【はじめに】
北海道函館市で「函館スリング」という会を主宰している保育士、幼稚園教諭の高橋麻実と申します。主にベビースリングの使い方を指導をしていますが、それにプラスして“まるまる育児”とトコちゃんベルトの着用指導をしています。
私と“まるまる育児”・骨盤ケアとの出会いは、第2子出産直後の26歳の時でした。
第1子から使用していたスリングを、「横抱きでも使ってみたい」と思ったのがきっかけで、当時住んでいた大分市の開業助産師 芦刈美和先生のサロン“リラ”を訪ねました。「第2子だから」と、赤ちゃんに慣れているつもりになっていた私は、生後1か月の娘を縦抱きにして、背中をトントン(ドンドンだったかも?)しながら連れて行ったのです。
生後1か月で縦抱きにされた我が子は、スリングの中で丸まれるはずもなく、1週間の「まるまるチャレンジウィーク」を課せられました。その後、第4子までの5年間はリラ通い。適度な骨盤ケア・胎児ケア・赤ちゃんのケアなどを定期的に受け続けました。
保育士だったこともあり、子どもの発達の話は面白くて、魅力的でした。しかし、この時は、まさか、自分がこの世界に入ることになるなんて、思いもよりませんでした。
渡部信子先生との出会いは、芦刈先生の“リラハウス”新築記念講演会の会場。この時、現在2歳の第4子は、まだ生後3週間!参加を迷いましたが「会場は助産師ばかりよ、大丈夫よ!」と芦刈先生に背中を押してもらい参加を決意。これが運命だったかもしれません。
この講演会で第4子をモデルに、信子先生が直々に“おひなまき”のデモンストレーションをしてくださったのです。
その2年後には、函館市で“まるまる育児”を伝える仕事をし、去る8月26日には信子先生の施術会を開催するなんて…。当時は一参加者だった私、どんなにびっくりしていることでしょう(*^_^*)
施術会の様子は「函館スリング」のブログをご覧ください。
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http://hakodate2016sling.blog.fc2.com/blog-entry-93.html
【大分から函館に】
大きな転機は大分市から北海道函館市への夫の転勤です。
函館では、周りにスリングユーザーは皆無。生後まもなくから縦抱きにされ、抱っこ紐に荷物のように釣り下げられている赤ちゃん達(;-_-)ここでは私が大分で受けてきた“まるまる育児”は「あたりまえ」でないことを知ります。
でも、0歳の第4子をスリングで抱いて出歩くと、「スリングを持っているけど使えなかったの」という声を、次々と聞くようになったのです。そこで手はじめに、スリングの講座を開催することにしました。これが「函館スリング」の会の最初の一歩でした。
しかし、教えられるのはスリングで“まるまる横抱き”をする方法だけ。お母さん達に理論的に伝えられる確固たる自信はなく、トコ企画のセミナーの門をたたくことになります。子ども4人を育てながら、東京に仙台にとセミナーに通った1年。セミナーは面白くて面白くて夢中で受講しました。
一番面白かったことは、私が今まで我が子にしてきた“まるまる育児”が言語化され、理由付けされていくこと。そして、「“まるまる育児”を受けた子は、こんな子になりますよ」との、事例通りの我が子達の姿に、「やっぱり!!」と大きくうなずいていました。
【我が子を通して“まるまる育児”のすごさを実感】
我が家には2歳から小学校3年生までの子どもが4人います。
私が“まるまる育児”に出会ったときに生後1か月だった第2子は、現在小学校2年生。その娘は体幹が良く、どんな運動も器用にこなします。
足の届かない鉄棒でぶら下がった状態から逆上がりをしたり、鍵編みでマフラーを作ったりと「まるまるで育つと手先が器用で身体能力が高い」とのセオリー通り!そんな彼女の成長が“まるまる育児”を伝える後押しをしています。
“まるまる育児”の集大成である第4子は現在2歳。1日6分しか泣かないというポリネシアの赤ちゃん同様、オッパイ・オシッコ・ウンチのときだけ泣いて教えてくれる子でした。赤ちゃんの頃から大人の要求をよく理解し、大人も彼女の要求をよく理解でき、2歳になった今もグズるということはありません。しっかり食べ、よく遊び、眠くなったらいつの間にか寝ている…、という手のかからない健康な子です。
初めて箸や鉛筆を持ったときから正しく上手に使いました。そして始めから、筆圧がしっかりしていて、○を上手に描き次第にその丸が小さく正確な○になる様子は感動的でした。
歩き始めるとすぐにブランコに一人で座って体幹を使って漕ぎ、鉄棒に親指をしっかり出してつかまり、30秒もぶら下がっている(@@)!
