北海道美唄市の開業助産師 菅 里奈 先生のコラム
潰瘍性大腸炎の私は、今や逞しい2人の息子の母

 
【はじめに】
 はじめまして! 北海道の豪雪地帯 美唄市に住んでいる助産師 菅 里奈です。美唄市は札幌と旭川の間の空知にあり、人口は2万人。20キロほど車を走らせないと産婦人科もなく、母子を取り巻く環境としては淋しい限りです。
 私は美唄市で生まれ育ち、いったん離れた後、8年前に美唄市に戻り、小学2年生と幼稚園年少の、息子2人を育てている母でもあります。子どもと一緒にできる範囲で、骨盤ケアとまるまる育児を広めたいと考え、2012年に空知で唯一の開業助産師として「出張専門 まーこっこ助産院」を開業しました。
子どもと離れがたく今年の3月まで次男を連れてスリングと籠ベッド持参で、時にはスリングの中で授乳しながら、講座や保健指導を行っていました。

 今年の1月に初めて美唄市で「トコちゃんの骨盤ケア教室」を開催し、これまで38名の方が参加してくださいました。まだまだ少なくポツポツといった感じです。それでも、口コミを聞いて教室に来られる方が少しずつ増え、妊婦さんや産後の方だけでなく、母・祖母と一緒に参加してくださる方もあり、骨盤ケアもまるまる育児も、少しずつ少しずつ広まってきていることを実感しています。

【助産師になり、骨盤ケアと出会い】
 高校卒業後、自宅から徒歩1分の病院付属看護学校に進学。児童心理学に興味を持っていた私は、「愛着形成を促し虐待を予防するには生まれる前からのかかわりが大事なのでは?」と考え、「子育てのスタートラインに一番近くにいる助産師になろう!」と、道立の助産学科に進学しました。
 卒業後は看護学生時代にお世話になった病院の産婦人科に就職。助産師として配属された翌日、「5ヶ月後に産婦人科閉鎖」と知らされ、閉鎖と同時に広島県にある系列病院に移動となりました。
 助産師となって3年目、体調不良が続き内科を受診したところ、特定疾患である潰瘍性大腸炎と診断(@@) 医師から「妊娠や出産はあきらめてもらうかもしれない」と言われるほど病状が重く、入院や治療と仕事の両立が困難となり、退職して北海道に戻りました。

 体調も安定していませんでしたが、以前働いていた病院の師長さんからの誘いで、個人の産婦人科病院でパートとして働くことになりました。そこで、私と同じ病気を持ち骨盤ケアを学んでいる先輩助産師から、「将来妊娠したいなら、絶対に妊娠する前に骨盤ケアを学んだ方がいいよ」と、(旧)母子整体研究会のセミナーを勧められたのが、今から12年前でした。

 私の体は恐ろしくゆがんでおり、慢性の肩こり・腰痛そして足の長さの違いも自覚があり腰椎側彎症とストレートネック。私が母になれる日が来るなんて、想像もできないくらいでした。
はじめて受講した時は、病気の悪化でセミナー受講の2週間ほど前まで入院していて、病気と向き合う日々を送っていました。
 受講時、渡部信子先生に「腹筋が弱いな~。ほふく前進もせなあかんで~」と言われたのを覚えています。受講後は体調が良くなり「骨盤がずれ開いていたことで内臓の血流が悪く、病気を悪化させていたのでは?」 と考えるようになりました。

【出産とまるまる育児】
 その後、発病前から交際していた男性と結婚し広島県で生活し、病状は落ち着き妊娠しました。妊娠すると、自分の体が日々変わっていくことが面白く、安産に向けて毎日、骨盤ケアと5kmの散歩、マタニティヨガを続けました。
妊娠中はトラブルもなく快適で、分娩は破水から始まり、入院時は児頭も高く子宮口閉鎖だったのに、8時間で安産できました。
 出産直後から達成感と幸福感いっぱいで「あーまた産みたい」と思えるくらい幸せな出産体験でした。「私の体からこんな元気な子が生まれたのは、毎日続けた骨盤ケアのおかげ」と感謝の気持ちで満たされました。
産後すぐに分娩台の上で骨盤を締めてもらいましたが、締め方が弱く1歩目で膣に子宮が落ちてきたのがわかり、産後は必死で骨盤ケアの3原則を実施し、体調よく母乳育児にも苦労しませんでした。
 入院中から、おひなまきとスリングを使ったまるまる育児を始め、子どもと離れたくなくて、ずっとスリングで抱っこして暮らしました。このようにいつも見つめ、触れているためか、泣いてもその理由がすぐに分かりました。
 発達でも驚くことばかり!7ヶ月までおひなまきにしていた息子は、8ヶ月で鉛筆を正しく持って殴り書きを始め、いつも姿勢がよく、発語も明瞭で10ヶ月で鉄棒に1分以上ぶら下がれるほどの握力でした。
「勉強したから何となく実践してみた」くらいのケアだったのに、息子と周りの子ども達との体の使い方や発達の違いにビックリ! 産後1年半の私の頭の中は「妊娠中の骨盤ケアとまるまる育児が発達に与える影響…」これらがイッキに繋がり、頭がパニックになったことも(-。-)y゜
 息子の成長を日々目の当たりにして、「これはすごいことだ! これをたくさんのお母さん達に伝えなければ!」と、心底思うようになりました。

【開業!】
 長男が6ヶ月の時に北海道に戻ることとなり、息子は1歳8ヶ月で箸を使って食事、ハサミは2歳1ヶ月で使え、驚いた周囲の人達から「どうしてなの?」と聞かれることが増えてきました。私が体験したことや感動したことを話したり、SNSで発信したりするにつれ、日々の相談メールも処理しきれないほど膨大となり、限界を感じるようになりました。

