京都府福知山市の助産師、木下裕美枝さんのコラム
福知山市でメンテ“力”UPセミナー、初開催\(^o^)/
~母子の笑顔があふれる北近畿をめざして~
 
 皆様こんにちは。 私は、京都府福知山市の助産師、木下裕美枝と申します。
保健センターで乳児健診のサポートや、新生児訪問をする傍ら、週1回だけですが産婦人科のクリニックで当直勤務をしています。

 京都と聞くと、皆さん、雅な京都市内を想像されませんか? でも、京都府の面積の半分以上は、京都市の西に隣接する亀岡市から日本海までつながる“北部地域”が占めています。そして、その真ん中に位置するのが福知山市で、京都・大阪・神戸・福井のどの都市に出るにも、2時間前後はかかる不便なところで、ご多聞にもれず移動手段は車。“door to door”がメインです。
 そのためもあると思うのですが、切迫流早産や早産が多く、圏内保健所に赴任した小児科医が、出生率に比べて、早産・低出生体重児が多いと感じ、生活習慣( タバコ・ストレス・アルコール・就業など)に関するアンケート調査をされたことがあるほどです。でも、明らかな有意差は出なかったようです。もちろん、母体の「骨盤の緩み」の項目はありません。
 福知山市では年間800人弱の出生数があります。京都府内における医療格差を埋めるために、1,500g以下のベビーを受け入れられる母子センターが、かつては、舞鶴市に設置されていました。その頃は短時間で母体搬送ができていました。しかし、9年ほど前からは産科医が0~1名の状態が続くようになり、現実的にこの地域で、集中治療を要する母子管理ができなくなってしまいました。
 その結果、搬送先は京都市内となってしまいました。福知山市からでも75km、2時間、さらに北西の地域からだと100km以上、3時間以上という、遠距離・長時間の救急車搬送を行っているのが現状です。もはや産科管理なのか、陣痛誘発なのかわかりません。京都市内では助かる症例も、北部地域では助からないという、そんな地域なのです。

 最近訪問していて、感じるのは、妊婦さんの合併症の多さで、特に多いのが甲状腺疾患と、パニック障害です。「肩がこる。首が痛い。頭が痛い」と涙しているお母さんの背中を「辛かったね」と撫でていると、背中の真ん中あたりにゴツゴツしたコリが触れることが多いです。
 そして、出血。新生児訪問で、母子手帳を介し、色んな施設での分娩記録を見て、目につくのは出血の多さです。1,000~2,000mlはざら! 私の独身時代にはお目にかかったことのない子宮内反症に、3ヶ月で2例も遭遇したこともあります。このお二人は、他の地域で里帰り出産して帰って来た人と、転入して来た人達だったのですが、この地域のクリニックでの出産だったら、命が助かったかどうか…? 疑問です。そんな、お目にかかったことのない症例が、ザクザクいます。

 私は時々、分娩介助していた25年ほど前のお産を思い出すことがあります。けっして豊富とは言えない経験でしたが、「シーツもどこも汚れず、まさしくツルンと産み、『出血量をどうやって計ったらいいものか?』と悩むようなきれいなお産」は、今や見ることはありません。「どこにもない!」と聞きます。新採用保健師から、「分娩時出血は『千を越えれば多いと認識せよ』と習いました」と、聞いたときは、唖然としました。
 産前産後休6週間の時代の年配の保健師は、「今はこんなに休みも取れ、サポートもあり恵まれているのに、何でみんな、こんなに苦しそうに子育てしてるんやろ?」と言います。

 もともと私は、臨床に戻るために母子整体セミナーを受けたのですが、新しい見方ができるようになると、新生児訪問が面白くてやめられなくなりました。結局、臨床へは、週1回の当直バイトという“根なし草”のような働き方を選びました。臨床に戻り、驚きました。「えっ、初産婦が2~3時間で分娩?!」、「初産婦なのに、赤ちゃんの顔が前向きで生まれた?!」。以前だったら緊急帝王切開でないと生まれないはずの状態でも、今は自然に生まれるなんて…。みんな、“骨盤ゆるゆる”です。
 セミナー受講はしているものの “講師力”に自信のない私は、大々的に教室を持つのではなく、訪問先で一人一人に伝える、“草の根運動的仕事”を続けています。反応を見ながらゆっくり進められるのが、訪問の良いところ。すると新生児連絡表に、「今回も木下さんにお願いします」、と書いてくださる経産婦さんからの葉書が、保健センターに舞い込むようになりました。「指名は受けてないんだけどねー」、と保健師さんに言われてしまいます(^^;

