福岡県の開業助産師 成松志野先生のコラム
保健指導専門の助産院を開業して4年
~ トコちゃんの骨盤ケア教室をとおして早産率低下にも貢献 ~

 
【助産師を目指したきっかけ】
 こんにちは。福岡県宗像市で助産院を開業して4年目になる成松志野と申します。小さい頃から養護教諭として働く母の姿を見て、「私もやりたいことを仕事にできたらいいなぁ」と思っていました。そんな中、動物が大好きだった私は、初めて飼った犬が病気で死んでしまった時に、悔しく悲しい気持ちから「獣医になりたい」と思いました。
 また、私はひとりっ子で、身近に赤ちゃんが誕生した経験もありません。最初の身近なお産は、飼っていた犬のお産で、私はその時はただ犬の側にいただけでしたが、命が生まれて来ることを特別なことではなく、日常生活の一部として自然に受け止めて過ごしました。その時間がとても温かく穏やかなものとして心に残っています。

 そんな小学生の時の動物の生死の体験から、獣医への夢を抱いて高校に進学。家庭科の授業で初めてお産の映像を見た時に、産んでくれた母への感謝の気持ちと、女性の持っている産む力の偉大さに感動しました。そして、側に寄り添う助産師の姿が、動物の生死に立ち合った時の自分の姿とリンクし「命に寄り添う助産師になりたい!」と思いました。
 高校卒業後は、1996年に西南女学院大学 保健福祉学部・看護学科へ進学し、看護師・保健師の資格を取得し、すぐに福岡県立看護専門学校助産学科へ進学し、助産師の資格を取得しました。

【学びを求めて転々と…】
 動物の自然なお産がスタートだった私にとって、医療介入のないお産をサポートする助産院という場所が憧れであり、特別な存在で「いつかは開業したい」という大きな目標を持っていました。そんな目標のもと、私は学ぶべきものを探し、彷徨った結果、2001年の就職から2~4年単位で職場を転々としました。誇れる職歴ではありませんね。
 産婦人科クリニック、総合病院、大学病院、助産院、恩師の研究助手、市町村の赤ちゃん訪問指導員を経て、2014年1月にお産を取り扱わない保健指導専門の助産院【母と子の相談室・ルチル助産院】を開業しました。

【トコちゃんベルトとの出会い】
 2006年、152㎝の私が3,360gの長女を、四つ這いの姿勢で産みました。恥ずかしながら当時の私は、お産と骨盤が関係していることも知りませんでした。早々に幅広のウエストニッパーをカバンから取り出し、ギューッと締めてしまうという有様でした。
 そのせいか翌日から足が前に出なくなり、背中を丸め前傾姿勢で過ごし、恥骨の痛みに耐えながら退院しました。1ヶ月健診でも恥骨の痛みは消えず、不安になり相談したところ、初めて「トコちゃんベルト」という存在を知りました。

【骨盤ケアを本格的に】
 産後にお世話になったトコちゃんベルトだったのですが、日々の仕事と育児で精一杯の状態が続き、しばらくは学ぶこともできませんでした。長女が3歳になった2009年から、少しずつセミナーに通うようになり、信子先生ワールドに引き込まれ、トコちゃんベルトアドバイザー、総合ベーシック、まるまる育児アドバイザーと進みました。
 2006年に出産した長女は、私がまるまる育児を学び始めて足の大切さに気づいた時には、既に小学4年生。その時にはもう外反母趾になっていて、とてもショックを受けました。
 2010年に次女を出産し、長女の時にしていた縦抱きをしないように気をつけ、足指を認識できる遊びをし、しっかりハイハイできるよう留意しました。現在、小学1年生の次女は運動も大好きできれいな足指を保っています。

