操体法や、下着の指導、骨盤輪支持実習をしています。

妊娠30週の時点で骨盤位(斜位・横位を含む)の妊婦さんには、逆子体操の会に参加を促しており、促されて参加しなかった妊婦さんはなく、全員が参加されています。
その数は、2012(平成24)年~2018(平成30)年の6年間で364名。
その内、301/364名(82.7%)が頭位となり、298/364名(81.9%)が経腟分娩、3名はNRFS(胎児機能不全)適応による帝王切開となりました。
骨盤位適応による帝王切開となったのは63/364名(17.3%)。
平均すると1年間で10.5名。
ちなみに1年間の分娩件数は400~450件です。

頭位の妊婦さんには逆子体操の会には参加を促しておらず、参加する人はありません。
しかし、NRFS・分娩停止・常位胎盤早期剥離の適応で帝王切開になる人があるため、頭位の妊婦さんも参加できる“安産体操の会(?)”を開けるといいのになぁ…と、考えているところです。

骨盤位による帝王切開が激減したことで、今では医師から「操体法へ」という指示が出るほどになりました。初めてカルテに書かれたこの指示を見たときは、「認められた!」と、心の中でガッツポーズをとったことを、今も忘れられません。

【“欲”が出てくる】
そんな日々を過ごしているうち、他院で出産予定の妊婦さんから「骨盤教室を受けたい」「逆子体操の会に参加したい」との声が聞かれるようになりました。
しかし、それがかなわないのがクリニックの現状。「どうにかできないだろうか」「希望しているすべての妊婦さんに伝えてあげたい!!」。そんな“欲”が日に日に湧き起こって来たのです。

そんなとき、私が通っているカフェのオーナーが「場所貸すから教室やってもいいよ」と、私の背中を押してくれました。それからの私は休日を利用して“ママカフェ”と“まるまる育児”“骨盤教室”を開くようになりました。
休日開催ですから、いろんな施設で出産予定の妊婦さんも参加でき、さまざまな症状や要望を持つ妊婦さんにお会いできるようになりました。
「1人目は何もしなかったから、お話を聞けて良かった!!」と喜ばれる方や、「腰の痛みが嘘のようになくなって普通に歩ける!!」との声。そんな声を聞くと、疲れは吹っ飛びます(^^♪

“まるまる育児教室”に集まるママ達に、ベビーの体の緩め方を教えてから“まるまるねんね”にするよう伝えると、その後、参加者から「寝るようになりました」「楽になりました」の声。

次第に地元白老だけではなく、隣町の登別や室蘭からも「教室を開いてほしい」との声が寄せられるようになり、2018(平成30)年7月からは、月に1度、登別・室蘭・伊達方面の方を対象にした、トコちゃんの骨盤ケア教室を開いています。

ママカフェにはいろいろなママ達が集まり、情報交換。「このスリングいいよ~」「こうやってやれば使いやすいよ」「まるくすればいいよ」「今度教室に出ればいいよ」と、盛り上がります。

【夢】
ママが快適な妊娠生活を送り、楽しく育児をすることができ、その上、体のしっかりした子どもに育つよう、全てのママ達に、なるべく笑って育児をしてほしい。育児不安からくる産後鬱・虐待・自殺、それらに歯止めをかける黒子でありたい。それが、今の私の夢です。
大きな大きな目標達成への小さな活動かもしれませんが、そんな夢を追いかけている私は、ますますタフになってしまうのです(^^;
今後もさらに学びを深め、“伝え人”“黒子”として在り続けたいと思います。