富山県の勤務助産師 濱松 玉衣さんのコラム
基本的なケアで痛みを緩和し、  正常分娩へと導く知識と技術を、ぜひあなたも!

 
 富山県の厚生連滑川病院の助産師、濱松玉衣です。これを読んでくださっている助産師・看護師のみなさまへ、お聞きしたいことがあります。
あなたが提供しているケアは、あなたが受けたいケアですか? あなたが提供している分娩介助は、あなたが受けたい分娩介助ですか?助産師は、教育課程の中で、正常分娩は責任を持って行うことができることを習います。その憧れもあり、自分が出産するときは、自然な分娩を望み、助産院やそのような対応に近い病院を選んでいる方が多いのではと思います。しかし、実際に自分が出会う妊産婦さん達はどうでしょう。妊娠初期から、切迫流早産・低~前置胎盤・妊娠高血圧症候群などの病名が、産褥まで全く付かない妊産婦に出会える方が稀です。特にマイナートラブルは多く、尿漏れ・痔・便秘・つわり・恥骨部痛・殿部~腰背部痛・胎位胎勢異常…など、キリがないくらい。「そのトラブル満載の体では、正常分娩は難しいだろうなぁ」と思われることもたびたびです。

 ところで私は、新卒で就職した病院の分娩件数が多くなくて、先輩助産師から教わる機会が少なく、医師に分娩介助を教えてもらいました。そのため、自分が理想とする夢のような素敵な分娩は、いつしか、はるか彼方に行ってしまい、“医師に異常報告する係り”のようになっていました。そんな自分に気づき、「助産師としてこれでいいのだろうか?」と葛藤し、休みや夜勤明けなどの空き時間を使って、片っ端から研修を受けました。
 しかし、受けた研修の中で生じた疑問が解けないときや、ある程度ルーチン化されている技(母乳ケア・ヨガ・ベビーマッサージ・リフレクソロジーなど)だけでは上手くいかなかいことがあり、そんな日々に満足できず、悶々としていました。そんな時に出会ったのが渡部信子先生の骨盤ケアのセミナーでした。それまで心の中でくすぶっていた疑問が次々と解け、学んだ多くの事柄がつながり、一気に視野が広がりました。そのため、私は次々と上のレベルの骨盤ケアに関するセミナーを受けました。「骨盤ケア」といっていますが、体の要である骨盤と共に、全身を診る方法を学びますので、全身を診て考えられるようになり、上手くいかない理由が理解できるようになりました。
 
 私が骨盤ケアを始めてまだ間もないころ、整形外科医である妊婦が、妊娠32週で歩けなくなり、急遽、骨盤ケアを依頼されました。ものの数分で行った、ごく基本的なケアで、すぐに痛みが軽減し歩けるようになりました。その後、正期産で正常分娩されました。その方が「今まで妊婦さんの腰痛を、いっぱい紹介されて診てきたのに、全然違うことをしていた。知らなかったとは言え申し訳ないことをしてきた」とおっしゃいました。
 そのことを私の上司にも話されたようで、おかげで、私は、出張として1年間、京都の渡部信子先生のサロンにて、住み込みで研修させていただく機会を得ました。そこでは、子宮や胎児の触診や、トラウベでの胎児心音聴取法、収縮輪触診法などの助産診断技術を基礎から教えてもらい、母体のゆがみと胎位胎勢の関連の診方や、調整法を学びました。

 病院に復帰してからは、妊娠初期からマザークラスなどで、骨盤ケアの必要性と胎児への影響を説明しています。胎児のことを関連付けて話すことで、より骨盤ケアの必要性を理解してもらえます。また、妊産婦自身が胎児姿勢について関心を示すようになり、自分の腹部の形状を注意して見るようになったり、エコー検査時に、医師に「うちの子、膝曲げてます?」「あっ、今日は、顔見えてますね。顎を引いてなくて、反り返っているということですね!? 骨盤ケアしっかりします!」などと話すようになり、主体的に自分と胎児のWell Beingを目指す姿が見られるようになりました。その他にも、骨盤ケア外来を行い、個別指導で、更に緻密に対応しています。
 また、分娩で入院する時は、多くの産婦さんがトコちゃんベルトを巻いて来られるようになりました。羊水や血液でトコちゃんベルトを汚染したくないので、分娩進行に伴い健美ベルトに変え、産後の出血が減少するまで続け、その後はまたトコちゃんベルトに戻します。分娩進行中の骨盤の動きも、子宮が胎児を娩出しようとする力も、とてもダイナミックで、いつみても面白いです。そして、分娩がこの後どうなっていくかを予測し、判断できるようになるため、妊産婦さんに今後起きるだろうことを早めに説明することができます。 異常に転じそうな場合(回旋異常、微弱陣痛、CTGのレベルⅢなど)は、早期発見につとめ、悪化しないように、できるだけ正常に戻れるようにと、ケアしていきます。

 ただし、これには知識と技術が必要です。同じようにしているつもりでも、理解して行っているのと、「いいと聞いたから」と全員に同じことをするのとでは、結果が大きく違います。
 あなたのその手は、しっかり触診していますか? エコーなどの機械に頼りがちになっていませんか? あなたのその目は、機械ばかりみていませんか? あなたが担当している産婦さんを、分娩台の上で長時間、ツライ姿勢のまま「観察」という大義名分で放置していませんか? 頻回な内診や医療的処置などでリラックスできない雰囲気になっていませんか?
 私たち助産師が骨盤ケアを知り、赤ちゃんが通りやすい産道に変える技術を持つことで、異常分娩が少なくなり、医師の負担が軽くなります。医師が付きっきりで離れられないことが減り、分娩時のみの出動ですむことが増えます。 それと同時に妊産婦の満足度も上がります。私の働いている病院は、骨盤ケアをしているという宣伝はしていませんし、フリースタイル分娩もしていません。しかし、前回、他院で分娩した方が、「ここでは骨盤ケアを受けられるんですね」と、選んで来てくださる方が少しずつ増えて来ています。

 第一子を問題なく他院で分娩した経産婦が、第二子の妊娠33週で、人の勧めで転院してこられました。予定日近くで、産徴入院され、骨盤を支え、分娩進行に応じた体操をしながら、余裕を持って分娩室に入室し、娩出直前まで側臥位で過ごし分娩されました。当たり前のことで、取るに足らないようなことしかしていませんが、前回の分娩との違いと、産後が第一子の時よりも年齢を重ねているのに、驚くほど楽だとおっしゃられました。出血が少なくてすめば、疲労は少なく、また母乳分泌が早期に満ち足ります。

 ここでお話したことは、ごく一部にすぎません。妊産婦さんの自覚がないところで、異常に転じていくのを止められたケースもたくさんあります。気づく力、ケアできる技術、予測できる力は、骨盤ケアを学んで行くことで、あなたにも伸ばすことができます。
 今年度、富山県の看護協会主催で骨盤ケアの研修が開催されることになり、その講師を、僭越にも私がすることになりました。分娩が多くない病院の一介の助産師である私が、渡部先生に教えてもらったことを、10年以上コツコツとやっていたら、自分自身も成長し、周囲にも少しずつ確実に広まっていることを実感しています。

 骨盤は骨産道。分娩の三要素の中で大きな位置を占めている骨盤を、しっかり、詳しく診て、安産できる産道にケアするスキルは、妊産婦に関わる者にとっては必要不可欠です。ぜひ、上記セミナーを受けてみてください。共に、スキルアップしましょう!