愛知県岡崎市の勤務助産師、小田尚美さんのコラム
色んな施設からご縁が繋がり、今は岡崎市の吉村医院で働いています。
以前働いていた沖縄市の「ゆいクリニック」でのセミナーにぜひ!

 
 皆さんこんにちは。私が骨盤ケアの勉強を始めたきっかけは、2006年~2007年にかけて立ち会った何例かのお産でした。陣痛の度に産婦さんから「そこ、押さえてくれたら楽ぅ~、ずっと押さえといて!!」と言われることが続いたからです。“そこ”というのは骨盤の一部分だったり、ある時は左右の腸骨を寄せるようにだったり、ある時は片方の坐骨を上げるようにだったり、またある時は大転子だったり、いろいろでした。
 それまでの私には「骨産道はどうにかできるもの」という発想はなく,「骨をどうにかすれば…」とか、「骨を触れば産痛が緩和できる」なんて、考えもしませんでした。「骨はどうにもならないもの」と当然のように思っていました。しかし、”骨”を触って産痛が緩和される産婦さんがいるという現実を目の当たりにし、「骨って…どうにかなるものなの?」から、「もしかして…、整体という技術があれば、骨もどうにかなるのかなぁ?」と思うようになりました。その次は「その技術があれば、今以上のケアができるのかも?」と、考えが変化してゆき、母子整体研究会(現、NPO法人 母子フィジカルサポート研究会)に出会い、勉強を始めました。 当時、京都の総合病院に勤めていたため、通いやすい環境だったことや、前の職場が手術室勤務で、人工関節置換術によく立ち会っていたので、骨・関節・筋肉・靭帯などに対して苦手意識がなかったことが幸いし、「難しそう」という抵抗感を抱くことなく、学び始めることができました。
 以前から「痛みのないケア、心地よいケア」の提供を目指していた私は、お母さん達の「産後のおっぱいケアは、痛くて当たり前だと思っていた」とか、「我慢するもんだと思ってた」という声を聞くと、とても悲しくなってしまいます。特にケア中、「なんで痛くないんですか?」と言われると、辛い経験をされていたことが伝わって来て、私も辛く感じていました。本来、おっぱいをあげるという行為は「気持ちが良いはず」で、ケアも「気持ち良くないとダメ」だと思うのです。
 母子整体の勉強を始め、仕事の中で使い始めると、出産時のケアだけではなく、「全身を整えることで産前産後を快適に過ごせる!」ということもわかってきました。それに、妊娠のための体づくり、妊娠中のトラブルの予防改善、お産のケア、おっぱいケアなど体面でのサポートのみならず、胎児期からの子育て支援にも役立ち、精神面までサポートできる知識技術だということをすぐに実感しました。骨盤ケアは痛みのない、体と心を心地よく整えるためのオールマイティなケアです。これこそ、私が求めていたケアでした。
 2009年4月、地元香川に帰り、新生児訪問と助産院でのお手伝いに加え、出張専門で整体を始めました。その理由は、妊娠中から産後2ヶ月ぐらいまでの女性の骨盤はゆがみやすいため、いったん整体で体を整えても、日常生活の注意を怠るとすぐに元に戻ってしまうのを、「何とかしたい!」と思ったからです。本格的な骨盤ケアを始める前に、少しでも避けていただきたい日常生活動作(つまり、普段の座り方や、車の運転や公共交通機関での長時間の移動…など)に気付いてもらうため、生活様式に応じたセルフケアの提案をするためにも、出張というスタイルを続けました。
 ところで、皆さんは“骨盤ケア”と聞くと、どんなことをイメージされますか? どんなことをすると思われますか? 私の場合は、①姿勢や体の動き方をみせてもらい ②体の強張りをとるための操体法や体操を ③ポイント施術「もしも痛かったら言ってくださいね~」と声をかけながら ④個別に応じた骨盤ケアの提案 という流れです。 おっぱいのケアも、真っ先に痛いおっぱいに触れるのではなく、体の緊張をまずとってから始めます。そしてセルフケアについてお話しして終了です。 
 2010年6月からは、もっとお産に関わりたいという思いが高まり、県外の助産院で嘱託(産休代替え要員)でしたが、常勤助産師と同じシフトで外来、当直、待機と目まぐるしい勤務を始めました。そこでの骨盤ケアは、既に支えるという面では定着していたので、より心地よさを求めた個別及び数人を対象に骨盤ケア教室を開かせてもらっていました。
 助産院で出産が可能となるのは嘱託医により35~36週の妊婦健診で「正常な妊娠経過であり、正常に分娩を終えるであろう」と判断されなければなりません。それでも、破水後長時間経過しても分娩に至らないときや、感染徴候があらわれたとき、弛緩出血を起こした時、児に何らかの異常を認めた時は、母子分離が生じ医療の助けを借りなければいけないこともあります。そうなる前も、骨盤位や胎児発育不全などで医療の手を借りざるを得ない事態を、できるだけ減らすことを目指しました。
 妊産婦さん達の「助産院で産めるのか…、ギリギリまで分からない。ドキドキする」「ダメって言われないか…と、いつも心配している」という声を耳にするたび、「これでは精神衛生上好ましくない」と感じていました。
 2012年初め、思いがけず沖縄市にあるゆいクリニックとご縁があり、3月から時折、非常勤職員としてお手伝いをするようになりました。(ゆいクリニックは母と子が心地よいと思えるお産をサポートしたいとの考えで創られた「病院らしくなく、お家のように安らげる」5床の小さなクリニックです。自然なお産や母乳育児を通して、母と子の絆づくり、親と子の結びつき事業など様々な支援をしています)
 助産師外来や病棟のケアに細々と骨盤ケアを取り入れていると、スタッフから依頼されて骨盤ケアの勉強会をしたり、個別にお話ししたりしていました。地域の特性(暑さのため日中の活動性が低い、伝統的な食生活と欧米型の食生活や生活様式が混在している…など)沖縄の妊産婦さんは多少体の緩みやゆがみがあっても、本来持ち合わせている靭帯の柔らかさがお産には良い影響を及ぼしているようです。しかし、産後は一転し回復が遅れたり腰痛など体の不調が増え、より適切なケアが必要と感じました。
 幾度か勉強会の依頼がありましたが、皆が同じケアを提供するために「メンテ“力”upセミナーを受けて欲しい!」と思っていました。しかし、地の利の悪さからか、なかなか実現はしませんでした。そうしているうちに、「ゆいクリニックでセミナーを!」との話がにわかに盛り上がったようで、ついにセミナーの日程が決まりました。
1月10日(日).11日(月)メンテ“力”upセミナー 講師:渡部信子先生
2月13日(土) 骨盤ケアアドバンスセミナー 講師:小林いづみ先生
2月14日(日) 新生児アセミナー      講師:小林いづみ先生

