神奈川県の開業助産師 豊永美保先生のコラム
らくらく母乳育児を目指して
【はじめに】
皆さんはじめまして。川崎市麻生区で「とよなが母乳育児相談室」を開業している豊永美保と申します。
私は東京都港区で生まれ、6歳までそこで育ちました。幼稚園に入園する頃から喘息の発作を起こすようになり、「空気の良い所で少しでもよくなるように」との両親の想いで東京都清瀬市に引っ越しました。
喘息で小児科を受診すると、いつも看護婦さんが優しく対応して下さり、それだけでホッとしたのを今でも覚えています。「私もあんな看護婦さんになりたい!」そんな想いから看護婦を目指したのは、小学生のころでした。その夢は高校生になってもかわらず、家から近い国立療養所東京病院附属看護学校に入学し、卒業するまで清瀬で過ごしました。
【助産婦になりたい】
助産婦になりたいと思ったのは、看護学生の頃、偶然、アフリカで働く助産婦の実話ドラマを観たのがきっかけでした。それまでは小児科の看護婦になることが目標で、母性にはあまり興味がなかったのですが、お産について改めて興味が湧き、「勉強してみたい!」と思うようになりました。
そうなるともう気持ちは助産婦一直線! 一度就職したら改めて受験は難しいと思い、東京大学医学部付属助産婦学校に進み、初めての寮生活も体験しました。私は東大病院での実習組だったのですが、国家公務員等共済組合連合会稲田登戸病院での実習組の同寮生が、あまりにも楽しそうに帰って来るのがとても不思議でした。
それで、見学(遊び?)に連れて行ってもらい、アットホームな雰囲気に惹かれ、就職を即決!「実習に行っていないのに就職するのはあなたが初めてよ!」と、教官には驚かれましたが、ここで夫と出会ったので、縁があったのでしょうか?
【母乳について】
助産婦になりたいと思った理由にはもう一つ、「母乳について学びたい」との想いがありました。私は3人兄妹の真ん中なのですが、母は扁平乳頭でなかなか授乳が上手くいかず、兄はミルク中心、私は半々の混合、妹は母乳のみ、で育ちました。
母はことあるごとに「母乳で育てた妹は違う。丈夫で体もしっかりしている」と話していました。「そんなに母乳が良いのか?」と、半信半疑でしたが、看護学校で母乳の良さを学び、「私の喘息も関係あるのかも?」と脳裏をかすめました。
「それなら母のように上手く授乳できない人のサポートをするのも助産師なんじゃないか? 母乳で育てた方が良いならその手伝いをしてみたい」と考えたのです。
助産婦学校では、病院がSMCを取り入れていたのでSMCについて学びました。稲田登戸病院では婦長が桶谷式の認定者で母乳外来もあったため、マッサージの方法など、細かく指導してもらいました。これらの学びが開業へと繋がっています。
【結婚・出産】
就職して数年後の1995年、同じ病院に勤める放射線技師の夫と結婚し、翌年長男を帝王切開で出産。逆子で臍帯卷絡頸部2回「(経膣は)無理だね~」と言われ、涙を飲んで受け入れました。そして1998年、再び妊娠するもまたもや逆子…、なおらない…。
「次は経膣トライしよう」と話していたのに…「なんで? どうして?」と、納得がいかない…。それでも、どうしても産んでみたい。助産師として自分も経験してみたい。私のワガママでしたし、後から考えるととても無謀なことでしたが、医長とも何度も相談し、そのままトライし、幸い無事出産できました。
そしてさらに2001年、三男を出産。前々回帝切であるにもかかわらず、はじめてごく普通の頭位でのお産でした。あんなに逆子がなおらず、「私の体には逆子でしかいられないのか?」とまで思っていたのに、一度も逆子になることなく出産に至ったのです?! 「何でだろう?」といろいろ考えていて、思い当たることが一つ…。2人目の出産の後からカイロプラクティックの施術に通い始めていたこと…。
「そうか! 体をキチンと整えたから、赤ちゃんもキチンといられたのかも?」。私の中では腑に落ちるものがありました。体のケアに興味を持ったのはこの時からでした。それでもこの頃は育児と仕事に追われ、結局何も学ばないまま日々を過ごしていました。
【新生児訪問指導員】
長男が小学生になる頃、体調を崩すことが増え、病院を退職しました。母乳外来や自分の子育ての中で、さらに継続しておっぱいケアをしてみたい気持ちもあったので、辞めるならいずれは開業を、とも考えましたが、とにかく休みたいというのが、その頃の正直な気持ちでした。
体を休めつつ、子育てを楽しんでいるうち数年が経ち、三男も幼稚園に入園するとそろそろ仕事がしたくなり、縁があって保健センターの新生児訪問指導員として働くことになりました。それでも、その頃はまだ開業は「もう少し先かな? 本当にできるのかな?」と、思っていました。
【開業】
訪問をしていると、授乳で悩んでいるお母さんがとても多いことに驚きました。しかしその頃は麻生区には開業助産師はおらず、遠くの相談室を紹介していました。そして、開業したい気持ちはありながらも一歩踏み出せないまま訪問指導員として数年が経った頃、突然転機がやってきました。
世間話のような話の中で、「いずれは開業したい」と保健師さんに話したところ、「ぜひやってよ~」から、いつの間にか「開業するんだって?」に…。「これはチャンスなのかも知れない」。背中を押されるように、あれよあれよと開業に至りました。
【乳房マッサージの限界?】
