山形県鶴岡市の病院勤務助産師三井亜希子さんのコラム
母子にも助産師にも優しい骨盤ケアを求め続けて12年

 
【はじめに】
私は、山形県鶴岡市の産婦人科病院に勤務しています三井亜希子と申します。今年で助産師22年目、故郷宮城県から鶴岡市に移り住んで18年、骨盤ケアを学び始めてから12年になります。
トコちゃんベルトアドバイザーを取得後、仙台で開催されたベーシックセミナー(6日間)を2012年5月に修了、今年の5月から仙台で始まった総合ベーシックセミナー(10日間)を受講し10月に修了しました。
昨年には、まるまる育児アドバイザーを取得しています。
今回、コラムのお話をいただきましたので、コツコツ続けてきた骨盤ケアを振り返ってみました。

【骨盤ケアとの出会い】
今から12年ほど前、病院に出入りしている業者さんから、トコちゃんベルトを紹介されました。ベルトの試着をすすめられ、立った姿勢のままスッと巻かれたそのベルトが、何とも言えない心地よさで、「何コレ! きもちいい~!」と感動したのがトコちゃんベルトとの出会いでした。
当時は、腰痛の妊産婦さんが多い実感があり、私自身が妊娠中の腰痛に苦しんだ1人でしたので、「良いアイテムに出会えたな~」と、業者さんに感謝しました。
これが骨盤ケアとの出会いになりました。

【地域性…?】
当地で働き始めて、気がついたこと…。
・産後、恥骨や股関節の痛みで動けない症例が多い
・産後の弛緩性出血なんて日常茶飯事
ですから、腰痛があっても、自力で動けているのならまだマシな方とのことで、「経過観察」となっていました。なぜ、トラブルが多いのか疑問を抱きつつも、解決策がわからないまま働いていました。

【骨盤ケアセミナー…私が受けた衝撃】
はじめて受講したセミナーは“医療従事者が学ぶ骨盤ケアセミナー”でした。
未知の世界に足を踏み入れるワクワクと、出産後、久しぶりの外出にウキウキしながら出かけましたが、セミナーが始まると、そんな浮足立った気分は一転…。
まず渡部先生の話術とパワーに引き込まれ、骨盤ケアの理論に眼から鱗が何枚も落ちました。私が日々抱いていた前述の疑問が次々に解明される一方で、子宮の入れ物である骨盤についてこんなにも無知で、院内で行っているケアが、妊産婦さんのためになるどころか害になっていることを知り愕然としました。
当時、産後はウエストニッパーか、さらしで腹部をぐるぐる巻きにし、子宮底を押し下げる方向に輪状マッサージを行っていましたので…_| ̄|○
ここから私の骨盤ケアへの取り組みが始まりました。

【骨盤ケアへの取り組み】
①院内で伝達講習会開催
セミナーの伝達講習会開催により、産後のケアが見直され、腹部の圧迫を招くケアは中止となりました。骨盤ケアの重要性は認識されたものの、骨盤にさらしやベルトを巻くケアは、私1人で行うしかないという状況がしばらく続きました。

②症状のある方のケアを実施と行き詰まり
まずは症状のあるクライアントへのケアから取り組むこととし、操体法後に骨盤高位でベルトを着用することから始めました。
劇的に改善する方がいると、スタッフ間では「骨盤ケアすごい!」の空気が流れ、頑張っても改善が見られない方がいると、「そんなもんだよね~」の空気が流れ…。セミナーで習ったように行ったつもりでも効果が出ない。効果が出なければ、骨盤ケアを普及させられない…。と、徐々に焦りと行き詰まりを感じました。

③母子整体研究会セミナー受講
自分の知識と技術に行き詰まりを感じた私は、テイクケアの技術を求め、(旧)母子整体研究会の基礎セミナーを受講しました。
格段に内容が難しくなりましたが、技術的な行き詰まりを解消することができただけでなく、他の受講生と情報を共有できたことで自分自身のモチベーションを維持することができました。

④産後全例に骨盤ケアを導入
「骨盤ケアは良いものだ」とスタッフに周知されたところで“直後パット(トコ式)”をお産セットに組み込み、これを機に産後全ての褥婦さんに骨盤ケアを提供できるようになりました。
産後、全例に骨盤ケアを導入した以降、産後の歩行困難の患者さんと、第Ⅳ期の弛緩性出血は激減し、今ではベッドから起き上がれない患者さんはほとんどいません。“直後らくらくトコちゃん”を導入してからは、骨盤輪支持が容易になり、褥婦さんのセルフケアもダブル巻きも容易になりました。

⑤安産のためのケア
回旋異常、微弱陣痛は年々増えつつあります。なかなか進まないお産は、産婦さんも家族も疲れますし、そんなお産を連日担当していては、助産師が心身ともに疲弊してしまいます。
セミナーの中で、「これをすると、一気にお産が進むことがあるから準備は万端に!」という内容が、しばしば出てくるのですが、これが本当に進みます!私の技術の未熟性もあるので、全員に効果があるわけではありませんが、引っ掛かっているポイントが修正されると、スムーズに進むのです。
これを実感してからは、お産が進まなくなる前に、体のあちこちをモゾモゾと動かすよう働きかけることにより、セルフケアに励む産婦さんが増えてきました。お産がスムーズということは、当然ですが赤ちゃんにもストレスが少ない…。母にも助産師にも優しい! 一石三鳥です。

⑥これからの当院の骨盤ケア
現在は、妊娠初期に骨盤ケアの必要性をリーフレットにまとめたものを配布し、希望者にのみ、トコちゃんベルトの装着指導を行っています。
当地域でも、徐々に骨盤ケアが浸透し、教室開催の要望が届いていますので、今後は、骨盤ケア教室を開催できるよう準備を進めるとともに、「妊娠中の骨盤ケアはベビーケア」を啓蒙し、骨盤ケアとともに、ベビーケアを広く浸透させていきたいと考えています。

【学びは続くよどこまでも】
私はこれまで、母整研・トコ企画・トコ・カイロプラクティック学院のセミナーをくり返し受講してきました。
何度受講しても前と全く同じということはなく、クライアントの体と、ケアギバーの私たちの体と技術に見合った内容に更新され続けています。
今年復習受講した総合ベーシックセミナー中にも、渡部先生にはどんどん新しいアイデアが浮かび、受講生の声を聴き、手技の方法までその場で進化させてしまう…。日々進化を目の当たりにしながら学ぶことができました。
セミナーは、講義・実習と盛りだくさんで、頭がいっぱいになりますが、自宅で動画を反芻し、自主練を重ね、技術を自分の物にしていく努力は、絶対裏切らないと思います。

【おわりに】
これまで学び続けて来られたのは、“ケアの理論と内容が現実と合致し、すぐに役に立つと実感できる”こと、セミナーにはいつも“熱気と活気と適度な緊張感があり、参加するたびに知識が深まり、頑張る気持ちが充電できる”こと、そして“ともに教え合い、納得いくまで練習し合う仲間たちがいる”ことだと思います。

講師の先生方や受講生の皆さんとの交流は、私にとって勉強の場でもあり、日々の悩みを打ち明ける場でもあります。セミナーに行くたびに、心も体もリフレッシュできました。
この先も、日々変化する需要に対応できるよう学び続け、自分が持っている知識と技術を駆使し、当院のスタッフと協力して、骨盤ケアとベビーケアを鶴岡の多くの妊産婦さんに広められるよう頑張りたいと思います。