京都府の産婦人科医院勤務鍼灸師 和辻理恵さんのコラム
鍼灸・骨盤ケア・スキンタッチ・マザーズケアリングもやっています!
はじめまして、京都府亀岡市の産婦人科医院のパート勤務鍼灸師 和辻理恵と申します。
大好きだった祖母や両親のおかげで鍼灸師になれたことに感謝しつつ、院内で鍼灸治療・骨盤ケアなどを担当しています。
【生い立ち】
北陸の金沢で2,300g未満で生まれ、9歳年下の弟が生まれるまでは1人っ子。両親は共働きで早朝5時起床。母方の祖父母の家に預けられ、その校区の小学校に通い、煮物中心の食事で育てられました。冬になるとシモヤケが足・顔・耳にできて顔は真っ赤。手足は氷のように冷たく、しばしば自家中毒を起こす、胃腸の弱い小柄でやせっぽちの子でした。
運動が得意ではない私に、父は毎週温水プールで水泳を教え、自宅に鉄棒を買って逆上がりを教えてくれました。
母は私に1人で留守番しなくてもいいようにと、ピアノ・合唱・書道を習わせ、いろんな先生と巡り合い、1人娘として9年間、大事に育ててもらいました。
そんな私に転機が訪れました。弟が生まれたのです。
1人っ子期間が長く独り言が多かった私は、弟の泣き声を聞くと、「抱っこして欲しいよね」「おむつ汚れて気持ち悪いよね」など、よく弟に声をかけ面倒を見ました。抱っこにおんぶ、おむつ替え、ミルクを飲ませることはもちろん、私にとってはままごとの延長のような毎日でした。
【鍼灸師を目指して】
祖母が転倒し圧迫骨折から腰痛が悪化し、整形外科にかかっても一向に改善せず、鍼灸治療院に通院するうちに痛みがおさまり、歩けるようになりました。
両親が「鍼灸の大学があるよ、おばあちゃんも応援してくれるから、京都で頑張ってみたら?」と明治鍼灸大学(現:明治国際医療大学)受験と、一人暮らしを勧めてくれました。
また、私は高校で陸上部のマネージャーをしていたので、痛みの治療に鍼灸治療が効くことを知っていました。そこで、西洋と東洋の両医学を学びたく、大学進学を決めました。
大学では3回生で国試を受験するため、入学後は朝から夕方まで講義。卒業後は、整形外科・内科・皮膚科と透析室のある個人医院に勤務し大学の先輩と私の5人で、1日約100人に鍼治療をしながら2年間働きました。
その後、結婚・退職・出産。妊娠中も産後も、大学4回生から往診していたお宅で治療を続けていました。長女が小学校に通う頃、同級生の奥さんの出産がきっかけで、今の産婦人科医院の院長と出会い、自分の妊娠出産時の鍼灸治療や小児鍼と、子育ての経験を生かせる仕事をさせてもらえることになり、パート採用が決まりました。
【骨盤の大切さを知るきっかけ】
今から10年ほど前、院内で腰痛ケアに当たっていた助産師が退職。彼女は母子整体研究会で勉強していたため、院長先生の勧めで私が勉強することになりました。
初めて整体を学ぶ私が「妊婦さんを診る?! そんなことができるの?」と戸惑いましたが、人の体に触れて経穴(ツボ)を探す鍼灸と、共通項があると信じて、何度かセミナーに通いました。
ある日、必死に触診を頑張っていたところ、講師から「あなたの触り方は乱暴」と指摘を受け、ショックを受けました。いつの間にか自分の腕や指先に力を入れないと、診察や手技ができなくなってしまっていたことに気付き、やがて「整体は私にはできない」と思い悩むようになりました。
そうしているうちにメンテ“力”upセミナーが始まり、「初日は座学、2日目に実習というメニューなら、また頑張れるかも?」と、再起を図りました。
パワーポイントで視覚に訴える理論学習、渡部先生のハリのある声に刺激を受け、「もう1回骨盤ケアを勉強してみよう!」と再び歩み始めました。
【妊娠・出産・子育て】
東洋医学では女性のライフサイクルを7年周期で考えるので、私は「28歳までに産み終えて、30歳までには再就職する」と決めていました。
妊娠してからは胎教についての古典『諸病源候論』を日々の指針とし、おくるみやオモチャを作ったりしながら、ゆったりと幸せに暮らしました。
おかげさまで、つわりもマイナートラブルもなく、妊娠経過は順調でしたが…、「あの時、操体法をしていたら、体力増進できたのにな~」と、今は後悔ですね。
初乳だけは絶対に飲ませたかったので、よく泣く長男に20~30分おきに授乳し、睡眠不足と闘いながら、第2子妊娠まで何とか頑張りました。母は「母乳がよく出るように」と、レンコン団子の味噌汁を作ってくれました。
毎日の子育ては、弟の面倒をみた経験が大いに役立ちました。
私の第1子 長男は泣いてばっかりで、「何でいつまでも泣いてんのよ!」と、お腹の上に長男を乗せて、夜遅く夫が帰って来るまで、家事もせずに過ごしたことが何日もありました。
その後、トコ企画セミナーをいろいろ受講するうちに、「ギャン泣きの原因がお産にあった!」と気づき、ショック。長男は吸引分娩で生まれたのです。長男の母子手帳に記載はありませんが、2回とも出産に立ち合った夫が「生まれ方が違う」と語ったことから分かったのです。
