福岡県の勤務助産師 岩本富美子さんのコラム
骨盤ケア・まるまる育児に加え、トコ・ヨガ体操を導入
【はじめに】
皆様、はじめまして。福岡県北九州市の勤務助産師、岩本 富美子です。私は生まれも育ちも北九州で、幼少の頃から赤ちゃんが大好きでした。誕生日の度に「プレゼントは赤ちゃんがいい」と、母を困らせていたようです。
自分が妊娠、出産した時はすごく嬉しくて、“周りの人すべてに感謝したい”“こんなに感激して幸せなことはない”と、感じました。
同じ頃に出産した親友を訪ねたとき、疲れて果てた様子で「お産も大変だった、助産婦さんに怒られてばかりで、感動どころではなかった」と話すのを聞き、とてもショックを受けました。
素人ながら「お産の体験が、育児にも影響するのかなぁ~」と感じ「産んだ女性が満足できるお産ができるよう、お手伝いをしたい!」と、33歳で看護学校に入学。すぐに、国立小倉病院附属看護助産学校に進み、2001年に卒業しました。
【産婦人科・麻酔科クリニックに就職】
卒後すぐに19床の個人医院に就職。3ヶ月もしないうちにメインの助産師が産休に入り、助産師は私と母乳外来専門の師長(副院長の妻)との2人になってしまいました。月約30人のお産の8割に立ち会うことになり、ただただ腰を摩り、励まして、自然に進むお産を介助するという繰り返しでした。
年間分娩件数は、現在は約330件前後ですが、4~5年前は400件前後ありました。医師は2人(1人は高齢で、お産に関わっているのは1人)、看護スタッフは19人(うち助産師は5人)です。
近年、当院では約9割が自然分娩できていますが、妊娠中は順調であるとは限りません。初産でも腹直筋が離開している方も多く、入院時に第1回旋不良で、前方前頭位が多くて分娩進行が悪く、娩出時にうまく息めない方も増加しています。
就職した16年前のように「ただ腰をさすって見守るだけ」では進まないお産は増加傾向にあり、骨盤ケアと出会っていなければ「約9割が自然分娩」という数字を保てなかったと思えます。
【骨盤ケア・まるまる育児との出会い、学びを深める中で】
私が骨盤ケアに出会ったのは、今から9年前。就職して数年が経ち、仕事にも慣れ、「レベルアップしたいな」と感じている時でした。「骨盤ケアセミナー」の案内が届き、「これだ!」と直感。助産師が増えて休みをもらえる余裕ができたこともあり、受講しました。
セミナー内容のすべてが目から鱗、操体法での自分の体の変化にも驚き、とても強い興味を持ちました。その後、旧母子整体研究会の基礎セミナーやトコちゃんベルトアドバイザーセミナーを受講。さらに、ベーシックセミナー・カイロプラクティックセミナー・交感整体セミナーへと進み、修了しました。
習得した骨盤ケア・まるまる育児を、少しずつ仕事に取り入れたことで、これまでは「どうすることもできない」と諦めていた妊産婦の痛み・不調、第1.2回旋の異常、新生児の呼吸・哺乳や、四肢を含む全身の姿勢の悪さも、予防し改善できるようになってきました。
そんな中、2015年6月30日福岡で開かれたトコ企画主催のトコヨガ入門セミナーを受講。猫のポーズの脱力後、それまでにないほど全身の力が抜け、頭の中が“無”になって、ただただ心地良く、リラックスできていることに気付きました。と同時に、深呼吸の大切さ、自分の体の声を聴く大切さを実感しました。
助産師という仕事柄、いつ呼び出されるかわからない忙しい日々の中で、自分でも気づかないうちに、常に緊張して過ごしていたのだと思います。
「うちの妊産婦さん達にもこれを伝えなくては! 私が伝えられるようになりたい」と思うようになりました。
【トコ・ヨガインストラクター養成セミナー】
2014年からトコ・カイロプラクティック学院主催の「トコ・ヨガインストラクター養成セミナー」が、東京で開かれるようになりました。そんな折、福岡での開催を望む声が盛り上がり、2016年3月~10月、福岡天神サロンでの開催が決定。受講することとしました。
【当院における妊産婦指導の現状】
当院では次の3期に分けて妊産婦指導を行っています。
1期.マタニティ期(妊娠15週以降31週までの妊婦)
2期.出産準備期(妊娠32週以降の妊婦)
3期.産褥早期(産褥3日~5日)
今回、トコヨガ養成セミナーで、「私の理想とするクラス」というテーマでレポートを作成しました。それを、他の助産師にも見てもらって、徐々にトコヨガを取り入れているところです。
1期…クラスを開催できるようになりたいと思ってはいるのですが、まだ開けていません。個々の助産師外来で行っている状態です。
2期…出産準備クラスでは、私が担当の時はトコヨガを導入して行っていますが、他の助産師は、部分的に導入しているにとどまっています。
3期…授乳の前後や退院指導の時間に、トコヨガを導入している状態です。
【私の理想とするクラス】
①テーマと目標:
1期.テーマ:ママも赤ちゃんも楽に過ごせる体作り
目 標:現在の自分の姿勢の見直しができる
S字状彎曲作りを促す姿勢と体操を学ぶ
呼吸法や体操を実践し、リラックスした状態を実感できる
2期.テーマ:主体的にお産に臨める力を育てる
目 標:リラックスと深呼吸が、安産につながることを理解できる
お産に向け、自分に合った体作りの方法を知ることができる
陣痛を“赤ちゃん誕生に力を貸してくれる仲間”と、感じる
ことができる
3期.テーマ:楽に子育てができる自分の体ケア
目 標:骨盤ケアを継続できる
骨盤の緩みは、おっぱいにも影響することを知ることができる
自分の疲れを癒す体操を選び、実践することができる
②各クラスの共通内容:
1. 体作りの大切さについての講義
2. 姿勢と体のチェック
3. 呼吸法
4. トコヨガ体操
5. 骨盤輪支持
以上に追加して、各期に必要な体操などを実施していければと夢見ています。
【おわりに】
このように理想は高いのですが、まだまだ十分満足にトコヨガ体操を導入できているとは言えません。
現代はデジタル社会と言われ、自分も含め皆、診察までの待ち時間、産前産後でさえ、スマートフォンを手放せません。手元だけの操作で、いつでも誰にでも連絡が取れ、何でもすぐに調べられる便利さの反面、常に頭や目を使い、ゆったりと静かな時間を過ごすことが少なくなっています。
人のことは言えないのですが、私自身の体の不調でさえ「いつも通り」と見逃し、鈍感になっていると感じています。そんな今だからこそ、トコヨガ体操や呼吸法、自分を見つめ直す大切さに焦点を当て、心も体もリラックスでき、楽しく元気に妊娠・出産・育児ができるための「私が描く理想のクラス」へと育てて行きたいと思っています。
これからも研鑽を重ね、当院で出産された全ての母子が笑顔で暮らせるよう、末長く楽しく元気に働き続けていきたい。それが私の夢であり、生きがいです。