青森県の医院勤務助産師 三浦純子さんのコラム
骨盤ケア推奨のクリニックで仕事を楽しんでいます
【はじめに】
皆様、初めまして。青森県八戸市のクリニックで助産師として働いている三浦純子と申します。現在、仙台で開催されている総合ベーシックセミナーに通っています。
渡部先生から、コラムのお話をいただき、まだまだ骨盤ケアを語るには未熟な私ですが、これも何かのご縁と思い、今回のコラムで私自身の思いやクリニックでの活動についてお話いたします。
【助産師になろうと思ったきっかけ】
ずっと一人っ子だった私に小学3年生の時に弟が生まれました。学校から帰ると祖母が小走りで玄関にやって来て、「赤ちゃん生まれたって!」と満面の笑顔で私を迎えてくれました。
その瞬間、よくわからない感情が湧き、泣いてしまったのを鮮明に覚えています。それからというもの、私は弟の育児を率先して手伝い、まるで小さいお母さん(*^_^*)
そんな経験から「赤ちゃんや小さい子どもに関わる仕事がしたい」と考えるようになりました。
看護大学で助産コースにチャレンジしましたが、選抜試験であえなく不合格。「助産師にはなれなくても、仕事のバリバリできる看護師になろう!」と決心し就職。
ところが、配属されたのは青森県唯一の総合周産期センターでした。助産師が多く、数少ない看護師として働く中で、お産や母乳育児の楽しさを感じ、「私もお産のお手伝いをしたい」と憧れ、助産学校を受験。
無事、仙台の助産学校入学が決まりほっとしていた3月11日、東日本大震災が起きました。入学式は約1か月遅れ、カリキュラムは詰め詰め。カップ麺をすすり、余震に怯えながら寝るのもままならず、つらい1年を送った後、助産師としての人生をスタートさせました。
【骨盤ケアとの出会い】
トコちゃんベルトを着けている妊産婦さんを、看護師時代から目にはしていましたが、骨盤ケアの重要性も着け方もわからず、関わることはありませんでした。
病院の退職が決まりクリニックに移る前に、「骨盤ケアを勉強してみようかな」と、軽い気持ちでメンテ“力”upセミナーを受講。渡部先生のセミナーに感動はしたものの、1回受講しただけでは妊産婦さん達にうまく伝えられず、もどかしさを感じていました。
クリニックに就職すると、師長による骨盤ケアで、歩きづらそうだった産婦さんがスタスタ歩き始めたり、腰痛が楽になって笑顔に変わるのを間近に見るようになり感動!
「妊産婦さん達のために、もっと勉強しなきゃ!」との想いが沸き上がり、骨盤ケアアドバンスセミナー・新生児ケアセミナーなどを次々と受講し、トコちゃんベルトアドバイザー資格を取得しました。
妊産婦さん達に体操やベルトを使って骨盤ケアを指導すると、すぐに効果が現れる人がいる一方、症状改善できない人や、「よくわからない…」と自分の体の変化に気づけない人がいました。
「その人達の違いは何だろう? どうしたらもっと妊産婦さん1人1人に合ったケアができるのだろう?」と悩みながら働く日々でした。
「もっと詳しく勉強したい、妊産婦さんの体を診る力をつけたい」と思っていたところ、幸運にも仙台での総合ベーシックセミナー開催が決まり、受講を決心しました。
ベーシックセミナーの内容はもちろん、先生や参加メンバーと色々なことを語り合えることで、モチベーションはアップ。毎月の受講が楽しみとなっています。
【クリニックでの骨盤ケアの現状】
全ての助産師が骨盤ケアの研修を受け始め、母親学級では骨盤ケアの大切さをお話し、立ち方や座り方、操体法など、基本的なことから説明しています。
また、トコちゃんベルトアドバイザー資格を持つ3人で、骨盤ケア指導や、症状がある人への対応を個別に行っています。
妊産婦さん達は「ギュッとベルトを巻けば、体の不調が改善する」と思っている人が多いため、三原則の「あげる」「ささえる」「ととのえる」の必要性を理解してもらい、ベルトの位置と強さを適切にできるようコツコツと指導しています。
半年余り前のこと、病棟勤務中に外来のスタッフから「トコちゃんベルトをしてみたいと言っている妊婦さんがいるんだけど、外来まで降りて来れる?」と、私に連絡がありました。
この方は母親学級で骨盤ケアの重要性を聞き、興味を持ったとのこと。ところが、ベルトの巻き方を指導すると、「こんな低い位置に巻くのですか? この位置で気持ちいいって言う人いるのですか?」と、納得がいかなさそうで不機嫌な表情…。
そのため、「あげる」「ささえる」「ととのえる」は大切なので、お尻フリフリ体操をしっかり続けてみましょうと説明しました。
それから数週間後、その方が切迫早産で入院してきました。帯下が多く、児頭下降著明で、母体搬送もささやかれていました。
ところが、数日後の診察で児頭が上昇し、帯下が減少していることに驚いた院長が、彼女に「何かした?」と尋ねると、「実は…、お尻フリフリ体操を毎日していたんです」と。
体操の効果に感動した院長から、「切迫早産で入院した人には全員に体操を指導するように」との指示が出ました。また、入院中の方以外にも、院長自ら積極的に骨盤ケアを推奨しています。
全てがこれで解決するわけではありませんが、入院中の妊産婦さんが骨盤ケアに興味を持つきっかけになっていると思います。
日々の新生児ケアでは改善したい点が多々あり、そのためスタッフ会議で看護部の今年の目標に「まるまる育児の導入」を掲げることに決めました。
抱っこの仕方や寝かせ方、そのためのセルフケア操体法とタオル玉体操、おひなまきについての勉強会を、全員が受けられるよう2度にわたり開催。それから、スタッフが指導できるようになり、お母さん達に伝えられるようになってきています。
【おわりに】
骨盤ケアについて学べば学ぶほど、妊産婦さん達の体の悪さや、ケアの仕方など気になることが増えました。相手の悪いところをどう伝えるのがいいのか、続けてもらうためにはどんな伝え方をしたらいいのか、悩む毎日です。
とはいっても、私はとても恵まれた環境で仕事をしていると思います。院長は骨盤ケアを重視されているし、いつでも一緒に骨盤ケアに取り組み相談しあえる仲間がいます。スタッフも少しずつ興味を持つようになってきました。
この恵まれた環境で、たくさんの女性の妊娠・出産・育児を支える仕事を一生続けられるなら、助産師になった価値は十二分にあり!なんて幸せなんだろうと思いつつ、日々の仕事を楽しんでいます。
総合ベーシックセミナーが終わる10月には、今よりも少し成長して、妊産婦さん達のお役に立てると信じて、これからも頑張ります。