退職して数年、久しぶりの母乳相談に始めはドキドキしながらも、楽しい日々がしばらく続きました。でも、何かが違う。病院で母乳外来をやっていた時には感じなかった違和感を感じました。おっぱいが硬い人が多い。動かして少し柔らかくなってもすぐ元に戻ってしまう。トラブルも多いし治りも悪い。
子どもの飲み方が下手。口が開かない。舌の使い方も下手。「授乳ってこんなに大変だったかな? 何でこんなによくならないんだろう?」
「乳房マッサージをしているだけではダメなんじゃないか? 何かしないと!」と感じました。
そんな時あるお母さんの言葉を思い出しました。「マッサージしてもらうと肩こりが楽になるんですよ~、私そのために来てるくらいかも?」と…。そう言われた時は「体は繋がっているんだから、確かにそれはあるかも知れないけど…それって目的?!」などと納得いかない思いでいたのですが、ふと「その逆もありでは? 体を整えたらおっぱいにも良いのでは?」と、随分時間がかかりましたが、やっと気付きました。
【骨盤ケアを学びたい】
「もっと全身を診ないといけない。体のケアをできるようになりたい。でもどうやって…?」。その時、思い出しました。「整体やカイロプラクティックを学べないだろうか?」そんな思いでいろいろ調べていて、目に入ったのがメンテ“力”upセミナーでした。そして、その先に整体やカイロも学べる道があることを知り、「私の進みたかった道がここにある」と感じました。
それでも、その頃の私は「ベルトとか使うのはどうなんだろう…? 自分の筋肉を甘やかしてはダメなんじゃないの? まぁ、いいや。とりあえずセミナーを受けないと、その先の整体とかに進めないから、一応受けとくか」なんて、生意気なことを考えていました。
ところが、セミナーを受けてみたら、目からウロコのことばかり、私の考え方は180度変わってしまいました。もっと勉強したい! そんな思いで次々とセミナーを受けました。トコちゃんベルトアドバイザー
⇒まるまる育児アドバイザー⇒ベーシックセミナー、順調に歩を進めていた所で突然のブレーキ。ベーシック不合格…、しかも2回も_| ̄|○ どちらも筆記の点数が足りませんでした。
それまで試験と名のつくものは落とした記憶がなく、筆記で不合格なんて考えもしていなかったので、「やっぱり私には無理なんだろうか? もう辞めようか?」と、かなりのダメージでした。
それでも、習ったことを少しずつ、母乳育児相談室に来るお母さん達に指導したり、ケアをしてみたりすると、「すごく楽になった」と喜んでもらえ、「やっぱり、もう少し頑張ってみよう!」と、3回目の正直、無事ベーシック合格\(^o^)/
【学ぶ楽しさを改めて感じる】
セミナーに次々参加して、同じように学ぶ仲間をたくさん知ったことは大きな収穫です。トコちゃんのセミナーに通う方達は、皆さんとても勉強熱心なので、ティータイムのおしゃべりもとても刺激的でした。
カイロプラクティックセミナーを受けてみたいと思いつつ、「あれだけベーシックでつまづいた私にはまだ早いのでは? もう少し今までの学びを定着させてからの方が良いのでは?」 と悩んでいた時に、「一緒に受けよう!」と声をかけてくれたのも、その中で知りあった方達でした。そして今、その方達とカイロセミナーを受講しています。
今更ですが、今まで学んだことが少しずつ理解できてきているのを感じます。「あれはこういうことだったんだ~」と、改めて気付くことも多く、「ベーシック受講中の私は、やはり、まだまだ理解が不十分だったんだ」と、納得しました。
そうはいってもまだまだわかっていないこともいっぱい、技術面に関しては、「本当に大丈夫なんだろうか?」と、不安になることもしばしばですが、難しいからこそ! 学び甲斐もあるというもの(^_^)v 今、改めて学ぶ楽しさを感じています。
【これから】
私の相談室には「乳房マッサージをしてもらいたい」との目的で来るお母さんが殆どです。そんなお母さん達に体のケアをしようと思うと、喜ばれることもありますが、「マッサージ以外は求めていません。体のケアは整体に通ってるからけっこうです」というスタンスの方も多くいらっしゃいます。
「体が整っていれば、こんなにトラブルにならないハズなのに…」と思いながらも、「どうせならここで一緒に受けられたらいいんじゃない? 私も整体できるんですよ!」と自信を持って言えず、マッサージだけやって終わることもしばしば…(-"-;
私の相談室には生後すぐから3歳くらいまでのお子さんが多いのですが、改めて診てみると…、お子さん達の体にも気になるところがたくさん…。最近は“おひなまき”や発達段階に応じたアドバイスなど、できる範囲でやるようにしていますが、生後すぐからお会いできるのはごく少数で、どうしてもスタートが遅くなるのが難点です。やはり「まるまる育児はお腹の中から!」ですね。
今後は「あそこに行けば楽に母乳育児ができるよ、子どもの発達も良くなるよ」と言ってもらえる相談室を目指して、体のケアや、おっぱいケア、まるまる育児も含めた、幅広い育児相談室として充実させていくのが夢です。
そのためには、勉強ももちろんですが、「妊婦さん対象の骨盤ケアや、まるまる育児のクラスなど、妊娠中からアプローチできる場を少しずつ作っていかないと…」と思っています。
マイペースな私にどこまでできるか分かりませんが、やりたいことがいっぱい! でも、大変ではない。ワクワクしながら仕事を毎日楽しんでいるんですもの、こんな幸せなことはありません。これからも楽しく、頑張っていきたいと思います。