さいたま助産院 院長と、勤務助産師のコラム
骨盤ケアができる助産院は、地域には必須の場
……‥‥♪・・院長 山田美津枝先生のコラム・・♪‥‥‥‥‥
【はじめに】
皆さん初めまして、さいたま市で有床の助産院を開業している山田美津枝です。1998年リプロダクティブ・ヘルス・ライツをコンセプトにした出張開業後、2002年旧大宮助産師会(現 一般社団法人 埼玉県助産師会さいたま市地区)の顧問 相川きみ先生に「さいたま助産院」と命名して頂き、有床の助産院になりました。
【当院の概要】
・ベッド数…3床、年間分娩数…5~20件の小規模な助産院です。
・外来時間…9~16時、土日祝日休み、年間外来延べ人数…約900名
・職員…常勤助産師1名、非常勤助産師15名(パート2名、分娩時対応13名)
非常勤看護師2名、非常勤作業療法士1名、非常勤臨床心理士1名
庶務2名 調理担当2名
・診療内容…妊婦健診・分娩介助・母乳育児相談・骨盤ケア
・教室…妊娠準備教室・出産準備教室(妊娠編・分娩編・産後編・赤ちゃん
の育て方編・赤ちゃんの遊ばせ方編・母乳育児教室・マタニテイヨーガ)
産後ヨーガ・ベビーマッサージ・思春期相談・更年期相談
年間教室参加延べ人数…約650名
・その他…出張教室「命の大切さ」などを行っています。
【渡部信子先生との出会い】
外来診療の中で、妊産婦様の腰痛・恥骨痛の対応に苦慮し、渡部先生が、高輪サロンを開設直後に会いに出向きました。先生の講義と手技は、当院の大先輩助産師から教えてもらった経験と技術に通じることが多く、解剖生理学的に説明され創意工夫が随所にあり、日本で古くから伝承されている助産の技の現代版だと思いました。そこで、テイクケア、セルフケア共に2年かけじっくりと学ぶことにしました。教えていただいた講義と技術は、今日の外来診療、分娩介助、産後ケア、各種教室に根づいています。
研修修了後も、都内まで研修に行かれない後輩、スタッフ育成のため、渡部先生をはじめ、セミナー講師の助産師さんなどを招いて、大宮や院内で研修を開催しました。ここ数年は、各自都内の研修に参加してもらっています。
【開業して一番大変だったのは】
6年前の東日本大震災の直前に、家族の病気、自身の7か所の骨折により、介護ベッド生活をすることになった時です。分娩は嘱託医療機関にお願いし、骨盤ケアは整体サロンで開業している助産師にお願いし、助産師のパート職員には退職してもらい、仕事は一時的に母乳育児相談のみに縮小し、庶務スタッフに手伝ってもらい乗り越えました。その後は、県内の開業助産師達の応援もあり、分娩を再開しました。
4年前には、肩関節周囲炎になり、整形外科を受診しましたが、痛み止めも効果がなく夜も眠れないほどの痛みが3か月も続きました。別の疾患かもしれないと思い内科を受診、他にも複数の疾患が見つかり治療を受けました。
心も萎え一時は「廃業」の2文字も頭をよぎりました。幸い、嘱託医でもある主治医の助言や、仲間の応援・手当て・励ましに支えられ、仕事量を減らし、生活の改善を行い、病院でのリハビリを続けることで、身体の緊張や痛みを緩和し、食事の改善、自身の筋トレ・運動とつながりました。それらの体験が現在の助産院の外来診療、教室に役立っています。
【30年前には】
日本には10年前には388件あった助産院が、平成27年には359件に減少しています。30年前には、旧大宮市には東西に助産師会立の助産院があり、個人の助産院も数十か所あったそうです。現在は、さいたま市で分娩可能な有床助産院は当院のみ、母乳育児相談室は10か所です。
更年期をすぎてからの重なるケガと病気を経験して、今私がすべきことは後輩の育成、特に分娩を扱う開業、母乳育児相談を中心とした保健指導型開業を目指す助産師を応援して行くということです。