 学び始めて8年、ついにカイロプラクティックセミナーにまでたどり着き、今年の3月から福岡天神サロンで受講中です。遠出の必要がなく、経済的にも時間的にも助かっています。
 信子先生のお話は、臨床のよくあるできごとや、なかなか体験できない貴重なできごとを、映像が思い浮かぶように分かりやすく伝えてくださいます。また時には、助産師としての在り方や、親としての在り方、人間としての生き方についてなど、哲学的な要素も含んでいて、いつも帰り道の頭の中は刺激でいっぱいの状態です。
 スマホの進化に伴い、お母さんや赤ちゃんの生活や体も変化し、それに合わせてセミナー内容もどんどん進化しているので、毎回受講するのがとても楽しみです。

【開業してから現在のケアの現状】
 そもそも10年あまり前までは、お産と骨盤の関係も知らず、産後に幅広ウエストニッパーをしていた私です。その私が、こんなにも早く開業できたのは、骨盤ケアを学ぶことを通して、お母さんや赤ちゃんの体を診る目が養われ、アプローチの引出しが増えたからだと思っています。
 現在、相談に来てくださる方の半分が母乳相談(おっぱいケアを含む)で、半分が産前産後の骨盤や赤ちゃんの体の相談です。母乳相談の中でも、「乳頭混乱で飲めない」と諦められていたお母さんの、赤ちゃんの姿勢や首、口周りの筋肉にアプローチすることで、おっぱいを飲めるようになったりなど、セミナーで学んだことが日頃のケアに役立っています。

【早産率低下に貢献】
 2015年9月からは、福岡新水巻病院周産期センターの敷地内にある「みずまき助産院」の「ひだまりの家」のホールをお借りして、月に1回「トコちゃんの骨盤ケア教室」を開いています。教室開催の打診は青葉の担当者からあったのですが、センター長である小児科医 白川嘉継先生からもお声をかけていただきました。参加者の約半数はみずまき助産院にかかっておられる妊婦さんですが、白川先生から「教室を始めてから切迫早産が減り、入院中もベルトを使用することで正期産できる人が増えた」と評価していただき、2016年12月2日の第61回日本新生児成育医学会・学術集会のランチョンセミナーにて、パワーポイントでご紹介いただきました。

【「まるまる育児スタート教室」と「フォロー教室」の開催】
 出産する妊婦さんの体が変化し、生まれてくる赤ちゃんの体にも変化が起こっています。そんな中、「まるまる育児」をお伝えすることで多くのお母さんから変化の声をいただくようになりました。
 しかし、首枕の使い方や、おひなまきのやり方などの習得には個人差があり、手元がおぼつかずうまく巻けない方や、赤ちゃんの泣きに残念ながら耐えられない方もいらっしゃいます。
 また、赤ちゃんの動きの発達に合わせて、適切な遊びを取り入れながら、柔軟に対応していくことの大切さも実感しているのですが、とても1回だけの関りでお伝えすることはできません。その反省も踏まえ、まるまる育児アドバイザーの取得を機に、2016年8月から、「まるまる育児スタート教室」と「フォロー教室」の2つに分けて、月に1回ずつ開催し始めたところです。
 そんな中、熱心にまるまる育児を実践してこられたお母さんが、その良さを実感され、身近なママ友や知り合いを集めて、伝達会を現在までに3回程開かれています。また、ご自身でもまるまる育児アドバイザーを目指しトコ企画の新生児ケアセミナーなどを受講される方も現れ、大変心強くうれしく思っています。

【今後の展望】
 日本では「かかりつけ医」は国民全体に認識されていますが、「かかりつけ助産師」はまだまだですね。女性の一生の中で起こる妊娠、出産、育児、更年期などの、体と心の変化の際に生じる様々な相談に対応できる助産師でありたい。そして、自分で対応できない時は紹介先を持てるように、これからも幅広い分野の学びを続け、助産師の横の繋がりや他職種との連携も大切にしていきたいと思っています。里帰りなどで県外にお繋ぎする際は、皆様、よろしくお願いいたします。