福井県の開業助産師 川治綾加先生のコラム
学びを仕事に育児に生かしつつ
【はじめに】
皆さん、はじめまして。川治綾加と申します。
世界三大恐竜博物館の1つがあることで少しだけ注目されるようになった福井県で「ハッピー・ベビー母乳育児相談室」を開業しています。助産師になり18年、東京・福井の病院に勤務したのち、3年前に坂井市で助産院を開業しました。
助産院での母乳育児支援だけでなく、骨盤ケア教室を開いたり、病院で分娩当直などをしたり、市の赤ちゃん訪問や、子育て支援センターでの育児講座・ベビーマッサージを担当したりと、幅広く働いています。
いろいろなお母さん達と出会い、赤ちゃんから癒しをもらい、毎日が学びの連続です。
【助産師になるまで】
私は生まれてから高校まで福井県福井市で過ごし、群馬県の短大に進学しました。「進学するなら手に職を!」との母の教えもあり、看護師・保健師・助産師の国家資格を取得しました。
助産師になりたいと思うようになったのは、医療技術短期大学の母性実習がきっかけでした。
微弱陣痛で吸引分娩、なかなか産まれず1時間かけて10回くらい吸引 (今では考えられませんが)。壮絶なお産でした。私はお母さんの足をさすりながら、ただ励ますことしかできませんでした。ようやく赤ちゃんが生まれてきましたが、具合が悪く小児科入院、お母さんは出血多量で満身創痍。
まさに命をかけたお産に、学生だった私は衝撃を受けました。
「お産って、こんなに大変なものなのか」
上手に産んであげられなかったと自分を責めるお母さんに、私は何もできずどう声をかけてよいかも思いつきませんでした。
その時、実習担当だった助産師が毎日お母さんのもとに行き、お母さんの話をそっと聞いていました。母乳をまだ上手に吸えない赤ちゃんに母乳を届けるために搾乳のお手伝いをしたり、肩をもんだり、涙を流すお母さんのそばにそっと座っていたり。そのうちにお母さんの表情がよくなっていきました。お母さんは最初「まさか私のお産がこんなに大変になるなんて。
赤ちゃんの頭(大きな産瘤)を見て申し訳なくなる。育てていけるか自信が持てない」と言っていました。でも、「話を聞いてもらい楽になってきた。今は赤ちゃんがかわいいと思える」と表情穏やかになり退院していきました。
その姿を見て、お母さんと赤ちゃんが喜びの中で出産を迎えられるよう、お手伝いがしたい。産後すぐの大変な時期にお母さんに寄り添える助産師になりたい、と思うようになりました。
そして短大卒業後、群馬大学に編入学し助産師となりました。
【トコちゃんベルトとの出会い】
大学卒業後、東京都江戸川区にある産婦人科小児科病院に就職しました。
大学の教授に「産婦の産む力を信じ、寄り添うお産を勉強したい」と相談したところ、「あなたにはここしかないわ」と紹介してもらった病院でした。
助産師外来・母乳外来はもちろん、フリースタイル分娩を取り入れ、マタニティビクス・マタニティヨガの教室もありました。
18年前の当時、鍼灸師やアロマテラピストも勤務していて、分娩進行を助ける三陰交へのお灸や、産後のアロママッサージなどもしていました。
故佐々木静子院長の女性の体を大切にする考え方が素晴らしく、その考えに賛同した助産師が全国各地から集まってきていました。
そして、テルミー・母乳ケア・アロマテラピーなどの院内勉強会が毎月開かれ、私はここでトコちゃんベルトと出会いました。
(旧)母子整体研究会の研修を受けた開業助産師を招いた勉強会で、トコちゃんベルトの巻き方や、産後のお母さんの体ほぐしなどを教えてもらい、体を楽にしてあげられる技術に感動。
そして、産後に恥骨離開で歩けなくなったお母さんがベルトを巻いて歩けるようになったのを目の当たりにし、「すごい!私も正しく装着できるようになりたい!」と思いました。
