東京の助産師 池田匠美先生のコラム
「母子の体も心もまるく」…“みひかるサロン”を開いて8年
【はじめに】
皆様、はじめまして池田匠美(なおみ)です。東京の自由が丘で、ベビーサイン・ヨガ・骨盤ケア・まるまる育児などの各種教室を開催している「みひかるサロン」の代表をしています。
生まれ育ったのは千葉県で、日赤看護大学助産課程を卒業後、成田日赤、東京の育良クリニックで働いた後、結婚し現在に至っています。子どもは男女1人ずつで、2人ともに水中出産で安産でした。胎盤の娩出は水中ではなく、児の娩出後に分娩台に移るので、胎盤娩出の方が痛みを強く感じました。出産経験のある方なら、「まさか?!」と思われるでしょうね。
【信子先生との出会い】
実は私、2003年に晴れて妊婦になったとき、(旧)母子整体研究会のセミナーを申込み、ベルトやクッションなどを購入していました。ところが、ひどいつわりで倒れ、高輪サロンまで伺えなかった過去があります。
助産院並みに自然分娩を扱う病院で働いていたので、途中で進まない分娩介助をした際は、自分の技術がもっとあればよかったのではないかと、落ち込む日々。その時に、渡部信子先生のホームページで「骨盤の凸凹に児頭の骨が引っかかる」という動画を発見し、「これだ~!」と衝撃を受けました。私の技術不足もあるかもしれないが、骨盤という新しい領域を習いたいと思ったからです。
しかし、当の私はつわりに切迫流早産。セミナーは諦め、妊娠36週でやっと高輪サロンで施術をしてもらったところ、「脚長差が4cmもある!」と絶賛(笑)。「院長の日にも来てください」と勧められ、信子先生の施術を受けることとなりました。
「すいません、切迫流早産で…、もっと早く伺いたかったんですが…」と申し訳を述べたところ、「あ~こんなふうに下がってる人はお腹も張るのよ」とあっさり言われ、自分で体感していた謎が解けました。子宮頚部が短いので1日6錠も張り止めの薬を内服していましたが、生まれそうな張りでもなく、バネ秤のバネが重力で伸びたように、子宮が下がるから張っているって感じるだけ? そんな気がしていたのです。結局、陣痛が付いたのは予定日を超えてから。あの当時、骨盤が緩むから内臓や子宮が下がり切迫早産になると気づいていたのは、おそらく信子先生だけではないでしょうか?
3年後に2人目を妊娠。つわりは重症ではなくなったものの、14週で大出血、そこから安静生活を強いられ、上の子のベビーシッター代がかさむという事態に(>_<) トコちゃんベルトは持っていたものの、きちんと学んでいないと、活用できず、マイナートラブルのオンパレードのような経験をしました。今では、「これを反面教師にしてね」と、骨盤ケア教室に活かしています。
きっと胎児姿勢も良くなかったと思うのですが、スリングを使えたので、丸く抱き、授乳クッションに寝かせるなど“まるまる育児”で育てたことが良かったのだと思います。特に下の子は、縦だきを嫌がるので、重いなあと思いながら横抱きを多くしていました。おかげで器用な子になっていて、上の子との違いを、日々目の当たりにしています。
【ベビーサイン育児教室を開催】
これだけ感銘を受けておきながらも、2人の子育てで夜勤もできず、趣味の延長で始めたベビーサイン育児教室が盛況となり、生徒数が全国ナンバー1になったりと忙しく、トコちゃんを忘れかかっていました。ベビーサイン(しゃべれない時期に手話やジェスチャーで会話する)は、たくさんメリットがありますが、「伝わってうれしい」「ママが気持ちを汲み取ろうとしてくれるという、コミュニケーションの土台ができる」などの面で、特にお勧めです。
ベビーサインも、この10年で有名になりましたが、ママが赤ちゃんにサインをやみくもに見せても、なかなか覚えてくれません。なので、教室ではママが赤ちゃんのことを勉強し、赤ちゃん心を理解していきます。そんな中で、ママ達から、「ベビーサインの他にも、いろいろと教えてもらいたい」との声が寄せられるようになりました。子育て経験のある助産師だと、お産や母乳ケア、個性が出てくる頃のお世話の仕方などについて、しっかりと相談に乗れますから、やりがいがどんどん膨らんできました。
今に思うと、カルチャースクールに営業をかけて、ベビーサイン育児教室を入れてもらったり、どのくらいの価格が適切か、などを考えながらの講師業が、みひかるサロンを運営するために、役だっているように思います。
<2009年“みひかるサロン”開業>
