こんにちは。和歌山県田辺市在住の嵐美樹と申します。以前、当コラムNo.145で書かせて頂いてから、早いもので2年になります。トコ助産院での研修を兼ねた2年間の勤務を終え、2017年4月、自宅にて「嵐助産院」を開院しました。トコ助産院で身につけた知識と技術を、田辺市に戻って、どのように活かしながら働いているかをお話しいたします。
現在、助産院での仕事を週2日、あとの4日は2ヶ所でパート勤務をしています。1ヶ所は分娩件数が月20~25件の産婦人科クリニックで、もう1ヶ所は、病床数258床の複合病院の女性診療科外来です。
【産婦人科クリニック】
以前勤めていた総合病院で、一緒に働いていた先輩助産師Yさんやスタッフの皆さんが、とても熱心に妊産婦およびベビーケアに取り組まれているクリニックで、週3日、勤務しています。このクリニックでは、地域の開業助産師・栄養士・鍼灸師、各種インストラクターと共同で、いろいろなサービスを提供しています。産前は「母親学級」「マタニティフィットネス」、入院中は「アロママッサージ」「フェイスケア」、産後は「ひよこ(2週間)健診」「離乳食教室」「ベビーマッサージ」「鍼灸マッサージ」などです。
Yさんは、骨盤ケアとまるまる育児の導入にも力を入れていて、「直後らくらくトコちゃん」「マイピーロネオ」をお産セットに組み込んで産婦さん全員にお渡ししています。少しずつ種まきをして、ケアに取り組んで来られたYさんが、「一緒に働きましょう!」と誘って下さったおかげで、学びを活かせる場所を得ることができました。
私の勤務する週3日のうち分けです。
1) 1日は「骨盤ケア外来」を担当
2016年12月から始めた月4回の「骨盤ケア外来」には、リピーター
も含め、延べ133名
対象は、クリニックで出産予定の妊婦さんと、出産された母子
料金設定は、初回のみ1,000円、2回目以降は2,000円
10:00~17:00、予約制で1人1時間、1日6人(組)
1時間かけてゆっくりお話しを伺いながら、トコちゃんベルトの着用指導や、個々の症状に合わせた施術・体操・母子ケア・ベビーケアなどを行っています。
2) 2日は入院中の方々へのケアを担当
産褥入院されている方の個別ケアや、まるまる育児指導
2週間健診や1か月健診時に、必要な方へのケア
分娩介助
骨盤ケアを受けられた妊産婦さんのカルテは、他2名の助産師と共有し、出産や入院中のケアに活かしています。そもそも、3世代にわたって出産されている方もいらっしゃるほどの地域密着型のクリニックですから、外来・入院・産後と、継続ケアが充実しています。
そのような中で、骨盤ケアを実践して、妊娠期⇒分娩期⇒産褥期⇒育児期と、理想的なかかわりを持ちながら働けるのですから、とても楽しくやりがいがあります。
まだ、担当分娩件数は少ないのですが、今後、個々のケースで行った骨盤ケアの評価ができるようにしていきたいと考えています。
今後の課題は次の2つです。
1) 妊娠中の骨盤ケアでかなり問題のある方には、複数のケアを目指して
いるにもかかわらず、1回しか来られない方も。
不十分に終わってしまいがちなセルフケア指導をどうするか?
2) まるまる育児の普及。退院指導の時に、まるまる育児のお話をし、
おひなまきの実習もしているが、おひなまきの購入は希望者のみ。
おひなまきを購入しないお母さんにも、「まる抱っこ」と「まるねんね」を続けるようお話しするのですが、2週間健診に来られた時には、すでに縦抱っこをしているお母さんもいます。
入院中から反りが強く、おひなまきが必須で、お母さんは納得しておひなまきを買って帰られても、「そんなことして…、苦しそうや」「伸び伸びさせてやった方が筋力がつく」と、ご家族に反対されて挫折するケースも多いです。
病室で個別に、家族も一緒にお話ししても、退院後、いざ巻く時に泣かれると、早々にあきらめてしまいます。夏場は特に「あせもができる」などの理由も、続けられない原因となります。
上の子で苦労した方は、根気よく練習されるのですが、初産婦さんは、まるまる育児の大切さが、あまりピンとこないことも多いようで、あとから、困りごとに悩まされる結果となります。
今後、動機づけや、家族の協力という点で、良い方法を探していきたいと考えています。
【女性診療科外来】
婦人科診療と妊婦健診のみを行っている病院で、週に1日、診察介助をしています。勤務していた助産師の退職により、しばらく助産師がいなかったので、声をかけて頂きました。
この外来の担当医は、当地域で分娩を取り扱っている助産所の嘱託医でもあり、「必要な人は、助産院で骨盤ケア受けてもらうように案内していいよ」と声かけてくださいます。妊婦健診の数は少ないのですが、こちらでも、少しずつ骨盤ケアを定着させていけるのではないかと思っています。
【助産院】
金・土の2日間と、平日の19:00~21:00、自宅で骨盤ケア・母子ケアを行っています。4月~7月半ばで、来院者は、25名、1営業日あたり1名未満という、本当に細々とした経営です。
自宅は、市内から10km離れた山奥。こんな遠くまでわざわざ来て下さることを考えると、これでもなかなか恵まれたスタートだと思っています。予想より母子ケアの依頼が多く、困っている方が多いことがわかります。
お客様は全て妊婦さんや育児中のお母さんで、主にクリニックからの継続母子ケアの方や、他助産院さんからのご紹介です。少しだけですが、ホームページから探して下さった方もあり、100km離れた地区から、まるまる育児の個人指導を受けに来て下さった方もありました。
ホームページ ⇒
http://arashi-josanin.com/menu/
赤ちゃんケアは、発育・発達のみでなく、歯・口腔・耳鼻咽喉科領域、他にも、本当にいろいろな知識が必要です。地域で実施されている育児相談など含め、赤ちゃんに接するたびに、自分の知識・技術不足を思い知らされるとともに、妊娠中からの骨盤ケアの大切さを痛感しています。
不安ばかりの中で、思い切って退職し、長期研修を受け、ようやく始めた助産院。最終的には分娩を取り扱いたいという望みはありますが、まだまだ道遥か。齢を重ねる自分の健康にも留意しながら、今後も勉強を怠らず、日々、丁寧にケアを続けていきたいと思っています。