2歳になったばかりの頃に、モンテッソーリの幼稚園で、紙を針と糸で縫う活動があり、これもささっとやってのけました。もう、「これこそ“まるまる育児”!」という姿をたくさん見せてくれるので、毎日が楽しくて仕方がありません。
一方、赤ちゃん期に“まるまる育児”をしてこなかった第1子は不器用で、体の使い方がぎこちなく、まっすぐ座っていられないなど、はっきりとした違いが出ています。「だからこそ“まるまる育児”は大切」と、実感を込めて伝えています。
【家庭でできるセルフケアという考え方】
私には施術をする技術はないので、体操や“おひなまき”“こどもまき”“おとなまき”などのセルフケアで、家族の健康を保っています。いつの間にか子ども自身が“こどもまき”や体操用マイピーロを好むようになり、自分の体のケアを日常としている姿が見られます。これぞ、まさしくセルフケア!
我が家の息子2人は年に何度か「足が痛いよ~(T_T)」と、夜中に泣きながら布団の上をのたうち回り、そのたびに私は「成長痛だねぇ、大きくなるんだわ」とやり過ごしていました。
ところが、“こどもまき”で痛みが治ることを知って以来「足が痛い~、お母さん巻いて~」「寝違えた~、お母さん巻いて~」と、“こどもまき”を要求してくるようになりました。巻いてしばらく布団の上で転がったり、丸まったりを繰り返すと「治った~、出る~」と、爽快な顔をして出てきます。
我が家は元々、発熱や咳、皮膚の病なども、自宅で手当をしています。そこに“まるまる育児”“おひなまき”“こどもまき”“おとなまき”の技術が加わり、体の痛みやしんどさのケアも家庭でできるようになりました。
「家庭でできること」があるということは、辛そうにしている子どもを、翌日の受診までヒヤヒヤ看ていることなくケアできます。
もしも、そのケアが上手くいけば、わざわざ病院に行く手間が省けます。我が家は子どもが4人ですから、1人の子の受診にぞろぞろ全員連れて行くのは大変。でも、家庭でのケアで事が済めば、その大変な思いもせずに済むのです。
【北海道という土地】
現在私が住む北海道は九州が2個入るほどの面積で、人口は半分以下。つまり、人と人の距離が遠く、適切な施設までの距離が遠いということです。△△が良いと聞いてもすぐに受けられるわけでもなく、各地に技術の高い助産師が…の願いも難しい話。そこで、各家庭でのセルフケアが必要となってくるのです。
例えば先日、一見して体がゆがんでいて左右バランスが悪い3か月の赤ちゃんが函館スリングの講座に来ました。本来ならばすぐにでも、トコカイロの技術のある先生にみてもらいたいくらい。でも、そうもいきません。とにかくお母さんに“まるまる育児”、特に“おひなまき”を指導したところ、1か月後には歴然と分かるほど改善されました。
このような経験からも、家庭でできる“まるまる育児”を指導していくことが、私の使命だと感じるようになりました。
“まるまる育児”はいったい一石何鳥なのでしょう?