【開業当時と比較してみると】
日常生活が便利になり、身体を動かすことが減ってきている昨今は、大人の女性型骨盤に育っていない幼児型骨盤の女性が増えたように思われます。当院でも骨盤ケアに外来通院、教室に参加される方は年々増えています。
日本では、10年前で正常産を扱う助産院での分娩数は約1万人、平成27年は、約7300人と減少しています。
少子化や高齢出産、不妊・不育、女性の身体の変化、便利な時代の波には逆らえませんが、時代のニーズに即した仕事に変化しても、当院はこれからも昭和の生活を続け、来院される妊婦さん、お母さんと赤ちゃんに「何気ない日常生活こそが大切であること」「創意工夫とひと手間をかけた愛情のかけ方」を伝え、それぞれ自立した生活ができるように支援していく助産院でありたいと思います。
【おわりに】
一昨年、孫が生まれ、日々の成長と孫育てを通して、あらためて助産院のケアを見つめ直すよい機会に恵まれました。家族のために、地域の皆様の健康のために、意欲的なスタッフや研修生と共に、今後も地域の皆様の「お助け寺」として貢献していきます。
……‥‥♪・・勤務助産師 増子麻里さんのコラム・・♪‥‥‥‥‥
さいたま助産院に勤務している増子麻里と申します。私は、10年以上子育てに追われ、家事と育児に専念してきました。その間にお母さんの身体も変わり、出産、子育ても大きく変わってきたような気がします。
新生児訪問の仕事を始めてから、病院では、解決しない母子の悩みが「さいたま助産院に行くと解決する」とよく耳にしていました。それがきっかけで私もさいたま助産院にお願いして勤務するようになり1年がたちました。
さいたま助産院の院長は、トコ・カイロプラクテッィク学院のカイロプラクティックセミナー修了者でもあり、産前産後問わず、骨盤のトラブルで悩んでいる妊産婦さんがたくさん来られています。助産院は、妊娠から出産、母乳、育児へと一人のお母さんの悩みと向き合って行くことができるので、お互いの信頼関係はとても深いものになっています。
その中でも骨格はとても大切で、そのお母さん達の悩みは、全てそこから来るのではないかと感じています。助産院に訪れる理由は、「切迫早産」「逆子」「恥骨が痛くて歩けない」「反り返っていてよく泣く子」「母乳育児がうまくいかない」など、さまざまな悩みを抱え、どこでも解決してもらえない方達ばかりです。そして、個別ケア(外来診療)を受けよくなって帰るママを見ていると、「このような助産院は、地域になくてはならない所だ」といつも思います。
私は今の所、「出産準備教室」「マタニティヨーガ」「産後ヨーガ」「赤ちゃんの育て方、遊び方」などのお教室を少しずつですが担当しています。どの教室も骨盤の話が中心でお母さん達の悩みも、そこにあるように感じます。
しかし、今のお母さん達は面倒くさがりだったり、あまり工夫をしない人も多いので、教室だけでは限界があります。私自身、トコちゃんの骨盤ケア教室を担当できるようになりたいと思ってはいますが、最後は個別的な関わりが必須だと思うので私の実力が問われると思います。
院長と個別ケア(外来診療)で関わったお母さん達は見る見るよくなっていきます。個別ケアはもとより、トコちゃんベルトだったり、さらしだったりその方にあった方法をどんどん取り入れ、自立まで導いているからです。そして、院長が何より大事にしている事は、最後は骨盤ベルトから離脱し、走ることができるということです。やはり「助産院は私が思っていた所だ」と感じています。
そんな助産院に勤務できることに感謝しつつ、もっと勉強を重ね、技術を身につけ、お母さん達から信頼される助産師になりたい、ならなければ…と思い、総合ベーシックセミナーに進む準備を進めています。