「中学校での武道必修化が危惧されます」
この4月から中学1.2年男女の体育で、武道が必修化されます。武道といっても、柔道・剣道・相撲のどれかを選択することになるため、道具や設備を準備するのが簡単な、柔道を選択する中学校が7~8割に上るようです。
このことについて、保護者のみならず柔道指導者からも、命にかかわる重大な事故を危惧する声が上がっています。私もその一人です。
なぜなら、名古屋大学大学院の内田良准教授によると、平成22年度までの28年間に柔道中の事故により、全国で114人(中学39人、高校75人)が死亡しています。生徒10万人当たりの死者数も柔道は2.376人と、他のスポーツに比べて突出して多いのです。
これは死亡事故だけの数です。その陰にはもっとたくさんの中高生が、重度の脳の障害で、いわゆる「植物人間」となっていたり、脊髄損傷で車イス生活を余儀なくされていたりしています。しかも、その実態調査さえ、されていないのが現状なのです。
昨年6月、名古屋市立高校の柔道部で、1年生の男子部員が練習中に頭を打ち、急性硬膜下血腫で翌月に死亡した事故がありました。それを受けて市教育委員会は、新年度からの柔道の授業で、「大外刈り」など後方に倒れて頭を打つ可能性がある足技を行わない方針を固めたとのことです。
武道の授業は、中学1、2年で計約20時間にすぎません。たったそれだけの時間で、柔道の基本となる「受け身」が身に付くのでしょうか?受け身もまともにできないのに、“乱取り”というお互いが技を掛けあう練習をすれば、いつどこで事故が起きても不思議ではありません。
そのため、名古屋市教育委員会によると、中学生の段階では柔道の習熟度が低い点も考慮し、乱取りも、行わないことを決めたそうです。
また、各地の教育委員会でも、
・体格や技能の異なる生徒同士を組ませない
・投げ技を使う試合は行わない、
と決めたりしています。
しかし、投げ技を使わなければ、試合は寝技か、座った状態で行うだけとなり、立った状態での試合はできないことになります。
安易に柔道の試合や乱取りをすることの怖さを知っている柔道指導者の困惑も大きいようで、ツイッターでは「受け身と寝技だけに徹すべきだ」とのツイートも流れています。もちろん、保護者の不安も同様です。
私は男女とも、柔道ができる体を持っていることは素晴らしいことだと思っています。
でも、転んでも手が出ずに、顔や頭を打撲したり、だるまさんゴロゴロもできなければ、マット運動の前転・後転もできない小中学生が、あまりにも多いのです。
人間の運動能力は順を追って進めていかなければ、重大な事故につながる恐れは十分あるのです。
「小学生の体育時間のマット運動中に、首がグキッとなり、それからもう何年もずっと頭痛に悩んでいる」などという人が、私のサロンにも時々来られることがあります。
まずは、だるまさんゴロゴロ⇒前転⇒後転 と、できるようにならなければ、柔道の受け身を習得することは難しいでしょう。
なぜ、そんなこともできない子どもになったのか? というと
・乳児期に、座位から前・横に倒れた時に手が出ない
・乳児期に、立つ前にしっかりハイハイしていない
さらになんでそんな乳児になったのか? というと
・胎内で背中が伸びすぎ、手が口に届かず、手をなめることが少なかった
・生後、平らな硬い布団であおむけに寝かせられていた
などが原因と考えています。これらを変えていかないことには「中学校で柔道必修化なんて無理、怖い」と言わざるを得ないのです。
武道必修化の目標は、武道の伝統的な考え方を理解し、相手を尊重することだそうです。
それなら別に武道でなくても、茶道・華道・書道などでもよいではないですか?体づくりのためには、拭き掃除や草むしりの時間を作ればいいと思います。
実は、武道と並んで、4月から、ダンスも中学の体育で必修化となります。
「感じを込めて踊ったり,みんなで自由に踊ったりする楽しさや喜びを味わい、イメージを深めた表現や踊りを通した交流や発表ができるようにする」のが目標で、「創作ダンス」、「フォークダンス」、「現代的なリズムのダンス」で構成されるようです。
私はこちらは大歓迎です。
セミナー受講生や施術に来られる若い女性を見ていても、とにかく、ツイストが踊れない人が多いのです。つまり、臍より上と下を逆にねじる動きができないのです。
ツイスト以外でも、体のさまざまな動かし方ができず、うまく体が使えず、自在に動けず、体が硬い人が本当に多く、これが体の痛みや不調につながっているからです。
期待不安が入り混じる新学期、保護者は自分の子どもの身体能力を良く判断して、学校の先生に、希望や意見を伝えることが大切だと思います。