・不要にグズることなく、賢い子が育つ。
・困ったことがあってもお母さんがケアできる。
・育児負担が少ない。
・家庭でのケアができるのでお母さんが子育てに自信が持てる。
・機嫌が良い赤ちゃんなのでコミュニケーションが取れて子育てが楽しくなる。
こんな“まるまる育児”は、北海道のような土地では必要不可欠であると思っています。
【函館スリングの活動】
函館スリングの講座には、妊婦さんや小さなお子さんを持つお母さんが“まるまる育児”の話を聞きにきます。そのうえで“おひなまき”・スリング・体操などを、個々のニーズに合わせて指導しています。
最近では妊婦さんどころか、まだ妊娠経験のない女性や、支援者(保育士・助産師・ベビーマッサージ講師など)の受講も多く、関心の高さを感じております。
そして、彼女たちが“まるまる育児”の良さを目の当たりにして、いつの間にか日々の仕事や活動に取り入れているのが現状となってきました。
また、私は幼稚園での講演会やマタニティ座談会などの、講師依頼を受けるようになりました。子どもの通う幼稚園などからの依頼で、幼稚園で保護者向けに“まるまる育児”についてお話したときは、20人もの方が参加して、熱心に聞いてくださいました。参加者から聞かれる声は、いつも決まって「もっと早く知りたかった」(~_~;)
函館周辺には赤ちゃんの発達などを重視する専門家はいないため、札幌市で勉強会が開かれる際は、できるだけ参加するようにしています。
函館から札幌までは250㎞。電車で3時間40分、高速バスだと5時間半もかかるのですが、助産師・保健師・言語聴覚士・鍼灸師・保育士など、さまざまな角度から赤ちゃんの発達を考える仲間達が、広い北海道の各地から集まってきます。
“おひなまき”の工夫、赤ちゃんの寝姿勢、抱っこの仕方、抱っこのアイテムなどについて、それぞれの知識を持ち寄り、情報交換をし、共に学び合える貴重な場となっています。同じ志を持つ仲間の存在は、私にとっても心強く、道内で里帰りや転勤で移動する母子を、次の支援者へとつなげることも、少しずつですが可能になってきています。
【共同養育・“まるまる育児”・モンテッソーリ教育】
私の自らの子育てで共同養育“どの子もうちの子”を掲げて活動しています。昭和の頃のように、いや、さらに遡って旧石器時代のように。隣の家の子もその隣の子も一緒に育てて、どの子もうちの子のように育て、どのお母さんも自分のお母さんのようなコミュニティ作りをしています。
共に子育てすることで、家事や子育てを分担し、お母さんの負担を減らします。そして何より、孤独な子育てを回避する目的があります。
そして、結果的に“子だくさん家庭”が増えます。私が大分在住時に6家族子ども7人で始まったコミュニティも、先月再会したときには6家族子ども19人になっていました。
夫が仕事で不在のワンオペでも頼る仲間がいるからこそ、楽しんで子育てができるのです。私自身も実家が遠く夫も多忙という環境下で、4人の子どもを妊娠し、10か月の悪阻を乗り越え、出産し子育てできたのも、このコミュニティあってのことでした。
そして「まるまる育児×モンテッソーリ教育=心地よい育児」と題して、講演や執筆活動などもしています。私自身も保育科時代に少し勉強したこともあり、私の子ども達はみなモンテッソーリ教育の幼稚園に通っています。
モンテッソーリ教育では、縫いさし(針と糸を使って縫う)、シール貼り、毛糸で編む、線上歩行(線の上をバランスを保ちながら歩く)など、体と手先を使う様々な活動があります。
“まるまる育児”で、手先が器用で高い身体能力を身に着けている子は、それらの活動をスムーズに取り組めるため、能力が飛躍的に伸びるのです。
どちらも「子どもをよく見る」ことが共通しているので、この2つはつながりやすく、子どもの能力を伸ばすのには欠かせない教育法だと確信しています。
【今後の目指す姿】
第一に我が子達が心地よく健康に楽しく活動できる体と心作りをすることを軸として、それが多くの母子につながることが本望です。
まだまだ個々の母子をケアできる知識も技術力も不足している私ですので、今後はさらに、知識と技術を身に着け、私のできる領域内で体や発達に関して、1人でも多くの母子に還元していきたいと思います。
また、まだまだ“まるまる育児”や、骨盤ケアが未開の地 北海道ですから、仲間達と協力しながら、心地よい体を手に入れた母子が増えるように精進いたします。
転勤族の夫を持つ身としては、函館にはいつまで住めるか分かりません。なので、私が函館にいるうちに、できるだけ“まるまる育児”の種を撒き、バトンを渡せるよう、1日1日を大切に生きていきます。