第2子 長女も歯並びは悪く、私の骨盤が幼児型(=類人猿型)だったから、子ども達は顎を上げ、体をくねらせながらでないと、産道を通れなかったのだと分かり、申し訳なく思いました。
幼い頃から車移動が多く、公園では遊具で遊ぶくらい。学生時代もお遊び程度のフィールドワークしかしなかった私ですから、しゃがんでガーデニングや、股関節の外旋筋を鍛えるような運動が必要だったんですね。悔やまれました。
【現在の私の仕事】
現在、院内の1室で妊婦さんのオリエンタルケア(鍼灸治療)と腰痛外来を担当。完全予約制で、主に逆子・マイナートラブル・乳汁分泌促進の鍼灸治療をしています。
腰痛外来では、妊婦健診で主治医の指示がある方や、トコちゃんベルトを希望される方を診ています。自分で希望される方には、主治医に許可をもらってから予約していただいています。
母親教室では妊娠中の体について、トコちゃんのハンドブックを使って説明し、簡単な腰痛予防のツボのセルフケアと、トコちゃんベルトの紹介をしています。
【最近の妊産婦さんの傾向】
腰痛外来に来られる方は、どこが痛いのかすらはっきり分からない方が多いので、動きに伴う痛みがある方向とない方向を感じてもらいながら、操体法を指導しています。
でも、最も苦戦しているのは操体法の指導です。言葉で説明するのはなかなか難しく、治療に来られた方に私の動きを見てもらいながら、一緒にやってもらっています。それから、問診をしながら、どんなことに気を付けたらいいのか、1人1人の体に合うお話をします。
操体法はきちんとできれば非常に直後効果が高いのですが、うまくできないと何の変化も起きません。
良くなった感じがない⇒セルフケアを続けない⇒放置⇒重症化⇒メジャートラブル発症⇒入院⇒ベッド上安静⇒エコノミー症候群予備軍⇒難産⇒全身の痛み⇒不眠⇒産後うつ…。
そうならないよう、尿漏れや便秘、足のむくみなどのプチトラブルのうちに、きちんとケアすることが、ひいては、産後うつを予防することにつながると思っています。
反対に、ハイテンションで産後の職場復帰のことばかり話すお母さんもあり、このタイプの方には特に、骨盤ケアの話をしっかりして、操体法・骨盤輪支持を勧めます。
そして、退院時には一言、「適当なことも必要だよ。テキトウは手抜きではないよ」と、笑顔でお見送りするように心がけています。
【親子スキンタッチ健康法教室】
自分の体が痛くてもつらくても、子育てを優先してしまうのが母親です。
私自身も子育ての大変さを知っていますから、そんな経験を生かして月1回開催しているのが「親子スキンタッチ健康法教室」です。これは東洋医学の診察法を応用し、お母さんの我が子への観察眼を養い、スプーンや歯ブラシで皮膚を撫でたりこすったりして刺激する方法です。
この教室の参加者は赤ちゃんの健康や発達への関心が高く、毎日の子育てを頑張っている方です。お母さん同士で「子どもの体のことで気になること」の意見交換のひとときにもなっています。
私が一番気になるのは、お母さんの抱っこの方法です。頑張り屋のお母さんの動きはぎこちなく、筋肉はパンパン。まるまる抱っこなんて到底無理と感じることもしばしば。
「縦抱きにすると赤ちゃんは喜ぶので…」と、赤ちゃんの表情も見ずに赤ちゃんを肩に乗せるお母さんは、きっとゲップも同様にしていることでしょう。私が赤ちゃん人形を使って「こんなゲップのさせ方もあるんだよ~」と、アドバイスするようにしています。
お母さんは毎日子育てを頑張りすぎるくらいやっているのに、私がたった一度見たやり方を「そんなやり方はダメ!」と言ったのでは、自分の子育てに自信が持てなくなりますよね。
【マザーズケアリング】
以前から、私が産後のお母さんに「体調はどうですか?」と尋ねても、反応はイマイチ。入院中の5日間、赤ちゃんのお世話に追われ、自分の体までは気が回らない方が多いようです。
最近、日本伝統鍼灸学会主催の臨床セミナーに参加しました。助産師資格も持つ鍼灸師の発表があり、「産後1か月くらいを目安に何らかのケアをしないと、慢性化や重症化になるリスクが高まる傾向がある」とのこと。すぐに院内の詰所会で報告したところ、新しくマザーズケアリング(産後の養生)を始めることになりました。
「産後に気になる体のことを気軽に話せて、アドバイスがもらえて助かる!」と言ってもらえるよう目指しています。
子育て真っ最中は大変なことばかりで嫌になることもありますが、「子どもを産んで育てたことは、かけがえのない経験」と思える日が訪れるよう、力になりたいです。
【これからの私】
渡部先生を見ていると「今の仕事を生涯続けていくためには、自分の体を整えることが大切」だと分かります。
渡部先生が本を出版されるたびに購入し、何度も読み返しながら家で体操・操体法をやり、次の日の臨床に役立てることを目標にしてきました。
学びを自分のものにするには、じっくりと自分と向き合う時間も必要です。
これからも渡部先生を真似て、学んで、体作りに励み、私らしいお仕事を末長く続ける!これが私の決意であり夢です。