秋田県の並木クリニック勤務助産師 お2人のコラム
帝王切開を行わない当院での骨盤ケア

 
【骨盤ケアとの出会い】
 みなさん、こんにちは。秋田市の並木クリニックに勤務している、皆川真由美と鎌田いづみです。当クリニックは医師1人、 15床で帝王切開はしていません。
 骨盤ケアとの出合いは約10年前、私達より妊産婦さん達の方がトコちゃんベルトを知っていて、「一体それはどんなもの?」と思ったのが最初でした。
 それから、雑誌のセミナー案内で“骨盤ケアで妊婦の体が変わる”“マイナートラブルが減る”と知り、「帝王切開を行わない当院には必要なケアでは?」、何より「どんなことをするのだろう?」と興味津々!渡部先生に遠い秋田まで足を運んでいただいたのが始まりでした。

 セミナーを受けてみて、みなさんが話されるよう“目からウロコ”の話ばかり。すごい!! 「今までそこまで踏み込んで考えていなかった…、そういうことが結びついて起こるのか…」と「一刻も早くクリニックに持ち帰り実践したい!」と思いました。
 幸い院長の理解もあり、学んだ内容をまずは苦痛のある妊婦・産後入院中の褥婦の方々に少しずつケアをしていきました。
ところが、腰痛などの苦痛がある方々の多いこと…、今までは「妊娠中だからある程度はしかたのない症状」と思いこんでいたことが恥ずかしくなりました。

 そして、もっと驚いたのは生まれたベビーのゆがみの多いこと!「 これではいけない」と思い「当院で分娩される全ての方々に妊娠中からの骨盤ケアを知ってもらいたい」「帝王切開を行わない当院だからこそ、大きくなる子宮に対応していくことができ、産み育てていく力を充分に発揮できる体を作ってもらいたい」との思いで、平成23年から骨盤ケアを始めました。

【外来での取り組み】
 外来では、2時間の骨盤ケアクラスを開き、骨盤ケアとは何かをお伝えしています。

対象:妊娠18週以降の当院出産予定の妊婦さん全員
   里帰り出産予定の妊婦さん(希望者のみ)

目標:①快適に妊娠生活を送れるためのセルフケアができる
   ②胎内環境を整えることができる

 この2つを目標に、週2回からスタートしました。各7~8名ずつのクラスでしたが、1人で担当するには難しく、現在は週3回、各4名ずつで行っています。
 そのクラスを受けた後は、妊婦健診の度に歩き方や体つき、外見などから客観的に感じる情報を本人に伝えたり、本人からのマイナートラブルと照らし合わせながら、ケアの確認をしています。
 また希望者のみですが、アフターケアクラスといって個々の苦痛や質問に対応する1時間位の個別のクラスも、週2回設けています。

 このような取り組みを行い、すべての妊婦さんに骨盤ケアを知ってもらい実践してもらっています。骨盤ケアを取り入れてから自分の体だけではなく、ベビーのことを想いながらケアする妊婦さんがいたり、逆子での転院が以前に比べて少なくなってきたと感じています。

 先日は妊娠26週2日の経産婦さんが「夜になると陰部が押されてきて苦しくなる。何かが挟まっている気がする」と話されました。
「これはまずい!! でも、当院には切迫早産の方のための入院ベッドはない。どうしたものか…」と頭の中が真っ白になりましたが、幸いにも医師の診察によると「頸管長異常なし・内子宮口閉鎖・通院し経過観察」と。
 直ぐに骨盤ケアの3原則を本人と確認。また、アフターケアクラスも受講してもらって、さらしで腹部も支え上げ、セルフケアを続けてもらいました。その後、その圧迫感はなくなりました。
 しかし第1子、2子とも満期で出産したものの、34週から張りやすくなり、子宮頚管長も少しずつ短くなっていった経験があるとのことで、その週数が来るのを不安な気持ちで迎えました。でも、何事もなく経過し、無事、39週で自然分娩されました。
改めて「骨盤ケアはすごい!」と、皆で喜びを分かち合いました。

【分娩時の取り組み】
 分娩入院後も第1期から骨盤ケアを積極的に取り入れるようにしています。そして、ほぼ全例さらしを巻いて、進行に合わせて四つん這い・ハイハイ・膝回しなどを行うようにしています。
 ケアを行うと陣痛が有効的となり、産婦さんも私達助産師も安心して分娩に臨めることが多いです。ところが、陣痛が強くなるため、産婦さんによっては自ら動いて分娩を進めるのではなく、消極的になってしまう方もいます。
 個々の産婦さんの体つき・表情・進行状態などからトータルに考えて、「どこまでケアを取り入れるべきか?」と、判断に迷うこともありますが、ケアをすることによる手応えは感じています。

【産後入院中の取り組み】
 “人生最大に骨盤が開いている”といわれる出産直後からの骨盤ケアは、さらに注意深く行います。
産後の入院中は、骨盤ケアがきちんとできているかの確認をしっかりと行い、必要時、部屋回りをして継続の必要性を伝えています。続けてみて、強い下肢浮腫や強い乳房緊満感を訴える褥婦さんは少なくなったと感じます。

【ベビーへの取り組み】
 今やっと、紙おむつのCМでも“赤ちゃんの姿勢はお腹の中と同じCカーブ”と言い始めましたね。クラス内もずっと言い続けていましたが、このCМが放送されてからママたちの認識も高くなった気がします。CМってすご~い (^_^)v
 ママたちへは“Cの字”を保つような抱っこ・寝かせ方・授乳など、赤ちゃんのお世話の仕方を、すべて実践してもらっています。

【現在、そしてこれから】
 「骨盤ケアを始めた7年前よりも、現在出産される方たちの体は随分変わってきている」と最近よく思います。3原則を続けるだけでは対応しきれない…、この妊婦さんにどうアプローチをすれば楽になるんだろう…、私では無理だ…。凹む日々も多々あります。
 また、ケアが一方通行になっているのではないかと、自分の伝える力の拙さを感じることも多々あります。
「もっと自信を持ってケアできるようになりたい!」そう思って昨年やっと、トコちゃんベルトアドバイザー養成セミナーと、トコヨガインストラクター養成講座を受講しました。
 受講してみると、以前と比べて内容は大きく進化していて、ビックリ(@o@) 「これは…、定期的に受講していかなければついていけない!」と思いました。
頭も体も歳を取っていきますが、「総合べーシックセミナーも受けて、もっと知識を深めたい!」と考えています。

【これからの課題】
 生まれも育ちも秋田で、狭い中で生きていますが、セミナーに参加すると他県の助産師や育児に関わる様々な職種の方達との出会いがあります。
トコヨガインストラクター養成講座は、8ヶ月という長い期間でしたので、仙台に通うのもくじけそうになった時もありました。でも、知り合いになった受講生の方達に会える楽しみもあり、色々な場所で頑張っている受講生から刺激を受けながら、「私も頑張ろう!」と何度も思いました。
 骨盤クラスを始めて7年。課題もたくさんあります。まずは退院した後の産後のママとベビーのフォローを充実させていきたいです。
現在は妊娠中から産後1か月の限られた期間での関わりになっていますが、これからは女性のライフサイクルの中で、いつでもケアが行えるよう門戸を開いていきたいと思っています。
 そのために、色々なセミナーを受け、仕事に活かしていきたいと考えています。