 先日、若いママさん宅に訪問したときのことです。「丸く抱いてねー」とやって見せると、遊びに来ていた友人ママが、「あー! あれみたい。えっとえっと、おにぎり!」「そう、おにぎり巻き!」「あれめっちゃスゴいよな! ヤバくない?」「おにぎり!」などと、“ママ友会話”が弾みました。この後、赤ちゃんがいいお顔になっててくれる「まるまる抱っことネンネ」のお話をすると、「いつもは絶対寝ない子なのに…寝てる!」と友人ママが何度もベビーを見に行き、「スゲー、スゲー」を連発。最後は「おにぎりサイコー!!」と皆が笑顔になりました。案外、こんな若いママの方が、先入観なく取り入れてくれます。

 私は知識も乏しいうえに、引き出しからすぐに引っ張り出すこともできず、自信も持てず、ママ達一人一人に細々とお伝えしてきました。自称“草の根運動”です。こんなことで福知山市の母子の状況が、いきなり大きく変わるなんてことはありません。でも、利点もあります。「頭を叩かれ芽も出せない」なんてことにはならなりませんからね(*^_^*)

 今のママ達のネットワークはすごく、ここ1~2年で、自分でネットでトコちゃんベルトや「まるまる育児グッズ」を購入し、使い方を質問されることが増えて来ました。新生児訪問をすると、「青葉のアンテナショップみたい!」と驚かされるくらい、品物をいっぱい揃えていにもかかわらず、活用しきれていないママが多いです。
 「助産師からの情報発信より先に、ママ達から情報が湧きあがって来ている」と感じます。もはや「骨盤ケア」も「まるまる育児」も、ママ達の間では“スタンダードケア”となってきています。使い方を尋ねられたとき、助産師としては、「わかりません」とは…、言いたくないですよね。
 妊産婦さんにとっては、「助産師外来の担当者」というのは、「たまたま当たった」助産師です。その助産師達が、知識が豊富な人から全くない人…と、いろいろでは、サービスに格差が生じます。住民の皆さんが、どこの施設で尋ねても、同じ指導を同じレベルで受けられるように、地域全体で取り組みたいものです。

 保健センターと関わっていて「良かったなぁ」と思うのは、妊婦スタッフをつかまえては、骨盤輪支持を訴えていたので、体験した保健師さんたちの意識が変わったことです。さらには、若手保健師は良いものは柔軟に取り入れようとしてくれるので、市の母子医療の方向づけが、徐々に変化してきたと感じます。
 興味を持ってくれる保健師さん達を巻き込み、「北近畿以外の地域の人達から『北近畿は明らかに、早産や子育てに悩むママが少ないね~。特に福知山市は少ないんじゃない?』と言われるようになるといいな~」と夢見ています。大きな静かな野望でしょ?

 この野望実現のために、大都市でしか開催していないメンテ“力”UPセミナーを、「福知山市で開いてください!」と渡部信子先生に懇願したところ、「人数が集まるんなら行くで~」との返事がもらえたのです! それから、会場確保に動いたり、知り合いに電話やメールで連絡しまくりました。

【こんな願いをかなえるために】
 ・泣きながら、子育てするママが一人でも減るように。
 ・子育て支援者が、辛い現状を解決できるように。
 ・新生児訪問をしている助産師や保健師が「しばらく様子を見ましょう」と、
  逃げるようにその場を去らなくてもいいように。
 ・自分の体も楽になれるように。

 福知山ではおそらく、渡部信子先生による最初で最後のメンテ“力”UPセミナーです。こんな近くで開かれるのですから、看護師・助産師・保健師のみならず、理学療法士・作業療法士・鍼灸師・柔道整復師・保育士…様々な職種の皆さんも、子育てや介護などで多忙な皆さんも、ぜひとも参加してください! 交通費も移動時間もわずかですからねo(^-^)o

 皆さんと共に、母子の笑顔が広がる北近畿を作りましょう! そして「この波紋が日本中に広がったらいいなぁ…」なんて、さらに大きな野望を抱いている私です。