 残念ながらまだ受講申込みが少ないと聞いています。沖縄の中~北部(特に、やんばるや離島)にお住いの皆さん、この機会にぜひとも受講してください。

 ゆいクリニックからご縁が繋がり、2014年2月から愛知県岡崎市の吉村医院で勤務しています。吉村医院は妊娠中の運動や伝統的な粗食、生活を整えることで、心と体を整え、母子ともに生命力を高めて出産に臨みます。しかし、最近はゆとり世代の妊婦さん(体育の授業が減り、子ども時代にしっかりとした体作りができていない)や、高齢初産の妊婦さんや、また遠方から通ってこられるため、長時間移動を余儀なくされている妊婦さんもおられ、多様性のあるニーズにこたえられるよう日々試行錯誤しています。
 骨盤ケアを学んでいる助産師たちは、年々妊産婦さんの体の変化に戸惑っています。それに伴いケアの方法も少しずつ変化していて、生涯勉強を続けなければ、そのニーズに応えられないことを知っています。骨盤ケアに出会えたことは、助産師としてとても幸運なことだと思っています。
 興味を持っていただけた方は、ぜひ一緒に勉強してみませんか? 情報交換しお互いを高め合うことができれば、モチベーションが上がり、毎日の仕事が楽しくなること間違いなしです。皆様のご参加心よりお待ちしております。