主婦をしながらも、上の子が1歳半になったころから時々講師業をしているような私でしたが、公園で子どもを蹴り飛ばしてるお母さんを止めに入った経験がありました。それは悲しくつらい心の重石となり、あるとき夫に相談したところ、「そういうお母さん達を支援するのを仕事にできないか?」と夫のほうから後押ししてくれました。そんな経緯があったのですが、自宅に近い自由が丘は家賃が高く、夫の会社で借りてもらうことになりました。その場合、助産院としての登録ができないなどの壁もあり、まずは、子育て支援をする“みひかるサロン”という名称になりました。その後、同じビルに空き室が出て、助産院として借りることができたので、本職の母乳ケアもできるようになりました。
サロン名の由来は、恥ずかしながら私と夫の名前をくっつけたもので、「検索したらすぐにヒットするように」と、変わった名前にしたのです。
【ベビーに異変!】
サロンの経営は決して楽なものではありませんが、何とか落ち着いた5年目あたりに、異変が…(@@)お座りしているベビー達が「バタン!」と倒れて大泣き。ぐずるとママが抱っこしても泣き止まないなど、講座がやりにくいと感じることが増えてきました。ハイハイ姿勢が傾いている赤ちゃん、パチパチ拍手する手が中央で合わない赤ちゃん…。「どうして?」と、たどり着いたのが、またもやトコちゃんのホームページでした。
「赤ちゃんだけを治せるようになりたい」と思って飛び込んだのですが、「まずは母親を、妊婦を!」と諭され、ベーシックセミナーまで通いました。今では骨盤ケア教室に加え、マタニティーヨガ(トコちゃんベルト試着付き)のようなクラスを作り、妊娠中からの啓蒙に努めています。
【大きく成長した“みひかる”】
現在、みひかるサロンは、講師25人、保育士兼事務員4人をかかえ、マタニテイーヨガ・スリング・ベビーマッサージ・ヘビーサイン・ベビーヨガなど、約30種類の講座に、託児付き整体やマッサージなどもあり、1日に10コマ前後を運営しています。スタジオにも保育士が1人入るので、「集中できる」とママ達には評判です。
広告費はかけられないのですが、ママ達の「産後の困りごとを相談できて助かった」という口コミに支えられています。的確に全体像を把握して、必要なケアをしてくれる、0~1歳の専門家って少ないのでしょうね。
みひかるサロンの特性としては、骨盤ケアも、まるまる育児も全く知らず、カチカチに反り返ったベビーを抱いたママが、ふらりとヨガなどの講座に来ることです。すると、保育が大変ですから、保育士さんから「またあの抱っこ紐でした」との通報が私に来ます。当初は私1人で対応していましたが、スタッフたちが「もっと学びたい~」と、トコ企画のセミナーに通ってくれるようになりました。
【骨盤ケアと姿勢ケアが広まるように】
私が“おひなまき”を見せたときに、「かわいそう」と言わんばかりに、引いていたスタッフ達なのに、この3年の間に、トコベルアドバイザーが5人、まるまる育児アドバイザーが3人に増えました。私1人では、たいした変革はできませんが、チームで同じ方向を向くようになって、重症者は室長である私に、という流れがでてきました。
先般のおとなまきブームにあやかり、うちにもおとなまきの取材が入り、ドイツの動画ニュースがきれいな映像を作ってくれました。しかし、外国はそれぞれの国の価値観や意識が違うので、難しいです。十分な打ち合わせをしたはずなのに、先日、BBCの取材が入って来たときに、取材陣の1人が「赤ちゃんを巻くということが虐待と騒がれやしないか?」と言いだし、取材が中止となってしまいました_| ̄|○ 「イギリスでは犬や猫にも不自然なことをすると、すぐに騒ぎになる。虐待ではないと僕たちもわかってるんだが…」など言われ、うまく反論できず、悔しい思いをしました。
さっそく、その夜に子ども用サチュレーション機械をネットオーダー。経験的に良いと思うことでも、実証していかないといけないようです。
「自分の姿勢が治せるとは思ってなかった。諦めていた」と言うママが多いのですが、妊婦のうちに骨盤ケアを知ると、ベビーや自分の姿勢直しに、皆が取り組むようになります。ベビーが大きくなってからはじめて“まるまる育児”に出会った場合でも、“こどもまき”“おとなまき”の発想があれば改善することができます。データを取りながら、体が楽で人生が楽しめる人が増えるのが夢です。
【さいごに】
育児関連の習い事、方法論には、なぜか流行りすたりがあり、安定経営が難しかったのですが、骨盤ケアとトコちゃんベルトなどの販売で、集客が増え、みひかるサロンの体幹ができました。信子先生には2度も助けていただき大変感謝しております。
これからも「骨盤ケア・まるまる育児・ベビーサインで、体と心もまるく」という理念を掲げ、スタッフ一同、仕事を楽しみながら進んでまいります。