年間約1,000件の分娩のうち、帝王切開率は10%以下。妊娠中から体を整えることが侵襲の少ないお産につながっていると実感しました。
「『病院に行って、先生に診てもらっているから大丈夫』というのではなく、自分と赤ちゃんを守るためには、自分で体を整えておくことが大切だ」と教えてもらいました。
病院の貸し出し用ベルトを巻き、楽になっていくお母さん達を見て、「ちゃんと勉強したい」と思いつつも、なかなかセミナーに参加できずにいました。
そうこうしているうちに、実家を継ぐため福井へ戻る日が来てしまいました。
【福井へ戻り、結婚・出産・開業】
福井に戻り、「今まで勉強してきたことを生かしたい!」と燃えていましたが、病院の中でできることは限られていて、空回りすることも多々ありました。
そんな中、結婚し3人の子どもに恵まれました。3回の妊娠出産でトコちゃんベルトの効果を身をもって体験した私は、たくさんのお母さん達に伝えたいとの思いが高まり、トコちゃんベルトアドバイザーを目指し、2016(平成28)年2月、開業の2か月前に取得。4月に助産院を開業し、12月から会場を借りて「トコちゃんの骨盤ケア教室(春江教室、福井教室)」を始めました。
教室の所要時間は2時間ですが、あれもこれも伝えたいと思うと時間が足りません。定員は3名までとし、一人一人に合わせたアドバイスができるよう心がけています。
赤ちゃん連れで参加できる「産後の骨盤体操教室&育児相談会」も開催しており、妊娠中からの骨盤ケアの大切さを伝えていたところ、次の子を妊娠し骨盤ケア教室に参加してくださる方もいらっしゃり、地道な活動が実を結んできたと感じます。
ネットや産院で購入し、トコちゃんベルトの正しい装着法の指導を受けられていない方がまだまだ多いと感じます。
教室に参加された方から、
・参加してよかった
・自己流の着け方とは心地よさが違う
・体が楽になった
・妊娠したら全員教室に参加すべきだと思う
といったうれしい感想をいただき、直接返ってくる反応にやりがいを感じています。
それと同時に正しいことを伝えるという責任も感じ、昨年から基本整体を受講し始め、今年の1月に修了。今はまるまる育児アドバイザー取得に挑戦中です。
最新の情報を学び直し、更新しながら、少しずつ成長していきたいと思っています。
【学びを仕事に育児に生かしつつ】
勉強が苦手だった私ですが、トコ企画やトコ・カイロプラクティック学院のセミナーは刺激的で、毎回楽しく参加しています。熱い想いを持つ仲間との出会いも、セミナーの楽しみの一つです。
セミナーから帰る電車の中で、さっそく教わったことを復習して手が勝手に動いているので、周りから見たら“危ない人”に見えるかもしれません。
自宅では、まずは教わったことを夫や子どもの体で練習します。3人の子どもたちは毎晩、各種ピーロを着けて寝ているのですが、特に10歳の次女は “たっちゃん巻き”を気に入り、毎日巻いてくれと要求してきます。これは「まるまる育児アドバイザー養成セミナー」で、受講生として参加していた原田美佐子先生に教わった巻き方です。
3人とも寝相が良くなり、夜中に寝ぼけて起きてくることもなくなりました。「子どもは心地よいことに敏感!」。そんなことに今更ながら驚き、感激しながら、子育てを楽しんでいます。
セミナーで勉強したことが仕事に役立つだけでなく、家族の健康にもつながるとは、なんてステキなことでしょう。
これからも、体をケアすることが幸せな妊娠出産育児につながることを、お母さん達に伝え、その方らしい育児のお手伝いをしていきたいと思います。
そして私も、不器用だけど、一人一人に寄り添ってケアしていきたい。私らしい助産ケアを大切にしていきたいと思っています。
渡部先生、セミナーで出会う皆さん、これからも未熟な私にいろいろ教えてください。よろしくお願いいたします。