 病院で働いているとなかなかケアに時間がとれず、退院した子どもたちがどのような成長をしているかわからないままでしたが、母親として日々たくさんの子ども達を実際に目にすると、あまりにもお母さんたちの立ち姿や、子どもの抱き方、子どもの体のゆがみなどなど、ひどい状態の方が多く、悲しくなることもしばしば…。と同時に、「骨盤ケアもまるまる育児も、皆が知りたがっていることなんだ!」と開眼。 
 「母子の体を看て適切な保健指導ができるよう、微力ながら役に立ちたい!」と思うようになり、2012年、子連れでできる範囲の出張専門で開業しました。
長男が3歳になるまで母乳育児を続け、卒乳後すぐに妊娠し、開業の翌年に次男を出産。妊娠39週5日、3225g、ゴムチューブで骨盤輪支持をしたまま分娩し、3時間半の安産でした。次男も長男と同様に育て、1歳2ヶ月で明瞭な発音で2語文を話し、1歳9ヶ月で箸で食事を始めるなど、今でもスリング大好きな器用で逞しい子に育っています。
 おっぱいがうまく飲めなかったり泣き止まない赤ちゃんや、向きぐせで困っているお母さんがたくさんいます。渡部先生の本を手に取り、笑顔になれるお母さんがたくさん増えてほしいです。私にできることはわずかで歯がゆいのですが、「たとえ少しだけでも、母子の力になれたら…」と思っています。
 また、言葉・運動の発達の遅れは切実な問題で、グレーゾーンの子もいっぱい。何が普通の発達なのか…、時々わからなくなるくらいです。

【子どもを自分と同じ病気にしたくない一心で】
 私は何よりも「子どもを自分と同じ病気にしたくない。丈夫で健康な子どもに育てたい」との気持ちを強く抱いていました。
潰瘍性大腸炎は原因不明とされていますが、腸内細菌の状態が悪いことが原因の一つと言われています。
 子宮の中は無菌ですが、赤ちゃんは産道を通る途中、産道にいる母の腸内細菌を口と鼻から獲得します。また、母乳によって善玉菌が増え、3歳までに腸内細菌叢が定着すると言われています。

 私自身は、40時間という分娩遷延後、吸引分娩により出生。
向き癖と反り返りが強く、母乳を飲めずミルク100%で育ったためか、善玉菌が腸内でうまく育たなかったようです。生後5ヶ月で感染症にかかり、生死をさまよい「知的障害が残る」と両親が説明を受けたこともありました。
幼少期は病気がちで、扁桃腺を2度も切除し、体調を崩す度に抗生物質を内服し、腸内の善玉菌を減らし、結果として瘍性大腸炎を発症したのでは? それに…、腸の器である骨盤や腰椎も関連するのでは? 体を整えることによって、腸の働きが良くなり免疫機能がUPしたのでは? などなど推測しています。
 骨盤ケアで温かく心地よい子宮の中で赤ちゃんを育み、自然分娩で母の腸内細菌を獲得し、まるまる育児をして母乳を上手く飲めば、腸内の善玉菌も増えて、免疫力の高い子が育つと思うのです。

 また、皮膚は脳と一緒の外胚葉からできているため、子宮内にいるような心地よい抱っこやタッチの感覚は、脳に直接作用してオキシトシンなどのホルモン分泌を促し、脳の発達を促すとともに子どもの自己肯定感を高めるのではないでしょうか?
骨盤ケアで快適な胎内環境を作り、まるまる育児で積極的に子どもに触れることは、母子相互の愛を伝える最高のコミュニケーション。母子が相互に尊重しあい、唯一無二の存在だと自覚し、自分自身を大切にできたら、母子関係をはじめ他者との関係も良好となるのではないでしょうか?
 やんちゃな息子達に日々振り回されている私ですが、病状の波はありながらも産後は入院することもなく寛解状態を保っています。息子たちは怪我や病気もすることなく1日も休まずに登校し、自分自身を「大好き!」と自信を持って言ってくれます。

【これからの夢】
 嬉しいことに今年は、第1子のときに6ヶ月も切迫で入院していた方が、第2子妊娠前から骨盤ケアを始め、張り止めを内服することなく出産されました。
また、妊娠初期からケアを始められた双胎妊娠のお2人は、切迫での内服や管理入院もなく出産されました! 毎日自分で骨盤ケアを続けられた方は、その効果に驚かれています(^0^)

 スリングを使った抱っことまるまる育児で、赤ちゃんの気持ちがわかるようになったと言われるお母さんも増え、月1回開催している子育てサークルはいつも定員以上の参加希望があります。でも、私の母を含め近年祖父母となった人達の間には、まるまる育児に対する抵抗感が強く、協力を得られないこともしばしばです。
 ところが、最近は赤ちゃん用紙オムツのCMでも、赤ちゃんの背骨のCカーブに触れ、丸く寝かせていますね! テレビCMを見たお母さん達は嬉々としています(^。^)
まるまる育児に更なる追い風が吹くことを期待しましょう!
 
 「もっと早く知りたかった~(-"-; 」ではなく、「知っててよかった!」と、笑顔で語れるお母さん達がもっともっと増えるよう、骨盤ケアとまるまる育児がスタンダードになるように、少しずつですがこれからも日々努力していきたいと思います。
 胎児期・新生児期からの子どもに優しい育児は日本を救い、ひいては世界平和にも繋がるのでは?! などと大それたことも考えつつ(*^^*)!!