千葉県浦安市の産後ケア施設 院長 北島 美代子先生のコラム
セミナーでの学びをTomoru助産院で実践、充実した時間
【産後ケア助産院の院長に】
皆様こんにちは。東京で活動しています北島美代子です。昨年5月に、らしくの母子保健指導力upセミナーの講師として、コラムを書かせて頂きましたが、今回は集団タイプの日帰り型産後ケア施設「Tomoru助産院」の院長としてコラムを書かせて頂くことになりました。
産後ケアに関心がある方も多いかと思いますので、始めに当施設の紹介と私が助産院の院長になった経緯を説明します。まず、Tomoruの名前の由来ですが、助産院のある千葉県浦安市当代島という地名が、「元々は灯台があった島」から来ているというので、「地域の母子保健に灯を灯す灯台のような存在に」という思いを込めて事務長が命名しました。
当院は本年7月1日に浦安市の委託事業として運営を開始しました。設置母体は佐野産婦人科医院、千葉県浦安市で開業40年を迎える個人医院です。当初の計画としては医院の敷地内に付属施設として開設する予定でしたが、建築基準の問題から許可が下りず、少し離れた場所に開設することになりました。
医療施設の体裁をとるために急遽、助産院として開業することになりました。そこで、常勤として勤務する予定の2人の助産師のうち、私の方が年長者ということから院長として開業届けを提出することになり、全く予定外に助産院の管理者となりました。
【施設の概要】
当院は生後180日未満の母子を対象にした集団タイプの日帰り型産後ケア施設で、1日6組の母子が利用できます。スタッフは、助産師1~2名、保育1~2名、事務1名の体制で、日々のケアに当たっています。利用時間は10時~16時、昼食と15時のティータイムがあります。
ケア内容は2時間お昼寝ができるシエスタコース、漫画や雑誌が読める読書コース、ゆっくりお風呂に入れる入浴コース、肩か足のマッサージが選べるリラクゼーションコースがあります。数に限りがあるので希望に添えないこともありますが、この中から、ご希望のコースを選んで利用して頂きます。
基本料金は16,000円で、7回の利用までは浦安市が9割助成してくれます。
基本のコースの他、オプションとして別料金を頂いて、乳房ケアと骨盤ケアをおこなっています。
【産後ケアがスタート】
浦安市では先行して、オリエンタルホテルの1室を利用して個別の日帰り産後ケアを行っており、利用者のアンケート結果から「骨盤ケアを取り入れて欲しい」と市からの要望がありました。そのため、集団の場で操体法を行うプログラムと、個別の骨盤ケアを取り入れました。
「産後ケアで骨盤ケアもできるなんて、すごいラッキー」「まるまる育児も取り入れたい!」と、張り切ってスタートしましたものの、産後ケアに来る方のニーズには合わなかったようです。
多くの方は「ゆっくりしたい」「美味しいごはんが食べたい」で、「骨盤ケアも興味はあるけど。整体院に行ってやってもらうもの」という感じです。浦安市には産後の骨盤ケアを謳っている整体院があるらしいのですが、「整体に行っている」と言うのに、横座りってどういうこと?
赤ちゃんの抱っこの仕方も今まで習ったことがないのですから、殆どの方が赤ちゃんの体が捻れた抱っこ、あるいは「泣き止むから」という理由で首もすわらないうちから縦抱っこです。
中には、赤ちゃんを布団に寝かせることができず、縦抱っこでソファに座ったまま眠ること2カ月間。いつも両手が塞がっているので買物にも行けず、当然のように腱鞘炎になり「体が痛すぎて抱っこ紐も使えない」と素手で赤ちゃんを抱っこして来院した方もありました。
乳房ケアのために他の施設に通っているという方でも、首も支えないで赤ちゃんを抱き上げる姿を見ると「乳だけじゃなく赤ちゃんも見て~!」と心の中で叫んでしまいます。このような状況を見ているだけで、最初はため息が出そうな日々でした。
【セミナーでの学びを実践に】
産後ケア施設での仕事は、私にとっては“今までセミナーで学んだことの実践の場”となっています。特にセミナー講師を務めさせて頂いている「らしくの母子保健指導力upセミナー」の内容が本当に役立っています。
産後ケアを始めたばかりの頃、「赤ちゃんの脇を抱えて抱き上げないように」とお話ししたところ、そんなに強く言ったつもりは無かったのですが、ある利用者の方が「やってはいけないことをしてしまった」というような表情になってしまい、少し落ち込まれた感じになってしまい、「伝えるって難しいな~」と改めて感じました。
それからは、お母さん達の質問にも答えながら、利用者の方の反応を見ながら、できるだけ押し付け感がないように、こちらの伝えたいことをお話しするようにしています。
例えば、「せっかく整体に行ったのなら、効果を長持ちさせるためにもセルフケアもしましょうね~」と、座り方のことや骨盤輪支持法を伝えたり、時には、トコ・ヨガセミナーで習った“歌いながらの体操”をしたりしています。
横抱きができた方には「片手が離せて便利でしょ? 手も痛くならないよ」と話して、まるまる抱っこのことを話したり、指しゃぶりの質問があった時には、発達のことを話したりしながら、話題を広げるように工夫しています。産後間もない方ばかりなので質問して来た方以外の方も、「私も知りたい!」と興味を持って聞いてくれます。
操体法やトコ・ヨガ体操も「少し違うな~」と思っても、細かく注意はせず、こんな少ない動きでも体が楽になる、気持ちいいと感じてもらえればいいかなと思っています。
こんな感じで、「今まで疑問に思ったことがわかった」「新しいことを知れて良かった」「楽しかった、また来たい」と思ってもらえたらいいかなと、日々自分も楽しみながらやっています。
【今後の展望】
幸いにも今回、大変理解ある経営者、実際の運営管理者である事務スタッフに恵まれ、助産院のケアグッズとして、天使の寝床や青葉の授乳クッションなども取り入れて頂きました。
また、これまで積み上げて来た私のキャリアが中断されないようにと、セミナー講師の継続も了承して頂き、大変快適に仕事をしております。
更に、せっかく助産院としての届け出をしたのだから、市との契約である「16時以降の時間も有効活用しよう」と、骨盤ケア教室の開催や個別の施術も行う予定です。
【終わりに】
産後ケア施設の開設にあたり、偶然にも、本院から離れる形になったため、産後ケアだけに集中することができ、毎日本当に楽しく仕事をしています。今までで一番充実した時間を過ごせていると感じています。
産後のお母さん達により良いケアが提供できるように、今後も更に学び続けて行きます。