「子宮は赤ちゃんのお部屋。骨盤はお家」

“しっかりした骨盤作りは、薬と手術に依存した産科医療からの脱却の道”
 
3/11の大地震は未曾有の災害を引き起こし、思いもよらないところにまで影響が及んできました。この数日、助産師から耳にするのは、陣痛促進剤の注射薬「アトニン-O」や、産後の子宮収縮促進剤の内服薬「メテナリン」がないとの声です。これは、福島県にあるこれらの薬品製造工場が被害に遭ったためだそうです。

これまでは、予定日より少し遅れたと言っては入院アト点(入院して、アトニンの点滴注射)、分娩進行が悪いからと言ってはアト点、産後は全員にメテナリン。こんな分娩方法が日本では“普通”だったのではないでしょうか?

今、全国の分娩取り扱い施設では、必要最低限の場合にしか使わないようにして、しのいでいるそうですが、どの施設でも在庫は底をつき始めているようです。

薬を乱用しての産科医療には、私はもちろん反対です。しかし今、アトニンがなければ帝王切開が激増、メテナリンがなければ産後の出血がダラダラと続き、子宮内膜炎を起こす人や貧血の人が激増することは間違いないでしょう。

今の日本の産科医療はまさに「薬と手術に依存した医療」だと思います。依存しないようにするには、前号で書いたように“産道の整備”が必要で、かつ、子宮の中で、赤ちゃんを元気に大きく育てなければなりません。

テレビで震災の惨状が毎日ずーっと放映されている頃、ネット検索して私の施術を受けに来られた人がありました。妊娠36週で胎盤早期剥離し、死産後半年、次の妊娠に向けて体を整えたいとのことでした。一見して今どき稀なしっかりとした体格。「胎盤が育たないような体ではないのに?」と、私の頭の中は「???」だらけに。

しかし、骨盤を触って診ると「こんなことありか?!」と我が指を疑うほどのひどいゆがみ。聞くと妊娠する少し前に2度も追突事故に遭ったとのこと。追突の衝撃で骨盤や首の骨が大きくずれてしまったとしか考えられません。「子宮は赤ちゃんのお部屋。骨盤はお家。お家がこれだけ傾いていたら、赤ちゃんのお部屋も、居心地のいいお部屋であるはずがないよねぇ」と私は語りかけると、その人の目から涙があふれ出しました。

地震や津波で傾いた家の中の部屋で、人間は快適には暮らせません。胎児も同じです。胎児を快適なお部屋(子宮)の中で育てるには、快適なお家(骨盤)作りが必要。それが同時に産道整備にもなり、薬と手術に依存した医療からの脱却の道にもつながると確信しています。