宮城県塩釜市の助産師、佐藤恵美先生のコラム
操体法ゆかりの地、仙台の「温古堂」で骨盤ケア教室を開いています
皆様、はじめまして。宮城県塩釜市の坂総合病院にパートで勤務しています、助産師の佐藤恵美と申します。助産師歴22年になります。新人時代を経て、産科医院で10年間勤務した後、今の総合病院に移動して4年が経ちました。現在は病院で働きながら、地域のサークルや子育て支援センターなどで、産前・産後の女性を対象に骨盤ケア教室を開いています。私が骨盤ケアに出会ったのは、2011年3月9日.10日に武蔵野市で開かれた、メンテ“力”upセミナーでした。それまでの私は、「安産に導くのは、筋力をつけた妊婦さんを作ること!」と思い、個人医院でマタニティビクスを教えていました。 でも、受講した妊婦の皆さんが安産になるわけではなく、むしろ年々、微弱陣痛になったり、回旋異常で吸引分娩の産婦さんが増えてきて、「私の教え方が悪いせい?」と、悩むようになりました。「もう少しお産の勉強をしたい!」と思ったのが、セミナー受講の動機でした。
その時のことを今でも鮮明に覚えています。渡部先生が妊婦さんの写真をずらりと見せて、「この中で安産できる妊婦さんは誰だと思いますか?」と質問され、私はびっくりしました。「妊婦さんの姿やお腹の形で安産かどうかわかるなんて!」そんなこと、考えもしなかったからです。そして「なぜそうなるのか」を、渡部先生は順序立てて講義して下さり、私は渡部先生の話し方と内容に引きずり込まれてしまいました。
そして地元に帰った翌日、東日本大震災が起きました。私の勤めていた個人医院は内陸にあるので、津波の被害は免れたものの、断水・停電の状態が20日間ほど続きました。近くの大きな病院も断水・停電で、他院の産婦さんを受け入れる余地はありません。そのため私たちは、分娩監視装置などの器械を一切使えない状態で、お産の介助に当たらざるを得なくなりました。胎児が元気なのかも、お産が正常に経過しているのかも皆目わからず、不安を抱えながら診察すると…、子宮口が全開している! なのに児頭が下がって来ない(-"-; その時に頭をかすめたのは、「吸引分娩ならすぐに生まれるのに…(c_c)」でした。すると同時に、「器械に頼らなければ何もできないなんて…! こんな度量のない私を、助産師と言えるのだろうか?」と、とても情けなくなりました。
当時の私は、産婦さんの不定愁訴に対しても、どうしていいかさっぱりわからず、セミナーで習った、トコちゃんベルトを巻くくらいしかできませんでした。そんな、無力感にさいなまれ、「メンテ“力”upセミナーを受けただけではだめだ。もっと骨盤ケアを勉強したい!」と、強く思うようになりました。
その後、トコちゃんベルトアドバイザー養成セミナーを受け、筆記試験にも無事合格した後、仙台でベーシックセミナーが開催されることを知り、東北の助産師の仲間と一緒に受講しました。初受講のときは、とにかく講義についていくのに必死で、解剖学用語も覚えられず、検査や調整技術も「できているのか? できていないのか?」それさえもよくわかりませんでした。東京で復習受講し、受講歴の長い皆さんに助けられながら、やっと少しずつ理解できるようになり、身体も使えるようになりました。すると、現場でも、習った施術や体操を妊婦さんに教えると、腰痛やお尻の痛みが良くなったり、回旋異常で進まないお産が急に進んで、その後、短時間で元気な赤ちゃんが生まれたりと、良い結果が出るようになりました。やったことの結果がすぐに出るので、妊産婦さんに関わるのが楽しくなりました。
そんな時、渡部先生から「仙台でトコちゃんの骨盤ケア教室をやったらどう?」と勧められ、最初はとても戸惑いました。でも、渡部先生から橋本千春先生(操体法の創設者、敬三先生のお孫さんの奥様)を紹介して下さり、千春先生とお会いして、操体法の「温古堂」を会場として貸して頂けることになりました。ところが、参加者を集めるにはどうすればいいのか、私は全く分からず、渡部先生にブログの書き方から、SNSの発信の仕方まで教えてもらいました。何もかも初めてのことばかりで、最初は戸惑い、苦労しましたが、青葉の金崎さんにも助言を頂いたりして、なんとか、今年の3月から「トコちゃんの骨盤ケア教室」を開くことができました。
会場の温古堂は定員5人が限度の会場なので、まだ不慣れな私には丁度いいと思い、午前・午後に分けてクラスを開くことにしました。「まだ寒い3月だから、そんなに妊婦さん達からの申し込みはないだろう」と、のんきに構えていたところ、あっという間に4人から応募があり、驚きました。教室当日は、橋本千春先生も同席して下さり、骨盤ケアを学んでいる助産師二人にもアシストに入ってもらえて、4:4の贅沢な教室となりました。
東北最大の都市 仙台は、塩釜と比べると大都会です。しかも、その中心地“定禅寺通り”! 「そんなところで教室を開くなんて…」と、最初はとても恐縮し、緊張しました。説明や体操に時間を取られ、健美ベルトの巻き方やトコちゃんベルトの巻き方が駆け足になってしまいましたが、アシスト助産師お二人に手伝ってもらえたおかげで、なんとか終了しました。毎回クラスを終了した後、妊婦さんに伝わりにくかった点や、良かった点、妊婦さんの反応など、感想や気付いた点をスタッフ全員で話し合い、だんだんとよい教室になっているのではと感じています。
妊婦さんからは「トコちゃんの骨盤ケア教室を、仙台で開いてもらえてうれしいです」「トコちゃんベルトの巻き方が理解できて良かった」「体操やベルトでヒップサイズがかわってびっくりした」「体操後、腰が楽になり、体が温かくなりました」などのうれしい感想が、たくさん聞かれました。
これからも宮城県内に骨盤ケアが広まって行って欲しいと願っています。そのためには、一人でも多くの助産師が、骨盤をケアできるようになることと、一人でも多くの妊婦さんに伝えることが大切です。この「トコちゃんの骨盤ケア教室」を通して、骨盤ケア情報を発信していきたいと思っています。まだまだ私は勉強中で、骨盤ケアを知れば知るほど、自分の未熟さに落胆することもしばしばです。でも、骨盤ケアを通して、全国の同じ志をもつ多くの先輩と知り合い、たくさんのアドバイスを得ることができ、とてもありがたく思っています。
まだまだ未熟な私ですが、どうぞこれからもよろしくお願いいたします。