乳幼児の“発達応援隊長”竹内華子先生のコラム
幼児の育ちを応援する「発達応援アトバンスセミナー」スタート!

 
【はじめに】
 「赤ちゃん発達応援セミナー」の講師としてデビューしたのが2012年8月、早いものでもう3年半になります。この間、繰り返し受講されている方々から、赤ちゃんや子ども(以下 乳幼児)の育ちに関する、より深い質問をいただく機会が増えてきました。
 そこで、日々子ども達の発達を支え、ママ達へ指導されている方を対象とした「発達応援アドバンスセミナー」を、トコ企画で開催し、私が講師を務めることとなりました。
 第1回は3月3日(木)、富山県魚津市の新川文化ホールで開催されました。初回で富山という交通の便の悪い土地にもかかわらず、青森県から福岡県までの22名の方々がご受講くださいました。乳幼児の育ちに興味を持っておられる専門家が、こんなにも多くいらっしゃることに感謝、感激です。
 
【作業療法士を目指す学生の骨格・体力】
 私はここ2年間、作業療法士を養成する専門学校で教えるチャンスをいただき、18~22歳くらいの若者と接してきました。学生はリハビリという体の機能を改善するプロを目指しています。正常な人体を知るために解剖学や生理学、そして運動学を学びます。もちろん実習もあります。
 解剖学で学んだはずの正常な骨格を持つ学生は、20人中1人もいません。正常な筋骨格系の見本となる体をしている学生がいないのです(涙)。評価学の中で、学生の筋力測定実習をすると、正常の筋力は5であるにもかかわらず、4しかない学生がいるのです。筋力4の人が、5の人を正確に測定することはできません。
 様々な器具を使った評価も行いますが、角度計などの器具を患者さんの体に当てながら測定することが、不器用でできません。そして、作業療法士になろうというのに、正しい持ち方で箸と鉛筆を使用することができません。教科学習についても教員は教えるのにかなり難渋しています。「勉強の仕方がわからない」「できません」などと平然と言うのです。
学生は今までも親や小・中・高等学校の先生に「正しい姿勢」「正しい持ち方」「正しい勉強の仕方」を習っているはずですが、18年以上生きてきて、本当にできないのでしょうか? できないとしたら、なぜできないのでしょうか?

【私が学生に望む“なってほしい人”とは】
私はその専門学校で「自分で体調を管理し、自分が選んだ道で、生き生きと学び・働き続ける人」を育てたいと思っています。
1.「体調を管理し」というのは、自分の身体の感覚を認知し、見通しを持って自分の生活時間を組み立てる能力を持つことを意味します。体調管理、生活管理ができることが社会人として求められるからです。
2.「自分が選んだ道で」というのは、作業療法士としての責任を果たす上で重要です。「親に言われたから…」という学生の多くは学力も伸びず、実習がうまくできないことが多いのです。親に言われて学校を選んだとしても、最終的に行くか、行かないかを決めたのは自分なのに、自分の決断に責任を取らないのです。これでは作業療法士としての責任を果たすことは困難です。
3.「生き生きと」とは、自信や自尊心が育っていることを意味します。これは脳の前頭前野の能力です。思考と判断を司る前頭前野は、生きる力を発揮する場所でもあります。自信や自尊心が育っていると、堂々と自分の知識と技術を発揮し、相手を尊重しながらセラピーを展開できるようになります。
4.「学び・働き続ける」ことは、常に進化を伴います。優秀なセラピストは自己研鑽と臨床を両立させ、常に進化しているのです。

【どのように育てればいい?】
では、どのように育てていくと、「体調を管理し、自分が選んだ道で、生き生きと学び働き続ける人」になれるのでしょうか?

赤ちゃんの頃からまるまる育ちをしている子は、自分の身体の感覚や変化に敏感です。特に不快に対してはどのように動けば快になるのか? 我慢するのではなく、不快を取り除くための努力をして、解決しようとします。親に訴える。自分で取り除く。諦めずにチャレンジする気持ちも育ちます。
1.自分で選ぶ
「赤ちゃん発達応援セミナー」でもお伝えしていますが、小さい時から選ぶ権利が与えられていると、選ぶために考える力が育ちますし、対象を吟味するために、よく見て、体感して確認するようになります。独自の判断基準を覚えるのです。また、選んだ結果を認めてもらえると自信につながります。そして「あなたが選んだのだから」と親が働きかけることによって、「自分の判断に対して責任を持つ」ことを学習します。
2.生き生きと
 こうやって多くの生活場面で快と不快を判断し、快に向かうような選択をするための判断力を身につけ、学習してきた子ども達は、自信を持って自分や家族以外の世界へも働きかけていきます。興味を持った場所や物へ向かって、自分の意志で動き、達成感を味わう経験を繰り返し、前頭前野を活性化していくのです。
3.興味と意欲を持って真似る
 進化し続けるために必要なことは、まず「興味を持つ」ことです。興味があるということはその事象に対して「意欲」が生まれるということです。意欲があるというのは脳全体が活性化した状態です。そして集中力を保って興味深い事象を「見続け」真似をします。真似るには見る力だけでなく、真似られるだけの運動能力が備わっていることが大切な条件で、ここで様々な“力”が試されます。
4.失敗から学び、チャレンジする
 失敗すると試行錯誤が始まります。成功するまで、見る・行動することを繰り返します。この時に「教えを乞う」という行為が発生することがあります。この時に初めて「教える」と効率よく達成することができます。
はじめから手取り足取り教える必要はありません。本人に興味があるのなら、教える前に本人がまず、その行為や物や状況(例えば、ママのスマホ操作)を、じっと見ているはずです。

乳幼児は興味のあることを見て→真似て→試して(動いて)→(必要時は)教わって→達成します。達成感を味わうと脳の中にアドレナリンが大放出されて快で満たされます。これが次にチャレンジする力になります。

【発達応援アドバンスセミナーとは】
上記のように、乳幼児の脳はどんどん発達して、たくさんのことができるようになります。子どもの脳と体を育てるためには、どのような関わりをしていけばよいのか? これを理論と具体的な方法を交えてお伝えするのが「発達応援アドバンスセミナー」です。
主な内容は
1.午前の理論編では上記の脳のメカニズムについて詳しく解説
2.午後からの実習では楽しみながら、体と脳を発達させていく遊びを体験
3.その中で、遊びの中で意識するポイントを解説
 しっかりと見て、動いて、楽しく達成した時の気分を味わって、明日からの子ども達の支援にどうぞお役立てください。

 バージョンアップした「新生児ケアセミナー」「赤ちゃん発達応援セミナー」を受講された皆さん、引き続き「発達応援アドバンスセミナー」を、ぜひご受講ください。今後の日程は下記の通りです。
  5月29日(日)京都市中京区 京都トコ会館
  6月8日 (水)東京都北区 滝野川会館

 まるまる育ちの子ども達がどのように遊び、育っていくのか? なぜ胎児期からのまるまる育ちが必要なのかを、より深く理解していただけると思います。
 発達を学び実践されているたくさんの方々と、お会いできることを楽しみにしています。