富山市の勤務助産師 古谷 千恵美 さんのコラム
全てのママ達が、幸せそうな笑顔で授乳できるよう
【助産師を目指したきっかけ】
富山県富山市のクリニックで勤務助産師をしている古谷千恵美です。
助産師をめざしたきっかけは、看護学校の母性担当の先生から「初めて赤ちゃんを産んだお母さんが、初めて赤ちゃんにおっぱいをあげている顔を見たことある? とっても素敵なんだよ」と言われたことです。
「見たことがない! 見てみたい!」との思いから、看護専門学校を卒業すると同時に助産学科に進学しました。
【大学病院に就職~退職】
卒業後に就職した大学病院では、分娩件数が少なく、婦人科との混合病棟で、産後のママ達とかかわる機会はあまりありませんでした。
それでも、念願の“初めておっぱいをあげるママ達の幸せそうな笑顔”を見ることができ、自分も幸せな気持ちになったことを思い出します。
大学病院で4年2か月勤務したのち、自身の結婚・出産を機に退職しました。その後は、育児と家事の傍ら8年ほど、保健センターで予防接種の手伝いをしたり、福祉事業の仕事をしました。
【今のクリニックに】
そうこうするうちに「助産師として、また産科で仕事がしたい」と思うようになった2005年、今働いているクリニックの新規開業の立ち上げに加わることになりました。
8年のブランクがあった私は、電子カルテの操作をはじめ不安でいっぱい。久しぶりの分娩介助もドキドキ。
先輩助産師から「顔が引きつってるよ」と言われたくらいだったのにそのまま働き続け、気がつくともう13年もたってしまいました。
開業当初は、分娩件数は月に数件でしたが、現在は月に50~60件と、富山市内の産科クリニックでは1番の分娩施設となりました。
【骨盤ケアとの出会い】
開業から数か月経ったころ、分娩後、部屋に戻る際に気を失って倒れる褥婦さんが続いたことに、スタッフは疑問を持つようになりました。
そのため、スタッフの中に(旧)NPO法人 母子整体研究会のセミナーを受けている人の呼びかけで、産後にさらしを巻いて骨盤を支えるケアがルーチン化されました。
するとその後、分娩後に倒れる人がいなくなったのです。当時の私は、骨盤を支えると何でいいのか、まったく分かっていませんでした。
スタッフに誘われて初めて母子整体研究会のセミナーを受講したのが、2008年の5月でした。その時の講義内容は、忘れてしまいましたが…(-_-;)、助産師として学ぶ方がいいセミナーであることはわかりました。
その後、2012年にメンテ“力”upセミナーを受講したのをきっかけに、トコ企画セミナーをいろいろと受講しながら、骨盤ケアの重要性を実感していきました。
【クリニックでの骨盤ケアの現状】
クリニックでは、トコちゃんベルトを販売しており、多くの妊婦さんが使用しています。妊婦さんに正しく使用してもらうためにも、自分がトコちゃんベルトアドバイザーになろうと思い、養成セミナーを受講しました。
クリニックでは安産クラスを数種類行っていますが、骨盤ケアに関しては、初めはマイナートラブルの対処、ストレッチ、トコちゃんベルトの使い方を話していました。
現在は、メンテ“力”upセミナーを受講したスタッフが中心となり、骨盤ケアの必要性、骨盤計測、操体法、赤ちゃんの姿勢なども指導しています。
クリニックでトコちゃんベルトを販売し始めたばかりの時は、使用方法が間違っている妊婦さんも少なくありませんでした。
前後逆に着けている方やお腹に巻いている方もいました。妊婦健診やクラスでの指導やDVDの使用で、現在はそのような方は少なくなりました。
しかし、きつく締めすぎている方は多く、まだまだ指導が行き届いていないなぁと思うこともたびたびあります。
院長先生も骨盤ケアに熱心で、妊娠初期から骨盤ケアに取り組んでもらおうと、健診で逆子の妊婦さんには妊娠週数にかかわらず、院長先生が自ら骨盤を整える目的で、骨盤体操(お尻フリフリ、猫のポーズ、4種混合体操など)を促しているくらいです。
体操をわかりやすく伝えるために、体操の自作DVDを待合室で「これでもか!」というくらい、エンドレスで流しています。
逆子が続く妊婦さんには、間違った体操をしていないか毎回確認をし、その結果、逆子のために帝王切開となった初産婦がゼロだった年もありました。
骨盤ケアが効果を発揮しているのだと、嬉しく思いました。
【最近のお産の様子】
最近のお産の様子ですが、丸い形のお腹が少なく、回旋異常が多いことが気になっています。
分娩時の骨盤輪支持にはゴムチューブを使用し、股関節回し・下肢上げ下げ・お尻フリフリ体操で対処することが多いのですが、長時間かかってしまう分娩もあり、妊娠初期からのケアが必要なんだと感じています。
骨盤ケアを勧めている中でも、腰痛・恥骨・臀部などの痛みを訴える妊婦さんはいます。
「セルフケア指導をするだけではなく、自分で触診して痛みの原因がわかったり、ケアができたらいいなぁ」との思いから、2015年 トコ・カイロプラクティック学院の総合ベーシックセミナーを受講しました。
ケア師2級の認定証をいただいたものの、まだまだ技術は未熟で、現在、資格更新に向けて復習中です。
【母乳育児のためにも、骨盤と上体のケアを】
産後のママ達に主に上体ほぐしを行いますが、ゴムチューブでゆらゆらしているうちに眠ってしまうママもいて、心地良いのだなと感じられます。
ほぐした後、「軽くなった、気持ち良かった」と言われると、「これからも続けていかなければ」と思います。
産後「授乳が辛いです…」と言うママ達も少なくありません。その理由は様々で、「赤ちゃんを上手く抱けない」「おっぱいがなかなか出ない」「おっぱいが詰まって痛い」などです。
分泌量を増やすにはおっぱいのマッサージだけではなく、授乳前の上体のセルフ体操も有効であることをお話しすると、「へぇ、そうなんですね!」と言われることもしばしば。
骨盤ケアが産後のおっぱいトラブルの防止につながることを、もっともっと伝えていきたいです。
【100歳まで元気に生きたい!】
これからも、助産師を目指した初心を思い出しながらケアを充実させ、全てのママ達がおっぱいトラブルに悩むことなく、幸せそうな笑顔で授乳できるよう励みます。
何歳まで仕事ができるかわかりませんが、私は「100歳まで元気に生きたい!」と思っています。私生活では、フルマラソンにチャレンジしたり、登山を楽しんだりしています。
そんな自分のためにも、そして妊娠・出産・育児をしていく女性のためにも、ママ達が笑顔でいられるよう寄り添い、学び続けていきます。